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第74話 公爵領にご到着

 4点式シートベルトでみんなをしっかりバケットシートに固定する。

 4点式シートベルトにしたのは、多少荒く、もの凄く速く飛んでも皆が落ちないようにと考えてのことだ。


       〇    〇   〇

  〇    〇    〇   〇

       〇    〇   〇



      イリス ナタリー

       ●   ●   〇

 俺●ミーファ●   〇   〇

       ●   ●   〇

      エリカ エミリア


 席順はこうした。

 何か起きても目の悪いミーファを最優先で守れる配置だ。

 戦力的に一番手練れのエリカには、エミリアの護衛も頼んでおく。



  *    *    *



 王都を出発し、街道を道しるべにしながらゆっくり公爵領に向かっている。


 ディアナはもっと速く飛びたいようだが、鞍の不具合がないかの検査も兼ねているので、安全が確認できるまでは無茶はできない。


『主様よ、どうやら下で人間どもがゴブリンとやりあっているようじゃぞ』


 急に速度を落としたディアナから念話の声が掛かる。

 かなり距離があり、俺の目ではまだ見えない。


「もっと高度を下げて近寄ってみて。ディアナほど俺は目が良くないからまだ見えない」


 1km圏内に入り、俺の【周辺探索】に引っ掛かりMAPでも確認できた。


 距離100m、上空100mで俺たちに見えやすい角度で待機してもらう。


「馬車が3台、護衛の冒険者が12人。ゴブリンが20頭ほどかな。すでに何頭か倒してるね」


『うむ、大丈夫そうじゃの。こういうのは見ているだけでもワクワクするのぅ』


 ディアナはコロシアムで観戦でもしているように楽しそうだ。

 後ろを振り返ると、皆も同じように目をキラキラさせて眺めている。


 目の悪いミーファだけは視線が他を向いているが、なにやら皆と同じような雰囲気をだしている。


『♪ ミーファは【ステータスプレート】の動画撮影機能を使い、皆と同じように観戦していますね』


『機能を上手く使えば、リアルタイムで見ることもできるのか』


『♪ そのようですね。ですが、画面で見るのはやはり2D的2次元世界です。いくらリアルな画像でも、平面的に見ると迫力に欠けますよね。早くマスターのレベルを上げて、目が治せるように魔法開発したいですね』


『そうだね、きっと治せるよ。ミーファに聖獣を与えたのは、将来的に俺のパーティーで活躍しろという神の思惑があると思うんだ。だからきっと目はいずれ治るはず』




「大丈夫そうだけど、一応ここで決着がつくまで待機して見守ろうと思う。到着が少し遅れるけど皆もそれでいいかな?」


「はい。見て見ぬふりはできません。ルーク様のお優しい配慮が伺えて、わたくしはますます好きになりました♪」


「そう言われたら照れるけど、まぁ待ってる間にこれを渡しておくよ。エリカとナタリーにも、ミーファたちにあげた結婚指輪と同じ効果のある指輪を渡しておくね。結婚指輪ではないから、右手にでも着けておいて」


「「えっ! よろしいのですか⁉」」

「って! ルーク様、いくつ持っているんですか⁉」


『♪ マスター、自分だけ貰えないイリスが悲しそうです』

『イリスは【クリーン】持ってるし、【毒耐性(小)】のパッシブと中級解毒魔法も習得してるからね』


 かといって一人だけ何もなしじゃ疎外感を持つよね。


「イリスはどっちの付与も魔法で習得していて必要性がないので、後で【魔力回復速度上昇】と【魔法効果上昇】の付与が付いた超レアリングをあげるね」


 イリスに関しては、女神を使って口止めしているので躊躇しないことにした。エリカとナタリーはサービスだ。少なくとも3年間は同じパーティーとして共に過ごすのだから、快適に過ごしてほしい。


 エリカが【個人認証】しなくていいかと聞いてきたので、ダメだときっぱり言い、目の前で認証させておく。


 将来的に誰かに譲渡できるようにとエリカは考えたようだけど、俺が今回作ったものは【個人認証】しないと効果が発動しない。


 余談だが、ダンジョン産のレアリティーが高い品は、何故だか【個人認証】が付いているモノが多い。


『♪ 【個人認証】がないと世の中に有用な品が溢れかえってしまい、レアな品でも数に応じて年々価値が下がるじゃないですか。神としてはそういうのは望んでいないのでしょう』


『レアリティーの維持か~、なんかMMOの運営がやってるのと同じだね』


 俺が【個人認証】を付けたのはちょっと違う理由からだ。親兄弟や上司から、さっきのゼノさんのように強請られて奪われないようにするためだ。当人しか使えない物を奪っても意味がないからね。




 それから10分後、多少怪我人が出たようだが、無事撃退できたようだ。


 冒険者の一人が上空にいる俺たちに気付き、慌てて仲間に知らせている。

 でっかいドラゴンだしね、ゴブリンの襲撃と違ってそりゃービビるよね。


 下に見えるように大きく手を振ってやる。


 騎竜だと分かり、下の者たちも安心したのか手を振り返してきた。


「大丈夫そうなので、出発するね」


「「「はい!」」」


 娯楽の少ないこの世界では、こういういつもと違う出来事は楽しいのだろう。盗賊相手ならちょっと心的にダメージを追う殺人行為を見ることになるが、ゴブリンやオークは人類の敵と思っているこの世界の住人からすれば、多少グロい現場でも『冒険者が害獣を退治した』ぐらいに感じているのだろうなぁ。




『♪ マスター、少し街道から外れて寄り道していってもらえませんか?』

『ん? なにかあるのか?』


 どうやらナビーは粘土が欲しいようだ。


『でも、少し予定より遅れているし、今度でいいだろ?』

『♪ 今日採取していただければ、明日の朝ごはんのパンはふわふわのモノがお出しできますよ。りんごなどの果物を使って、パン酵母も良いものを開発しておきますよ』


 ふわふわのパン!


『♪ ピザとかどうですか?』


 ピザ!


『クソッ、分かった! もう止めろ! ダイエットで減食中の俺になんてこと言うんだ!』


 う~~、トロッと伸びるチーズを想像しただけでお腹がキュルキュル鳴ってきた。



 今あるナビーの武器工房の錬炉だと、ミスリルまでしか融解できないらしい。

 そして料理工房の調理場に、ちゃんとした焼き釜が欲しいようだ。


 そのために、耐火煉瓦を造るための粘土が欲しいとのことだ。


 街道から少し離れたところにある川辺に降り立つ。


「少しここで休憩するね」


「「「はーい」」」


 ハティーをイリスに預け、俺は川の上流に向かい皆と距離をとる。トイレ休憩も兼ねているからね。俺が側にいては女性たちが用を足せない。


 俺は粘土採取だ。


 空間魔法で範囲を指定して、ごっそりそのまま【インベントリ】に放り込むだけの簡単なお仕事だ。


 ナビーに言われた箇所を大雑把に囲んで、どんどん収納する。


「どうだ?」

『♪ 良い粘土です! マスター、ありがとうございます♪』


 15分ほどで皆のいる所に戻ったのだが、靴を脱いで川に足を入れてキャッキャとみんなで戯れていた。ディアナが側にいるので、警戒心なんか皆無だね。


 おっかない竜がいるのに、近付いてくる魔獣なんかいないのだ。


「あ、ルーク様お帰りなさい」

「ただいま。みんな楽しそうだね」


「ルーク様、わたくし川遊びは初めてです♪」


 ミーファはにっこり笑って楽しそうだが、俺からすればただ素足になって、川の水をバシャバシャやってるだけにしか見えない。本当の川遊びはそうじゃない。


「今日は時間がないからすぐ出発するけど、もう少し暑くなってきたら水着を買って本格的な川遊びに来ようね」


「本格的な川遊びですか?」


「上流の渓谷に行って泳いだり、魚釣りや川エビ獲りとか楽しいよ」

「魚釣り! 楽しそうです! ぜひ連れて行ってくださいね♪」



 休憩を終え再出発し、鞍の安全が確認できたので、ディアナに全力で飛んでもらった。


「うわ~、もう着いちゃったよ」


『どうじゃ主様よ! 凄かろ? 速いじゃろ?』

「うん。めっちゃ速かった!」


 川辺から出発してからわずか40分ほどで到着したのだ。

 滅茶苦茶喜んでいる俺の姿を見て、ディアナも機嫌が良さそうだ。


 【ウインドシールド】をディアナが掛けてくれているので、鞍の安定も問題ない。


 これほど速く飛べるのなら、行きたい所が沢山ある。用事を済ませてからの休日が楽しみだ。





「う~~~~ん、やっぱ竜化や人化の度に服を着たり裸になったりするのは良くないな。素っ裸なのがいけない」


「じゃが竜は服を着ていないので、人化した時に裸なのは仕方がなかろう。逆もしかりじゃ。服を着たまま竜化したら、毎回服が破けてしまい勿体なかろ?」


 公爵領の入門前でディアナが人化したのだが、入門チェック待ちの大勢の観衆の前で美少女姿の全裸になって歓声が上がったのだ。


 慌ててディアナに毛布を被せ、門番詰め所で服を着せた。




『ナビー、既存魔法でなにかないか?』

『♪ 既存魔法にはありませんが、ダンジョンでドロップするアクセサリーの中に、2~5品ほどの装備品を収納し、アクセサリーに魔力を込めると、収納した物を瞬時に自動装着できるものがありますね。着脱して瞬時に再収納も可能です』


『それだ! どこで手に入る? 売っている店はあるか?』

『♪ 残念ながらこの品も超レアな品なので、この国内は下より、近隣国でも売り物としては検索に引っかかりませんでした』


 毒耐性効果(大)の品よりレアなモノらしい。


『それ、めっちゃ欲しいのにな~』


『♪ 現存する品ですので、マスターの付与魔術で似たような物ができないでしょうか?』


『俺が作るの? できるかな?』

『♪ 魔法はイメージが大事なので、できないと思った時点でできません。ですが、上位世界から来た異世界の魂を持つマスターならかなり特殊なモノでも創れそうな気がします』


 作るのではなく創るのね……後で挑戦してみよう。


 門内に公爵家が馬車を用意してくれていたが、現在夕方の6時前。

 夏至で一番日が長い時期でもあるので、少し商都内を散策していこうと思う。


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