表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/103

第42話 ガイル公爵の願い

 少し皆と話し合う必要がありそうだ。


「学園長、少し3人で話し合いたいので、転入そうそう申し訳ありませんが、この後早退させていただいてよろしいでしょうか?」


 学園長は担任の方を見て判断を委ねた。


「1時間目の授業は抜けていいが、2時間目は必ず出てほしい。2時間目は明日の『召喚の儀』の執り行いについての説明なので、知らないと困る事も起きる」


「了解しました。では、俺、エミリア、ミーファ姫の3人は1時間目は抜けさせて頂きますね」


「ここで話すわけにもいかないし、認めよう。一応自己紹介だけはして行ってくれるかな……」


 ここで侍女たち3人から待ったが掛かった。

 自分たちも話し合いに連れて行けとの事だ。特にイリスは自分の今後がどうなるのか不安なようだね。


 自己紹介も終え、一旦寮の俺の部屋に移動する。


「ルーク様、わたくしの気持ちに応えて頂きありがとうございます♡」

「正直、驚いているのだけど、それ以上に俺は嬉しかった。ミーファ姫は自分の顔を見られないのだろうけど、凄く可愛いのだよ? それでいて性格も良いし、何より人に嘘が吐けないってのが良い」


「えっ! 嘘が吐けない、嘘を見抜く能力を普通は嫌がってわたくしを疎ましく思うのに、ルーク様はその短所を良いと言ってくださるのですか?」


「確かに夫婦になるなら疎ましく思う時も今後あるだろうけど、好きな人に対して誠実でいればそれほど大きなトラブルは起きないだろうと思っている。君だって相手が言いたくないことを無理に聞き出そうとはしないだろ?」


「うふふ、勇気を出してあなたに告白して良かった……」


「あ、でもミーファ姫の事は可愛いとは思っているけど、今すぐ結婚したいとか、そこまで急にのめり込むほど今はまだ好きではないよ。だからゆっくりお互いをこれから知るためにお付き合いしましょうって事なんだけど……」


「はい! それで十分です!」



「問題はミーファ姫のお父様とガイル公爵との間で、今後の俺の身の振り方がどういう話になっているかって事なんだよね……。公爵家とは婚約解消で、ミーファ姫と婚約した後、俺はどういう立ち位置になるんだ? イリスは公爵家から雇われているわけだし、解雇になっちゃうのかな?」


「そ、そんなの嫌です!」


 イリス的にはそうだよね。

 既に女神から恩恵を得て、俺と居るメリットは重々理解しているみたいだしね。


「あの……イリスさんとは寮で二晩一緒に過ごされたのですよね? お二人はもうそういう関係なのでしょうか?」


 ミーファさん? そういう関係とは、どういう関係の事なのかな?


「うん? 俺は彼女に指一本触れてないよ」

「あ、本当ですわ! 良かった! 間に合ったようですわ♪」


 流石は嘘発見器……。


「姫様は、ルーク殿下の従者に可愛い侍女が付いたと知ってから、ず~~と焼きもちを焼いておられたのですよ。1日でも早く婚約を取り付け、間に割って入らないと手遅れになってしまうと、もう朝から大騒ぎでした」


 なるほど……だから間に合って良かったって言ったのか。


「エリカ! もうっ、言わないでって言ったのに!」


『♪ ミーファが急いだのは、マスターがイリスをお手付きにして、そこからイリスに恋してしまい、自分の入り込む余地がなくなる事を恐れたようです。それとエミリアの素顔を見て惚れてしまい、以下同文です。マスターが、馬車の中で「嫁は1人いればいい」みたいな事を言ってましたからね。主にそういう事を昨晩エリカが言って、ミーファをたきつけていたようです』


『エリカちゃんが?』


『♪ 「2人とも世間一般的に比べて凄く可愛いのですよ? もたもたしているとあっという間に仲良くなって、姫様が割り込むことなんかできなくなっちゃいますよ?」と言って煽っていました』


 そういう可能性がないとは言えない。

 実際イリスとの王都観光はデートっぽくて、内心ちょっと浮かれていたしね。


 とりあえずガイル公爵に聞いてみるか……。面識のないミーファのお父さんに直接聞くのはちょっと躊躇ってしまう。なにせ国王様だしね。


 皆にも聞こえるようにフリー通話で会話をする。


「ガイル公爵、担任に1時間目の授業不参加の許可を頂き、事情を聞く為にコールしました」

『ふむ。それで、ミーファの告白を受けたのかね?』


 やっぱ知ってるんだ。


「はい。挨拶しても返事ができないほど男が怖いエミリア嬢と結婚するより、僕の事を好きだと言ってくれるミーファ姫の方がお互いに幸せになれるだろうと判断しました」


『ふむ、そうだろうな……だがな、俺も君の事を気に入ってしまったのだ。男が怖いエミリアでも、君なら優しく何とかしてくれそうな気がするのだ。だから君を兄上に譲る気はない』


「そう言われましても―――」


『まぁ、聞いてくれ。そこで兄上とお互いに妥協点を話し合ったのだが、君には学園卒業後に侯爵位を授けようという話になった。その条件はミーファを正室に迎える事だ。そしてここからは俺のお願いだが、側室にエミリアを加えてほしい』


 強制ではなくお願いか……種馬扱いは変わらないようだけど……どうしたものか。

 公爵家の婿ではなく、侯爵位を与え、当主として俺を国に抱え込む気か? 男爵位しかやれないと言った父様と比べたら破格の扱いだね。


『♪ マスター、このままエミリアを捨ておくと、彼女にとって不幸な事になると思いますよ』


『う~ん……でも、俺にとっては、彼女に何の興味もないんだよね~。本音を言えば、くれるという爵位にも興味ない。爵位で縛りつける首輪みたいなものだしね。飼い慣らされたくはない』


 公爵はエミリアを愛しているようだが、当主として結構厳しい人みたいなんだよね。


「ガイル公爵は、エミリア嬢が卒業までの3年以内に婿を見つけなかった場合、どうなさるおつもりですか?」


『それ以上の猶予はやれん。娘には幸せになってもらいたいが、これまで何不自由なく暮らせているのも、その学園の授業料や着ている服から装飾品1つをとっても、全て領民からの税によるものだ。貴族の恩恵を受けておいて、義務を果たさぬのは俺は許さない。男児なら騎士にでもなって貴族の務めも果たせるだろうが……、時が来たら男を見繕ってエミリアには婿を取る』


 これじゃあ、親公認の強要レイプだね……存在価値は子作りが前提ってか?

 こういう世界だとこれが貴族の常識なんだろうけど、なんだかなぁ~。

 男尊女卑……日本も戦国の世では娘を戦略の道具として嫁にやっていた。


「エミリア嬢の男性恐怖症というものは病気なのですよ?」

『精神的な病なのは分かっている……。だが、病気だからと義務を放棄したら民に示しがつかない。立場が平民なら、精神の病気だからといって何もしないで働かない場合、すぐに飢えて死ぬしかないのだぞ?』


 その為の家族だとも思うのだが、この世界ではそういう者に家族の手は差し伸べられないのか?


『♪ そんな事ないですよ。ガイルの頭がかたいだけです』

『だよね~』


「ガイル公爵は、自分の娘が好きでもない男に強引に貞操を奪われて泣く姿が想像できないのですか?」


『だから君にお願いしているのだ! 心の病を治すには時間が掛かる……。5年かけても俺にはどうする事もできなかったのだ。君なら無理やりエミリアを襲ったりはしないと信じている。他の男に嫁がせたら、さらに病を拗らせる可能性が高い。勝手だが、君なら3年間の在学中に、妻の時みたいにエミリアの病も治してくれるかもと期待しているのだ……』


 そっちの病も俺に何とかしろって? 本当に勝手だな。

 男性恐怖症になった原因があるはずだけど、後でナビーにでも聞くか。

 おそらく、話の流れ的に5年前に何かあったのだろうな……。


『♪ はい。後で教えますね。それにしてもガイルはマスターの噂の事は完全無視ですね。自分の目利きを信じているようです。どうです? 別にエミリアの病が在学中に改善しなかったとしても、マスターに損な事はないですよ? ガイルの期待に応えてあげてはどうですか?』


『改善できなくても損はないか……。確かに損はないかもだけど、そういう病の娘の相手をするのは厄介だと思うぞ……』


 まぁ、結局はエミリア次第だな―――


「分かりました。エミリアは卒業後に私が娶りましょう。エミリアとの間に男児が生まれたら公爵家に養子に出しますので、ガイル公爵が育てて跡取りにしてあげてください」


『君はそれで良いのか?』

「はい。もし在学中の3年の間に病が改善しなかったとしても、なるべくエミリアが快適に暮らせるように配慮いたします。ミーファ姫とも相談する必要があるでしょうし、また後日この件はじっくり話し合いましょう」


 ガイル公爵とは、後日ゆっくり話し合う事にした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ