即日入部という大きな驚愕
「な、なんでわかったの?」
ひかりが驚いた顔でそう聞いてきた。そりゃそうだろう。僕はそんなことを知っているわけでもないのに突然そんなことを言い始めたのだから。生きていた印、普通の写真にも実は誰だって残されている。けれど、ひかりの思うところは重いものだった。
「なんで、って。まあ、白血病患者で生きている印を残したい気持ちも僕にはわかるっていうか、まあ僕も似たような理由で入部したようなもんだから」
そう、あんなことがあったから。僕は思い出という重さを知ることになった。
「まあ、自分が生きている印ってやっぱ大事だよな。生きていたことに気づかれないなんて、そんな人生悲しすぎるしな」
「ねえ、つばさのほうは何かあったの?」
突然そんなことを聞いてくる。だけれどもまあ理由が似ていると言ったからにはまあ自然な質問となるだろう。
「僕さ、女の子の親友がいたんだよね」
「それってつばさの彼女?」
ひかりがわざとらしくにやにやしながらそう聞いてくる。僕はそれを無視して続けた。
「小学生の頃ってさなんだかんだで記憶が曖昧でさ、僕でも思い出しづらいんだけど、それでもその女の子とは昼休みに他の友達と遊んだり休みの日にはその子の家に遊びに行ってテレビゲームとかして遊んでいたんだ」
「つばさはさ、その子のことが好きだったの?」
ひかりがまたわざとらしくそう聞いてくる。けれどその顔にはもう笑顔が消えていた。僕はその質問に答える。
「うん。僕にとっては初恋だったんだ。僕はあの女の子が好きだったんだ。だから告白しようとした。そして放課後その女の子を近くの公園に呼び出して告白しようとしたんだ、そしたら」
「そしたら?」
「僕はその公園でずっと待っていた。けれどその女の子は来なかった。何故かって?その女の子はその公園に行く途中事故に遭ったんだそうだ。即死だったそうだ」
「……………」
ひかりは黙ってしまった。悲しい顔をして顔を暗くしている。僕は続けた。
「僕はそのときのことを詳しく思い出すことができない。少なくとも女の子と遊んで、好きになって、告白しようとしたぐらいは覚えている。けれどその子がどんな女の子だったか、どんな見た目の女の子だったか、そして名前とかもう思い出せない。いや、名前は知っているけれど、それが他人のような感じなんだ。どんな見た目かもわかるけれど、それが他人のような感じなんだ。そして僕と一緒に写っている写真なんて一枚もなかったんだ」
僕は鞄に近づいて、スマホを取り出しながら続けた。
「だから僕はもう二度とそんな目に遭いたくない。だから」
カシャッ…
僕はひかりの映った自撮りを撮った。
「僕も誰かの生きている印を残したいんだ、そしてひかりも恐らくは両親ってところだろう。両親に自分の生きていたときの頃の写真を残したい、ってところじゃないのか?」
「凄い。つばさって探偵?」
「いや、僕と同じだからだよ」
あの胸のざわつき、あれは僕の過去の記憶に似たようなことがあったから、あるいは僕とひかりが似ているからか。それとも、
「それにしても、不意打ち!」
ひかりがいきなり怒った様子でそう言った。理由なんてすぐわかった、けれど僕はさっきのひかりのようにわざとらしく聞き返す。
「ん?何が?」
「私が若干暗めな顔の時に写真撮ったでしょ。まったく、恥ずかしいったらありゃしない。撮るなら笑顔の時、わかった?わかったならそれ消す!」
ぷりぷり怒りながらそう言う。頬を膨らませ、子供のように怒った。
「じゃあ暗めの時のひかりって珍しいんだな。それならなお消したくなくなる」
「消しなさい!この盗撮者!」
ひかりが僕のスマホを取ろうとした。
「や、やめろ!これは生きている印を残したいだけであって」
「そんなのはいいわけにすぎない!いいからちょっと貸しなさい」
「嫌だ~!」
「なあ、いきなり声が聞こえてきたけど何が…」
「つばさ、少しは静かに…」
いつの間にかはやてとつばめが教室に戻ってきた。あれから約一時間、部活が始まってもおかしくはない時間だった。何故二人が黙ったかというとスマホの取り合いをしていた僕たちではあったが端から見ればこれは完全に男女間のじゃれあいのようだった。
「これは誤解です、ご両人」
僕がすぐに誤解を解こうとしている。だがそのすきにひかりはスマホをひったくろうとしたが手を引っ込めてそれを阻止する。しかし誤解は解けなかったようで、
「つばさ、こりゃねーや」
とはやては既に呆れ、
「つばさ、今すぐ⚫ね」
とつばめには罵倒された。
「違う違う、僕たちはそう言う関係でなくてな」
今度はひかりがすきを作ったところで僕はひかりをどかしはやてたちのところに駆け寄った。
「来るな害虫、すぐに窓から飛び降りろ」
つばめはまだ僕のことを罵倒しているが無視する。それと同時にさっき撮った写真に鍵をつけた。それにしても人を害虫呼ばわりは少々失礼ではないだろうか。僕じゃなければ最悪人間関係が崩壊しかねない刃物だ。
「ほら、今日来た転入生いただろ?」
「ああ、小山さん、だっけ?」
「小山ひかりでしょ」
つばめがそう付け足した。
「そう、そのひかりがだな今日この写真部に入部したってことで今ここにいるわけで」
「何!?まじでか!?」
「つばさ、その冗談きついよ」
つばめは信じてくれなかった。何故?なんて思っているといつの間にかひかりが寄り添ってきてきた。そして、
「はい、これ」
と、つばめに一枚の紙を渡した。
「!!」
すると、つばめは目を見開いた。そりゃそうだろう。
「《入部届》ですって!?」
ちなみに僕はこの驚いたつばめを撮ろうかと思ったのだが、流石に半殺しに合いそうだったのでやめた。だからこっそり脳裏のデータに保存した。
「ちなみにひかりに言っておくけど、僕が部長だからね。この二人は部員。まあ、僕がじゃんけんで負けたからなんだけど」
「あら、そう」
と、ひかりは《入部届》を僕に渡してくる。その顔はもとの笑顔に包まれていた。
「んじゃそう言うわけだからよろしくってことで」
「ちょっと待った!」
とひかりがいきなり大声をあげた。皆が少し驚いた。
「なんだよ?」
「入部したってことを伝えられたのはいいとして、あの写真のことを忘れたなんて言わせないわよ」
「あ、あれなら勝手に削除されないよう鍵つけておいた」
僕は自慢げにそう言った。証拠もひかりに見せるとひかりはゆっくりと僕に歩み寄ってきて、
「なに勝手にそんなことをしてるの、よ!」
ドカッ!
「ぐへぇ…」
僕はいきなりひかりに腹パンされた。僕はしばらく身悶えた。
「ほんと、信じられない。そんなに私の画像を盗撮できて嬉しい?」
怒りを爆発させた。
「小山さん、つばさはそういう奴なのよ」
とつばめとはやては呆れている。その言葉にひかりは諦めたのか、大きな大きな溜め息をついて、僕の方を再び向いた。
「もういいよ!でも、ぜっっったいにネットにあげないでよ!」
「あげるか!」
僕はできる限り大声でそうツッコミした。プライバシーの保護超大事!!!




