プロローグ後編
少し長いです
俺が目覚めたのは、荒れに荒れた平原だった。
俺は何度も目をこすり、頬をたたき、さっきまで光の手を握っていた手を見ると急に不安が押し寄せてきた。
それから、どのくらいの時間そうしていたか分からないが俺は泣いた、泣いて泣いて泣き続けた。
そんな、俺の涙を止めたのは、誰かの優しい言葉でも見慣れた光の顔でもなく吹き飛ばされるほどの熱風とその熱風を起こしただろう巨大な竜の咆哮だった。
俺は、竜が見えたのとは逆に逃げたわき目もふらず全速力で逃げた。
1時間くらい走ると、平原を抜け林に入った。林には、いくつか雲より高くそびえる大樹がありその内の一つに人ひとり入れそうなくぼみがあった。
俺は、くぼみの中に飛び込んだすると心臓が脈の区切りが分からないくらい鼓動し息苦しいのに今更長に気付いた。
当然だろう、50メートル走のペースで1時間走ったのだ。というかよく今まで気づかなかったのが本当に不思議だ。
そんなことを考えながら俺は、木に寄りかかり気を失うように眠りについた。
次に、目が覚めると俺は知らないところに寝かされていた。なので、
「知らない天井だ」
と、つぶやく。うん、こんな発想が出来るのだから脳には問題ないだろう。ぱっと見拘束もされていない。
ぱっと見というのは、さっき竜を見てしまったからだ。
竜が居て知らない土地となるともうこれは、異世界しかないだろうそして異世界といえば魔法や異能が発達した世界と相場が決まっている。
となると、奴隷化の魔法の様に俺をここに連れてきた奴にもしくは、その主に逆らえなくなるような事も出来るかもしれないが、科学世界に生まれ平凡に育ち魔法なんて空想の産物だと思ってきた物に対しての知識なんかじゃ、せいぜい出来てこんな魔法ありそうと予想を立てるくらいが関の山だ。
そんなことを考えていると、ドアが開くような音がした。そして、誰かが部屋の中に入ってくるすると、その者は
「《開門》《光》《拡散》《宿る》《土壁》《展界》」
と物凄い早口でよどみなく歌の様に口にする正直こいつ何しているの?という感じだったが次の瞬間室内が明るくなり初老の男性が姿を現す。そしてようやく、何をしたのかははっきりとした。
彼は、魔法を使ったのだと!!
「目覚めたかね、客人よ」
と初老の男性が声をかける。
「あっ、はいなんか助けていただきありがとうございます。」
と、俺は少し慌てながら礼を言う。
「何気にすることでは無い。はいこれおかゆだ食べなさい」
初老の男性は、そう言って手に持っていた木製の器に入ったおかゆと水を渡してくれた。
「食べながらでいいから、少し話さないかね?」
「分かりました。俺の・・・いえ、私の名前は、伊月晃です。」
俺は、そう簡潔に自己紹介をした。異世界転移をしたことも話そうかと思ったが信じてくれないと思いしなかった。
俺の話を聞いた初老の男性は、しきりにうなずき「やはりか」とつぶやくと、
「儂の名は、佐藤勇樹。同じく日本から49年前当時高校1年生の時に転移して来た異世界じゃ」
と、物凄い爆弾を落としやがった。
「・・・」
俺は、少しの間思考が停止した。まさか、転移した後最初に出会った人が同郷の人って、一体全体どんな確率だよ。
「あっ、もしかしてさっきのやはりって・・・」
「うむ、勿論日本人だと思い助けたのじゃよ」
「あーそうだったのですね」
まぁなんとなくそんな気がしていたけどよ。けど、実際いい人なのは確かだろうな。
「して、伊月よ『あ、晃でいいですよ』そうか、して晃よお主これからどうするのじゃ?」
そうだな、まずは情報収集とかしないとだし。
「とりあえず、近くの首都に行こうかと」
「そうか、晃お前こっちに来てどのくらいになる?」
「大体1日も経っていないかと」
うん、寝ていたりした時間も含めても流石に一日も経っていないよな。
「そうか、なら仕方ないな。いいか晃この世界には、国は存在していないのだよ。それどころか人類の生存圏なんてない」
ん?何言った?遂に耳か脳おかしくなったのかな?
「すみません、もう一度確認してもいいですか?」
「だから、国どころか人類の生存圏は無い」
そうかー無いのかじゃあ仕方ないな。
「って、そんなー」
「そんなーと、言われてもな。じゃあ、予定はないのじゃな」
「そうなります。」
「なら、ここで暮らすか?」
え?
「いいんですか」
「もちろんじゃ、ここなら安全じゃし食べ物もある。その代わり儂が身に着けた技術や立てた仮設の継承者になってもらいたいのじゃ」
そうだな、特にやることないし、いいか。
「俺で、良ければ」
この時、一人称が他人用の私から身内とかで使う俺に変わっていたのを言ってから気づいた。
~あれから時が流れて約16年後~
今日、勇樹師匠がついに亡くなった。
師匠には、今日まで様々な事を教わった。料理とか洗濯とか薬剤の片づけとか・・・あれ?雑用しかしてなくね。
まぁ、楽しかったし良かった。それに魔法やこの世界についても良く知れた。
魔法とは、生き物の心臓に集まる魔力を込めた言葉【魔句】を使い一時的に世界に影響を及ぼす物であり、【魔句】にするのは、自分が言葉だと無意識に判断しかつ意味が瞬時に分かるのであればなんでも良く、試しに英語と日本語で同じ魔法を使ったが、結果は変わらなかった。
世界については、この世界は小説でよくある中世ヨーロッパどころか神代、英雄王やヘラクレスが活躍する時代らしく。
神々や大魔王達が永遠と闘争をし続ける時代らしく人類は、戦いの余波が当たらないように地下にそれぞれ10人から多くて50人くらいで隠れているらしい。これを聞いた俺は、魔法を使い数にものを言わせてごり押しすれば敵うのでは?と聞くと簡素に無理と言われた。理由としてこの世界に満ちている魔力をを呼吸で空気と一緒に取り組み心臓にたまるがこの魔力は、大魔王や神が創り使い終わった搾りかすの様な物であり、そんなのをいくら使っても効くわけないとその後神と大魔王の陣営の説明を聞いた。神は、戦乙女を率い自然を操る。大魔王は、悪魔を率い精神を操る。そして両陣営共に上位の魔物を湯水の如く下級へいとして使う。
次に、固有能力というのを聞いた。この特徴は、魔力を使わず効果を出す。つまり、固有能力なら神々と大魔王達と同じ土俵に立てるのだ。
しかし、世の中そううまくいかず固有能力を持っている者は100人に1人さらにそこから戦闘に使えるのが1000人に1人つまり10万人に1人でしか戦闘に参加出来ず、さらに固有能力の威力は、体積+功績で決まる霊格というので決まる。功績というのはどのくらいの霊格の持ち主をどれ程殺したかまた救ったかで決まるらしい。これでは、最低でもスカイツリー以上のあり日々上位の魔物や悪魔、戦乙女を殺している神や大魔王には、敵わない。
そんな一般常識を教わった後、師匠が研究していたものを聞いた師匠が研究していたものは、あれ程無理と言っていた神や大魔王を固有能力を使えなくても殺せる方法だった。
その方法は、一つ、搾りかすの様な魔力を凝縮・抽出を繰り返し神や大魔王に対抗できるだけの濃度に戻す。
二つ、装備によって肉体を変化させる技術の確立。
三つ、より短時間で発動可能な魔法の技術確立。
の計三つなんと!師匠は、この技術の確立には成功しているもののいざ使うと神と思われる力に邪魔をされ上手く発動しないそうだ、理由としては最後に魔力を使い定着する為に阻害されるのだとか。
その話を聞き終わると、師匠は俺の固有能力を調べてくれた。調べ方は、簡単で薬を服用すると脳内に自身の固有能力の内容が刻み込まれ能力が使えるようになる。
幸い、俺には能力がありその内容は物質的なものから概念的なものまですべてのものを視る事が可能になりまた、視ているものを改竄出来るという物。
例えば石を視てそれに動かないという性質を付けると石である限り下の地面を削ろうが、ハンマーで叩こうが石である限りその場から落ちないし、ひび割れが起きても崩れない、しかし熱で溶かされたり砂になるまで砕かれたりするとこの性質が無くなる。また、酸素原子などの数が多過ぎる物を見ると脳内に焼かれているような痛みがという能力、しかしこのれで魔力の中でも師匠の体内の魔力のみ性質を変えるとなんとか三つの技術を使うことに成功した。ここに来るまで約1年掛かった。
その後、俺と師匠はこの能力に目を付け訓練と実験を繰り返した。その中で師匠の能力も教えてもらった。師匠の能力は世界中の情報をまるでインターネットの様に閲覧できるものらしい。
そして、現在俺の能力は訓練の結果神や大魔王に触れていたら能力の対象に出来るくらいになった。そして師匠の作った技術三つは、一つ目のは俺が三つ目のと組み合わせさらに魔句を最初と最後を除きルーン文字でにし更に速度を早め《ルーン魔術》を作った。二つ目はそのまま《ヒエログリフ》とし各地の人々を集いそれから神と大魔王に勝負を挑んだ。
作戦としては、簡単で俺が神や大魔王に触れられる様に支援してもらいつつ警戒されないうちに封印つまりなにも出来ない状態にするという物。
その後全ての封印が終わると仲間と別れ封印された神や大魔王を使い二つのシステムを構築した。一つは、神や大魔王の封印によって魔力が補給されずいずれ尽きる事を防ぐために、なるべく穏便に魔力を満たすための方法として、ダンジョンシステムを構築した。これに加えてなんかしらの理由による神や大魔王の復活の阻止のため神や大魔王と戦えるレベルまで霊格が増えた者の魂を保管するシステムを構築を予定していた、さらに俺の能力で自身の状態が数字や字でわかる自己刻印が手の甲に現れるようになる様に世界を改竄した。
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うん、ようやく走馬燈が終わった。
ただ、光や隆、緑、師匠に会いたくなるから、あまり見たくなかったかな。
この歳にもなっても一緒にいたときに気づかなかった初恋を引きずるのはカッコ悪いの。
なら!
「光!ずっとお前の事が好きだった。だから、俺はずっとお前の幸せを誰よりも願っているぞ!!」
ようやく、言えたの・・・全く初めての告白で俺が幸せにするもいえないとは、恥ずかしい限りじゃな。
こうして、伊月晃は、光の中掻き消えて行った。