お買い物(デート)③
「ふぅ、食べたな」
「そうですね、先輩」
一息吐きながらそう呟くと、雫がそう返してくれた。
今は店を出て、今は雫が服を買うために洋服店に移動している。俺は別に行かなくていいんじゃないかなって思うけど、さっきの店を出た時その事を言ったら、無言でただただ笑顔を向けられて......。うん、それ以上なにも言えなかった。有無を言わさないってこの事なんだなって知ったよ。
一人で納得していると、雫がある店を見ているのに気が付いた。そして雫の視線の先を見て見てると一枚のハンカチがあった。遠目でよく見えにくいが、マカロンが刺繍されているように見える。
「なにか気になるのでもあったのか?」
「い、いえ!そんな事ありませんよ!ほら、早く行きましょう」
雫に話しかけると、肩を一瞬ビクッとさせた雫が早足で洋服店に向かっていった。俺はもう一度だけそのハンカチを見て雫の後を追った。
後ろからみた雫は、少し後ろ髪を引かれているように見えた。
雫が気になった洋服店に入るとすぐさま店員が来て雫の要望に叶う服を雫と俺を連れて歩く。
途中店員が俺と雫をお似合いのカップルと呼んで顔が熱くなるほど赤くなってしまった。やはり、そう見えてる人もいるのか。
そんな感じで店内を回って雫が気に入った服を半分持って試着室に入った。残り半分は俺が持っている。まるでファッションショーのように着替えては試着室のカーテンを開けて出てくる。元がいいからなのか、どれもこれもとても似合ってると感じる。
「どうですか?先輩」
そして、この言葉を聞くのがこれで今日で10回目だ。今回の服は水色のワンピースに白色で薄目の生地のブルゾンっていうのを羽織った感じだ。
「うん、似合ってるんじゃないか?」
流石に10回も感想言ってたら同じようなこと言ってしまうよな。昔、彩菜が女の子が感想求めてる時は、同じ言葉をあまり使わないようにって言ってたのを覚えてたから実践してるけど、なかなか難しい。
「先輩、次の......最後の服渡してもらっても良いですか?」
そう言われて、手元にある最後の一着を雫に渡す。......そろそろかな。
「ちょっとお手洗い行ってくるから俺が戻るより先に会計終わったら待っててくれ」
「わかりました」
試着室の中から返事が返ってきたのを確認して、俺は少し駆け足でさっきのハンカチがあったお店に戻った。
駆け込むような感じで店内に入る、女子向けの店だからなのか若干居心地が少しの我慢だ。
えっと、さっき見てた種類のハンカチは......あ、あったあった。色は展示で置いてあった色と同じ黄緑色かな。
早速ハンカチをレジに持っていき、財布を取り出す。
「一点で1500円になります。プレゼント用なら小さい箱に入れますが如何なさいますか?」
「ならそれでお願いします」
そう答えて俺は財布の中から二千円を取り出して支払いを済ませる。てか、意外と高いな。
箱詰めしてもらったハンカチをバックの中に入れ込み、お釣りを受け取って店から出る。
急いで戻るとちょうど雫も会計を済ませて店から出てきたところだった。ちょうど戻ってきた俺の顔を見た雫が何故か驚いた顔をしていた。
「ちょ!先輩汗かいてるじゃないですか」
「いやぁ、トイレが混んでて戻ってくるときに走ったからかな」
「そんなに急がなくても大丈夫ですよ。そうですね、ちょっと自販機で飲み物でも買いますか?」
「そうだな、それからカーテンなんかを見に行くか」
「はい、そうですね」
雫から荷物を受け取り、雫が歩くペースに合わせて俺は雫の隣を歩いた。




