俺達の娘が生き返った!!!
「与作は木を切る!」
「「「「「「ヘイヘイホ~!」」」」」」
「与作は木を切る!!」
「「「「「「ヘイヘイホ~!!」」」」」」
今日も一日、いい仕事したぜ。
やっぱり、汗を流すっていいよな。
ビバ、労働!って感じだぜ。
おっと、またお嬢ちゃんが仕事場に遊びに来たようだな。
てめーら、お嬢ちゃんを迎えに行くぞ!
「「「「「「ウィーーー!!!」」」」」」
―――
ああ、やっぱり最高だぜ。
こんなに美しく、お淑やかで、気立てもいい、純粋無垢な嬢ちゃんはこの世にそうは居ねえ。
そんな嬢ちゃんがこうして毎日遊びに来てくれる。毎日楽しそうにお喋りしたり歌ったり。
ははは、なんて可愛い笑顔だ、癒されるぜ。
他の連中も皆そうだ。嬢ちゃんが笑うと皆がそれに癒される。仕事の疲れなんか吹っ飛ぶほどにな。
おやぁ?、まーたあいつだけむつかしい顔してやがるぜ。素直じゃねーなー。
嬢ちゃんの前だからってかっこつけやがって。
知ってんだぞ、お前実は嬢ちゃんにメロメロじゃねーか。
堅苦しい奴はいかんねぇ。
とにもかくにも俺たちは、嬢ちゃんと話すこの時間が何よりも大切なひと時だ。
仕事の疲れも吹っ飛んで、また明日頑張ろうって気になれる。
ここに居る草花や動物達だっておんなじさ。
みんな嬢ちゃんと居られるこの時間が大好きなんだ。
でもな、嬢ちゃん。最近はこの辺も物騒になったんだぜ。不審者を見たって話がある。
嬢ちゃんが遊びに来てくれるのは嬉しいが、それ以上に嬢ちゃんに何かあった時のほうが俺たちは怖いんだ。
嬢ちゃん、これからは俺達の家で大人しくしておきな。
そうは言う物の、それからも嬢ちゃんは遊びに来た。
幸いにして不審者の噂も聞かなねぇ。どうやら俺達の取り越し苦労だったようだ。
いやーよかった、よかった。
何でか知らんが、帰ったら嬢ちゃんが倒れているのが何度かあったが、ただ寝ているだけのようで、俺達が起こすと直ぐに目を覚ましてお喋りTimeだ。
そうして俺達は嬢ちゃんとの会話にまた花を咲かせる。
思えば、それが原因だったのかもな。
―――
「与作は木を切る」
「「「「「「ヘイへイホ~」」」」」」
「よざぐはぁ、ぎうぉぎる!」
「「「「「「ビェイ、ヴぇいボォ~」」」」」」
嬢ちゃんが死んだ。
いつもの場所で眠るように死んでいた。
俺達が帰ったときには何もかもが手遅れだった。
森の草木や動物が言うには、嬢ちゃんは以前この辺に現れた不審者から、真っ赤な丸い者を渡されたらしい。
ああ、これのことか。
嬢ちゃんの近くにあったそれは人間達の言う、禁断の実という物だった。
くそう、俺達が油断したばっかりに嬢ちゃんが死んじまった。
なんでこんなにいい子が殺されなきゃならないんだ。
この世は、あまりにも理不尽だ。
俺達はもちろん草木も動物も、いや、この森の全てが皆、ただただ泣いた。
年端も行かない人間の嬢ちゃんの死に、この森は悲しみに包まれていった。
俺達は今嬢ちゃんの躯を入れる棺を作っている。
当然、悲しみは拭いきれていない。
しかし、嬢ちゃんは人間だ。人間には葬式という物があるらしい。人間には人間の文化がある。俺達はそれに則ることにした。
だけど、こんなに綺麗で可愛い嬢ちゃんが入る棺が普通であっては為らないと思う。
そうだ棺はガラスにしよう。嬢ちゃんの心のように透き通っていて、嬢ちゃんの美しさに負けない棺にしよう。
俺達は泣きながらその棺の製作に取り掛かった。
―――
棺が出来た。嬢ちゃんの美しさには負けるがそれでも嬢ちゃんの美しさを引き立たせるくらいは出来るだろう。
俺達は動くことの無い、嬢ちゃんの躯をガラスの棺に入れた。
ふむ、しかし、棺の中に嬢ちゃんだけって言うのは寂しいな。俺達は皆、そう思った。
とそこへ、森の動物達が色とりどりの花々を持ってきた。中には今の季節には咲かない花もある。
そうだよな、皆悲しんだよな。
草木が季節外れの花をわざわざ咲かせた。
動物達がそれをわざわざ持って来てくれた。
すべては、この嬢ちゃんの為。
俺達は、また泣いた。草木も動物も泣いた。
そんな時、人間の男が真っ白な馬に乗って現れた。
人間の男は嫌いだ。言葉遣いは荒くて、乱暴で、動物達を狩り、草木を燃やし、俺たちを捕まえようとする。
しかし、今はそんな事どうでも良かった。
そいつがいきなり嬢ちゃんにキッスをしやがったからだ。
はぁ?。お、お前、何してくれとんじゃ。その子に触れるなんざ1万ね。
‐ゴホッ、ゴホッ-
へ?。
お、おい今。
「あら、小人さん達おはよう。ずいぶんいい香りがすると思ったら今日はお花のお布団だったのね」
嬢ちゃんが、白雪姫の嬢ちゃんが生き返った!!。
俺達は一斉に白雪姫の嬢ちゃん駆け寄ると思わず抱きついた。
「ど、どうしたの?。そんなに泣いたりして。でも嬉しそう。そんなに良い事でもあったの?」
ああ、あったよ。
もう二度と会うことも話すことも出来ないと思った、俺達の娘に出会えたんだから。
―――
それから、嬢ちゃんは人間の男と結婚した。
そいつは一国の王子だったらしい。
なんだろうね、嬉しいけどちょっちさみしいな。
でもまあ、嬢ちゃんが幸せそうだしそれでいいか。
ハハハ、あそこにいる人間の女なんか、泣きながら踊ってやがる。
皆が幸せそうな良い式だった。