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8.

 ルイジ・ジャンフランコ将軍麾下五百名の騎兵隊がパレルモに到着したとき、あいにく町は雨だった。家畜船の薄暗い船倉から馬が渡し板を渡ると蹄についていた湿った藁くずが落ち、踏み潰され、板の上にシミとなって残った。雨はそのシミを洗い流すほど強くは降っていなかった。兵士たちは引き金と銃口に油紙を巻いたカービン銃を背に雨のなかを自分の持ち馬とともに歩いていく。雨合羽を着た老人が釣竿を出している以外に人の姿は見えなかった。誰もいない通りを馬で闊歩してみると、青白い不安げな女の顔が窓に見え、すぐカーテンが閉じられた。町は静まり返っている。円錐型の砂糖が並ぶ雑貨屋。鍛冶作業場で煙草を吹かす男たち。爆破されたまま再開のメドがたっていない路面電車。高い壁のあいだを歩いていると落書きが見える。「くたばれ、憲兵」

 騎兵隊は縦隊をつくり、ゴムをひいたマントや帽子を覆った白い雨よけから水を垂らしながら、黙々と進んでいった。パレルモの市民は騎兵隊の後ろから臼砲のようなものを積んだ軍のトラックがしつけのよい動物のようにのろのろとついてくるのを見た。一九一二年の対トルコ戦争のことを覚えていた退役兵はあれが臼砲ではなく、砂漠に住むリビア人たちが毒ガスや飛行船よりも恐れた兵器――セメントの攪拌機であることに気づいた。騎兵隊とトラックの列は四方八方に偵察を飛ばしながら、ゆっくり山岳地域を登っていった。

 数日後、シチリアの地元紙がパレルモ近辺の村々の水不足を掲載し始めた。軍は《名誉ある男》や山賊を匿った村落の井戸や水源をかたっぱしからセメントで埋めていった。これまでモンテアルファロの《名誉ある男》やパッサカリアたちを匿ってきた――あるいは匿うことを強制された――人々は政府の苛烈な制裁と密告に対する《名誉ある男》の報復とのあいだに挟まれ、すり減り、最後は消えてしまった。

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