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11.

 ペッピーノじいさんが拘留先の留置所から戻ってくると、地主はもうオリーブ畑を見回らなくていいと言ってきた。かわりに知恵遅れを雇ったから、と。ペッピーノじいさんは素直にいいアイディアだと感心した。知恵遅れなら安く雇えるし、もし《名誉ある男》たちの殺人を目撃しても論理立てて話すことはできないから証人として不適格となる。しばらく暮らせる貯えがあったので、当座の生活はなんとかなった。それ以上のことはもうなにも分からない。

 特にすることもないので、ペッピーノじいさんは自分の後釜が仕事している様子を眺めることにした。知恵遅れは散弾銃の撃鉄をあげたまま、土手で居眠りしていた。なぜ神さまはこいつに半分しか脳みそをくれなかったのだろう? それになぜ馬鹿な二人の《名誉ある男》にうちの井戸に死体を投げ落としたのだろう? 主のなされることは常に謎に満ちていますとか、主は乗り越えられない試練は与えませんといった言葉で今の状況をごまかせなかった。

 彼は知恵遅れの銃の撃鉄を親指で強く押さえながら引き金を優しく引いた。留め金が外れて、撃鉄を押さえた親指に銃身に戻ろうとする力がかかった。ペッピーノじいさんは親指の力を徐々に抜いていき、撃鉄と雷管打ちのあいだが一ミリになったあたりで親指を外した。銃はカチリと音を鳴らし撃鉄は安全な位置に戻った。

 その瞬間、五発の弾丸がペッピーノじいさんの背中にめり込んだ。知恵遅れは目を覚ますと一目散に逃げ出した。ペッピーノじいさんは散弾銃を抱きかかえるようにしながら土手を転がり落ち、オリーブの木にぶつかった。中折れ帽をかぶった二人組は土手を降りると残りの弾を撃ち込み、そばに落ちている石ころを死人の口につめこんだ――意味は『余計なことをしゃべるとこうなる』

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