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蕾が咲くとき

作者: 凡人 悲劇

 プロローグ


「見てみて~満天の星空!今日は絶好の観測日和だよ!」


 はいはい…と、適当に返事をした。


「もぉ、慶介ったら、私の話ちゃんと聞いてる?」


 買ってきたホットコーヒーを啜りながら、うなずいてみせる。


「返事!」

「はいはい…」


 目の前で星空を観測している女子に、適当な返事を返す。

 俺は、春日慶介。何の変哲も無い、普通の高校2年生だ。

 一方、前で話している女子は、日野美咲。黒髪のロングヘアーが印象的な、同じ団地に住む、同い年の幼なじみだ。

 高校は別々になってしまったが、今でもよく一緒に行動する。

 今日も、美咲の宿題に付き合わされて、近くの公園までやってきた。

 何でも、星空をスケッチしてくるという宿題らしいのだが…


「俺、思うんだけど…それって小学生の宿題じゃね?」

「私だって知らないよ。でも、やれって言うんだもん。忘れたら成績下がるし…」


 美咲の言うことも一理ある。だが、更に腑に落ちないのは…


「俺、帰っていいか?」


 慶介がここに居るということだ。

 11月半ばの、しかも冷え込んだ夜。何で外に出てこなければならないのだろう…

 そんな意味も込めて聞いてみたのだが、残酷な美咲から返って来た言葉は、


「だ~め。最後まで付き合って」


 と言う、お決まりのわがままだった。


「はぁ…いつ終わるんだ?」

「後10分ぐらいで終わるから」


 しょうがない…と、慶介はまたコーヒーを啜る。

 3本目のホットコーヒーを開けたとき、ようやく美咲が立ち上がった。


「今日は終わり。帰ろ♪」

「あー…折角開けたのに…」


 コーヒーを開けて一口しか飲んでないのに…タイミングが悪い。


「飲むまで少し待…ってオイ!」


 言い終わる前に、慶介のコーヒーは美咲に奪われた。


「じゃ、頂戴。ふふっ、私も寒かったんだ~」

「あ、コラ!全部飲むな!」


 美咲からコーヒーを取り返した慶介は、思いっきりため息を吐いた。


「少ししか残ってないし…」


 全部飲み干して、缶をゴミ箱に捨てた。


「まぁ、いいか。帰るぞ」

「うんっ」


 荷物をまとめた美咲を乗せて、慶介もチャリに跨った。

 2人でチャリに乗り、団地を目指して夜道を走る。




 こんな2人の関係が、ただの幼なじみではなくなる日が刻々と近づいていることを…

 2人はまだ知らなかった。




 1 日常




 慶介が住んでいる団地は、5階建てで大きな玄関が3つある。

 玄関に入り、階段を上ると、各家庭の玄関が2つあり、それが踊り場を間に挟み、5階まで積み重なっている。慶介は3階、美咲は4階に住んでいて、その気になれば10秒もせずお互いの家を行き来することができるのだ。

 朝、美咲が階段を下りたのを確認して、慶介も後を追うように家を出て、玄関で待ち合わせるのが習慣になっていた。

 慶介の高校はチャリで行ける距離にあり、美咲の高校はバスに乗らなければ通えない距離にある。

 何故か知らないが、入学してから1年半以上、美咲が乗るバス停まで、慶介が送り迎えをしていた。当然、慶介のチャリに乗せて。

 2人乗りが見つかったら、警察がうるさいから止めよう、とずっと言っているのだが、美咲は止めてくれる気配が無い。

 高校を卒業するまでこれは続くものだと、慶介は半ば諦めている。

 団地の玄関で美咲と合流。朝、お決まりの台詞として、慶介は美咲に言った。


「おはよう。チャリの2人乗りは…」

「やだ♪おはよ、さっさと行こう~」


 最後までいい終わる前に拒否されてしまった。

 後ろに美咲を乗せて、慶介はチャリを走らせる。

 バス停まで5分も無いが、その間に他愛の無い話で盛り上がるのも、朝の習慣になっていた。


「あ、あのさ」

「なんだ?」


 ちょっと言いにくそうなことを喋ろうとする美咲。大体、声音でわかってしまうのだが、こういうときは大抵…


「昨日のお笑い見た?最近、コンビネタってワンパターンが多いよね~…」


 思いっきり話題を逸らされる。問い詰めても答えてくれないだろうが、一応聞いてみた。


「確かにな~。ところで、さっき何を言おうとしたんだ?」

「……」


 美咲の声が聞こえなくなった。恐らく、図星を付かれて焦っている、と言うところだろう。


「別にいいよ。どうせ、学校の友達にでも話すんだろ?」

「あ、いや…そういうんじゃないんだけど…」


 なんて話しているうちにバス停前に着いた。


「バスに遅れるぞ?まぁ、気分が乗ったらメールでもしろよな」

「わかった。ありがと」


 慶介は美咲に手を振って、学校に向かった。




 ところで、美咲の言いたかったこととはなんだろう。

 3日後の11月19日は慶介の誕生日。


「…まさかな」


 美咲には、5つ離れた友輝と言う弟がいる。

 実は、友輝の誕生日は2日違いの11月17日。つまり、明日だ。

 友輝が生まれてから、美咲に誕生日を祝って貰った記憶が無い。

 数年前に、マジ顔…の振りをして、美咲に誕生日のことを聞いて見た。

 2人も祝うのは面倒だから…なんて返事を期待したのだが、美咲の反応は予想外のものだった。

 美咲は急にオロオロして、何も言わなくなってしまったのだ。あの反応には、逆に慶介が困ってしまった。

 忘れてたんじゃないんなら許す…とか言って、その場はごまかしたのだが、美咲はああ見えて結構気にするタイプだ。


「今更思い出した…とか、無いよな」


 何となく引っかかるが、気にしていてもしょうがない。

 何かあれば美咲からメールが来るだろうし、3日後にははっきりすることだ。

 慶介の誕生日を祝ってくれるなら、素直に喜ばなくてはならない。

 このことは、忘れておくことに決めた慶介だった。




「ったく…」


 学校帰り、デパートに買い物に来た慶介は、グチグチいいながらお菓子コーナーを歩いていた。

 美咲には弟が居るのだが、慶介にもまた、兄が居た。

 慶介の5歳年上で22歳。専門学校を卒業し、20歳から働いて、ついこの間、家も出て行った。

 そんな兄から、さっきメールが届いのだ。


 “ふるさとの味を送ってきてくれ”


 たったこれだけ。慶介は、パシリに使われている。


「ふるさとの味ってなんだよ…おふくろの味ならまだわかるけどさ…」


 最初は、デパートに売っているような、観光用のお土産でも送ろうと思って、駅前にあるデパートにやってきたのだが…

 観光用のお菓子は高い。兄の為に、1000円も2000円も出費する気にはなれなかった。

 と言うわけで今は、食料品売り場のお菓子コーナー。ご当地限定のお菓子や、飲み物や、カップめんなどを詰め合わせで送ってやろうと、方針を変えてみたのだ。

 安い物を適当に詰め合わせれば、500円ぐらいで済む。


「安くて、ふるさとの味。これだ!」


 とか言いつつ、安めのご当地物をカゴに放り込んでいく。

 予算よりちょっとオーバーしたが、会計は573円。それでも、観光用のお土産を買うより、よっぽど安く済んだ。




 買い物も済ませ、家に帰ろうと思ったとき、ベンチで携帯を開いている美咲を見つけた。

 制服姿であるところを見ると、学校帰りなのだろう。それならば間違いなく、美咲は歩きだ。

 慶介はチャリだし、乗せていってもバチは当たらないだろう。


「美咲?奇遇だな」

「っ!」


 慶介が目の前に行っても気づかないようだったから、名前を呼んで声をかけた。

 一方の美咲は、思い切りビックリして、声も上げられないみたいだ。

 そんな様子に、慶介が驚いてしまう。


「そんなに驚かすつもりは無かったんだけどな…」

「ったく…もぉ、ちょっとは優しく声をかけてよね!」

「いや、普通に声掛けたし…」


 なんだか気まずい空気になっているような気がする。だが、美咲はそれを意に介した様子も無く、


「ちょうど良かった。慶介に1つだけ聞きたいことがあるの。素直に答えて欲しいんだけど、お願い!」


 両手を合わせて、お願いのポーズ。普通に聞けばいいのに…と思うのだが、慶介は素直にうなずいた。


「今、慶介が一番欲しいものって何?」

「…は?」


 そんな、お願いして聞くことでもないと思うが…慶介の反応が無いのが不安なのだろうか、聞いてもいないことを美咲は喋りだした。


「あ、いや、明日って友輝の誕生日なんだ。ほら、あの子も12歳でしょ?もう、私の感覚でプレゼントを用意するのってどうかなぁ…って思って。慶介の欲しいものを参考にしたかったの」


 そういうことか…ちょっと期待しかけた自分が恥ずかしい。


「今、俺は靴が欲しいかな。指定靴じゃなくて、普段用のやつ。中学卒業ときに買い替えて以来で、そろそろ欲しいかな…って」


 慶介は正直に答えたのだが、友輝にこれが当てはまるとは思えない。

 友輝の欲しそうな物を付け加えようと思ったが、美咲はこの答えで満足だったようだ。


「靴ね…そっか。あの子もそういうの気にする年かもね。ありがと、参考になったよ~」

「まぁ…そういうんだったらいいけど。あいつに靴か…何を買ってやればいいだろうな」

「大丈夫。あの子の趣味は大体わかるし、外れてても文句言わせないもん」


 姉の権限と言うか、何と言うか…確かに、自分の兄にもそういう権限があった気がする。

 つくづく、弟とは兄や姉に頭が上がらないもんなんだなぁ…と思い知らされてしまった。


「んで、今日は買わないのか?」

「靴のサイズ知らないし、お金もないし。今日は諦めて帰るよ」


 美咲が帰ると言うならば、好都合だ。慶介は、最初の目的を口にした。


「1人なら、チャリ乗るか?」

「サンキュ。助かる♪」


 これが、朝に聞きたかったこともこのことなのだろう。慶介はそう結論付けて、美咲と一緒にデパートを出た。




 チャリを走らせて30分。団地前に着いた。


「ありがと。バスは出費があるから辛いよね~」


 チャリを降りた美咲の一言は、何とも現実的な問題だった。


「美咲が変な高校に行くからだろ?」

「もぉ…私の夢、知ってるでしょ?」


 昔から、絵を描くことが得意だった美咲は、絵の勉強をしたいと言って、今の高校を選んだ。

 美咲は、夢のために、美術系の高校を選んだのだ。

 その高校でも、それなりに評価されていると言うのだから、美咲の才能は本物なのだろう。


「夢…ねぇ…」

「あ~今、バカにしたでしょ?サイテー」

「お前な…」


 美咲はそっぽを向いてしまう。心なしか、笑顔に見えたので、本気で怒っているわけではないようだ。

 美咲がそっぽを向いた方向から、1人の少年がこちらに向かって歩いてくるのが見えた。


「あ~、姉ちゃん、兄ちゃんだ~珍しいね、2人で帰ってきたんだ~」

「友輝~買い物帰り?」


 どうやら、美咲の帰りが遅いために、友輝がおつかいを頼まれたようだ。

 日野家では、美咲や友輝が夕食の買出しをやるときは、自由に献立を決めていいことになっている。

 買出しが面倒なとき、美咲のお母さんが子供たちに買い物を頼むときに使う裏技なのだが…


「今日の夕食はなんだ?」

「コロッケ!」


 慶介が、友輝に尋ねてみると、見事に面倒臭そうな夕食のメニューが返って来た。


「あちゃー…大変だな、美咲」

「じゃあ、慶介が手伝ってよぉ…」

「ごめん、俺宿題があるんだ」


 子供たちにメニューを決めさせると、面倒なメニューになって、余計に面倒臭いことになるような気がする…のは慶介だけだろうか。

 そして、結局美咲も手伝わされる羽目になるのだ。


「はぁ…もうちょっと早く帰って、私がおつかい行けばよかった…」

「気を落とすな。友輝、荷物持ってやるよ」


 と、美咲の肩を叩いて、友輝の持っていた袋を受け取った。

 そんなやり取りを見ていた友輝が一言、


「姉ちゃんと兄ちゃんって…付き合ってるの?」


 友輝の突拍子もない問いかけに、2人は固まる。


「なっ…」

「っ!…」


 2人は、驚きをかみ殺し、頭の中で状況を整理する。


(考えたこと無かった…俺にとって美咲は…)


 最初に我に返ったのは、美咲のほうだった。


「ちょっ…友輝、何でそんな事を聞くの?」

「え~…だって、2人とも仲いいじゃん。朝はいつも一緒だし。姉ちゃん顔真っ赤だ~」

「からかわないの!!」


 美咲の叫び声が木霊する。怒ることでもないと思うが、慶介も確かに恥ずかしい。


「兄ちゃんは反応なし?つまらん~」


 どうやら友輝は、本気で2人をからかっただけのようだ。

 勘違いしないよう、そして、これ以上美咲を戸惑わせないように、慶介ははっきり言った。


「大丈夫。お前の姉ちゃんは取ったりしねぇから。俺達は、ただの幼なじみ。今も、これからもだ」

「「……」」


 姉弟揃って、固まってしまった。どうやら、友輝には難しすぎる話だったようだが、美咲は…


「……」


 慶介の方を向いて、驚いたような顔をしている。


「美咲?」

「っ。ごめん、荷物私が持つから」


 そう言って、慶介が持っていた荷物をひったくって、美咲は階段を上っていった。


「あ~…ごめん、兄ちゃん。俺も行くよ」


 何がなんだかわからない慶介を置いて、友輝も階段を上っていった。

 しばらく立ち尽くしていたが、気を取り直して、慶介も家に帰ることにした。




 2 影




「くちゅん!」

「うわっ、汚ねぇな!」


 朝。美咲は、玄関で慶介を待っていた。

 あの後、電話やメールのやり取りはせず、昨日の話はうやむやになってしまった。

 美咲があんな態度を取るのは、慶介にとっても予想外だったし、何かフォローを入れるべきか考えたのだが…

 今の美咲の態度が全然変わらないから、何も言わないことにした。


(ほじくり返してもしょうがないしな…)


 と言うわけで、いつも通り。慶介のチャリの後ろに美咲が乗っている。


「ごめんねぇ…昨日、ちょっと寒くなかった?」

「窓を閉め忘れたんじゃないか?」

「そんなわけ…くちゅん!」

「汚ねぇっての!」


 美咲は風邪でも引いたのだろうか。残念ながら、まだ火曜日。休みまで日がある。


「あんまり無理すんなよ?」

「大丈夫だって」


 そういえば、今日は友輝の誕生日だ。美咲は、1人で大丈夫なのだろうか…


「美咲、今日は友輝の誕生日プレゼントを買いに行くんだろ?迎えに行くか?」

「うーん…大丈夫。私、悩んだら長いでしょ?慶介退屈させたくないし、今日はいいよ」

「そっか?無理そうだったら連絡よこせよ?」

「ありがと」


 そこで、バス停前。美咲を降ろし、慶介は学校に向かった。




 だが、結局は慶介もデパートに向かうことになるのだった。

 家に帰ると、慶介の兄から慶介宛にお金が送られていたのだ。

 中には2000円と、”ふるさとの味を頼む“と言う短い手紙が同封されていた。

 意味がわからず、母親に聞いてみると…


「ああ、デパートに売ってるあれね。惣菜売り場のおばちゃんに聞いてみなさい。出てくるから」


 と言うわけで、デパートの食品売り場。慶介が、惣菜売り場のおばちゃんにその話をしたら…


「はい、これがふるさとの味。この地方の特産物詰め合わせセット。1500円だよ」


 まさかの直売。しかも、500円お釣りが返って来た。


「2日もデパートに通わされたんだ。これは俺のお駄賃だな」


 そういって、財布に入れてしまったが、その後に気がつく。


「そういえば、俺のふるさとの味…」


 昨日、600円弱かけて買ってきた、慶介プロデュースのふるさとの味。この詰め合わせはどうしようか…金額的にプラスマイナスほぼ0。


「…しょうがない、送ってやるか」


 結局、慶介のふるさとの味も送ることにした。




 そんな感じで、ふるさとの味にも決着がついたころ。慶介は、美咲を探して歩き始めた。

 友輝のプレゼントを買いに、多分このデパートに来ているだろう。

 デパートと言っても、あまり広いわけではない。

 確かに、色々な店が入っていて、賑わっているのだが、大都市にあるような大きなデパートに比べれば、規模は全然小さい。

 美咲が、靴を探しに来るであろう店も、デパート内には1件しかない。

 その靴屋に、慶介は足を運んでみた。

 元々、休みでもない日に靴屋が賑わっているとは思っていなかったが、思ったとおり、人はまばらにしか居なかった。

 その中で、学生服を着た女子が居ようものなら目立つと思うのだが…

 狭い店内、店に美咲らしき人物は居なかった。


(別の店行ったか…俺を止めた理由もそれかな?)


 そう結論付けて、慶介は靴屋を出た。

 だが、その直後に慶介は美咲を見かけることになる。

 学生服のまま、デパートを歩く美咲の後ろ姿。ロングの黒髪。15年以上一緒に居た幼なじみを見間違えるはずは無い。

 しかし、慶介が驚いたのは、同じ高校の制服を着た、別の男子と歩いていることだった。

 胸がバクバク言っている。何故なのか、慶介にはわからない。

 15年以上、ずっと一緒だった美咲に彼氏が出来たことがショックなのだろうか。

 いや、それは無い。昨日、美咲の前で言ったばかり。


 “俺達は、ただの幼なじみ。今も、これからもだ”


 その言葉に、嘘も偽りも無い。

 美咲に彼氏が出来ようと、慶介と美咲が幼なじみであることは変わらない。

 だから…慶介には関係ない。


「…関係ない」


 敢えて、その言葉を口に出した。

 慶介は、美咲たちに気づかれないよう、デパートを出て、逃げるように家に帰った。




 結局、家に帰ってきても、美咲が一緒に歩いていた男子のことが気になってしょうがなかった。

 部屋のベッドに転がり、悶々としていた。

 美咲は美咲。俺は俺。恋人が出来ようとも、今の関係が崩れるはずが無い。


「俺が…意識しすぎ…なんだよな」


 意識する必要はどこにも無い。美咲はずっと、慶介の幼なじみなのだから。

 友輝の誕生日プレゼント、結局何を買ったのだろう。

 きっと、あの男子も、友輝の誕生日プレゼントを買うのに付き合わされたのだろう。

 今までの慶介がそうだったように。

 その役目を、その男子に振ることができたのだから、逆に良かったのではないだろうか。

 これから、慶介の時間が増える。美咲に振り回されることが無くなる。


「……はぁ」


 なのに、何故なのだろうか。自然とため息が出てしまう。


「せめて俺に相談しろよな…いい男かどうか、俺が判断してやるってのに…」


 独り言を言ったら、余計に空しくなった。

 考えれば考えるほど、言い訳ばかり。

 何故そんなに、美咲のことが気になるのだろう。


『付き合ってくれてありがとうね~』


「……」


 色々と考えているとき、外から美咲の声が聞こえてきた。

 団地と言うのは、何故か知らないが、玄関で喋っていることが全部聞こえてきてしまう。

 今日の美咲の声も、例外なく聞こえてきた。それに、もう1人の声も…


『いやいや、俺でよければいつでも付き合うよ。日野さんって、団地に住んでたんだ』

『意外だった?』

『ちょっとね。でも、見ただけじゃどんな家に住んでるか、エスパーじゃないとわからないよ』

『エスパーって、古臭い~』

『そう?しっくり来るのが思いつかなくて…』


 2人の楽しそうな会話が、慶介の耳に入ってくる。

 …聞きたくない。正直な慶介の気持ちだった。

 耳をふさごうと思ったが、それすら馬鹿馬鹿しくなった。


(意識し過ぎだっての、俺)


 結局、何も考えず、2人の会話を聞いていた。

 その後は1分もせずに、2人の会話が終わり、男の声が聞こえなくなった。

 美咲が玄関のドアを開ける音が聞こえ、程なくして、慶介の家の前を通り、美咲が自分の家に入る音が聞こえた。


「……」


 今日、デパートで、2人を見かけなければ、悩むことも無かったのだろうか。

 ここで、2人の会話を聞かなければ、こんな気持ちにならなかったのだろうか。

 知らないほうが幸せなこともある。そうだったのだろうか…

 考えてもわからない。慶介は、そのままテレビをつけて、そのことを忘れることに決めた。




 次の日の朝、美咲からメールが届いた。


 “ごめん、先に行って”


 理由も書いていない、突然のメール。

 だが、今日の慶介は、驚くほど冷静だった。


「…そっか」


 余計な詮索は無用だろう。そう考えて、1人学校に向かうことにした。




 チャリ置き場からチャリを引っ張り出して、いつもの道を走る。

 後ろが妙に軽くて、話し相手がいない、寂しい朝。

 美咲が乗るはずのバス停前を通り過ぎ、そこからはいつも通り。

 ボーっとチャリを走らせ、何も考えずに学校へ向かう。

 チャリを降りて、学校に入り、クラスの仲良しと挨拶をする。

 授業中も、ボーっとしたまま。

 気がつけば学校も終わり、家に帰る時間。


「……」


 学校で友達と何を話しただろう。何の授業があったのだろう。ノートはちゃんと取っただろうか。机の中に、何か忘れ物をしてはいないだろうか。

 今日の慶介は、何も考えていなかった。いや、それは違う。


(何も…考えたくない…)


 今日の慶介の本当の気持ちだろう。何かを考えれば、間違いなく美咲に繋がる。

 美咲のことを考えれば、朝のメールのことを思い出してしまう。

 何故、先に行って欲しかったのだろう。

 何故、慶介と一緒に学校に行けないのだろう。


(ダメだ…)


 彼氏が居る美咲にとって、男と一緒に居ることはマイナスなのだろうか。


(ダメだ…!)


 やはり、慶介が邪魔だったのだろうか。


「ダメだ!!!」


 慶介は、思わず叫んでいた。


(俺は…美咲を悪者にした…!)


 美咲を悪者に。それは自分に自信が無い証拠だ。

 自分に魅力が無いから、美咲は別の男に惚れてしまった。

 自分に魅力が無いだけなのに、美咲を悪者にしてしまった自分が居る。

 慶介は、激しく混乱していた。自分はどうすればいいのか。

 この気持ちを、どこにぶつけて、どこに吐き出せばいいのだろう。

 気がついたら団地の前に居た。どうやら慶介は、チャリ置き場に向かうところで我に返った。

 玄関の前、誰かが降りてくる。


「あ…」

「おっす、兄ちゃん」


 それは友輝だった。買い物袋を提げて、これからおつかいに行くのだろうか。


「友輝…」


 手を上げて、力なく笑う。このままだと気まずいから、適当な話題を引っ張り出した。


「そういえば、誕生日プレゼントはもらったか?」

「もらったよ~今年は手編みのマフラーだって」


(なっ…!)


「姉ちゃんのマフラー付けてくれるのも、今年が最後でしょ?とか言ってさ。まぁ、1回ぐらいは使ってあげるけどね~」


(靴…じゃないのかよ…)


 美咲は嘘をついたのだろうか。怖かった…といえば嘘になる。だが、否定して欲しいという望みが、慶介を後押しした。


「靴…もらわなかったのか?」

「靴?もらってないよ?」


 無邪気な友輝の反応。どうして…慶介の頭は、更に混乱した。

 慶介に尋ねたあの質問は、一体なんだったのだろうか…美咲は何を考えて、あの質問をしたのだろうか。

 それ以上、何も思いつかない。頭が混乱して、何も考えれなくなった。

 もしかしたら兄ちゃんの分もあるかもよ~…と言う、友輝の声に反応できない。


「そっか…またな」

「あ、うん。買い物忘れてた~やばい~」


 友輝は駆け出して行った。慶介は、しばらく立ち尽くしていたが、何とか家に帰ることが出来た。

 何かが…慶介の中で、何かが変わった。それが何なのか、やはり慶介にはわからなかった…




 3 慶介の誕生日




 朝。美咲にメールを送った。


 “悪い、俺日直だから先に行くわ”


 嘘をついた。日直はもう少し先の日だ。美咲が、慶介の日直まで把握しているとは思えないから、嘘をついてしまった。

 美咲に会いたくない。本当は、ただそれだけ。

 だからって、このまま疎遠になりたいわけではない。

 今日だけ、今日1日だけは美咲を忘れていたい。

 昨日一昨日のことを、無かったことにするため、1日だけ時間が欲しかった。

 慶介の…わがままだ。

 全力で学校までチャリを走らせ、いつもの15分ぐらい前に学校に着いた。

 何気に携帯を確認すると…そこには、美咲からのメールが入っていた。


 “え~今日は一緒に行けたのに~ じゃあ、学校が終わったら、いつもの公園に着てね♪”


「……」


 慶介は携帯を閉じた。メールごと削除しようと思ったが、それも面倒なので止めた。


(俺…どうしたんだろう…)


 メールすら見たくないなんて…まるで、美咲を嫌いになってしまったような…


「……」


 いや、考えるのは止めよう。今日は美咲のことを忘れる日だ。

 友達と朝の挨拶を交わし、慶介は教室に向かった。




 また、何もない1日を過ごしてしまった。気がついたら団地の前。今日は友輝にすら会いたくない。

 慶介の願い通り、今日は誰にも会わずに家に帰って来ることができた。そのまま、着替えもせずにベッドに身を投げる。

 1日美咲に会わなくても、自分の気持ちに変化は無い。

 この気持ちの正体が何なのか、未だに自分でも答えが出ない。

 ベッドで寝転がっていた所為か、瞼が重たくなってきた。

 母親が帰ってきたら、いつもより豪華なごはんが食べられる…慶介の誕生日祝いは、毎年その程度だ。

 美咲との約束…どうせ美咲は暗くなる頃には諦めて帰るだろう。

 忘れてた…と言うことにしよう。きっと…許してくれる。

 寝れば…俺の気持ちも…変わると思うから…




 ………

 目が覚めた。気づいたら夜の7時を回っている。外も暗い。

 リビングから、いい香りが漂ってくる。母親が夕食を作ってくれているのだろう。

 その香りにつられて、慶介はリビングへ向かった。

 気分も少しはスッキリして、いつもより少しだけ豪華な夕食を食べた。

 風呂に入り、部屋に戻ってテレビをつけてのんびりとした時間を過ごす。

 気がつけば、夜の10時半を回っていた。


(メールでも見てみるか…)


 と、何気なく携帯を開いてみると…


「友輝?何で??」


 受信箱には友輝からのメールが10通以上入っていた。

 一瞬、美咲の顔が浮かんだ。やっと落ち着いてきたのに…

 最初のメールは5時ごろ。そこから30分おきぐらいに1通ずつ。最後のメールは、10分ぐらい前だ。

 1つ1つ内容を確認していく。中身はどれも同じようなものだった。


 “姉ちゃんが帰ってこない…父さんも母さんも心配してないけど、風邪の姉ちゃんが心配なんだ…探してきて!”


 最後のメールはこの通り。他のメールも、大体似たり寄ったりのメールだった。

 すべてのメールを読み終わる頃には11時を回っていた。


「…あのバカ」


 11時を少し過ぎたところで、友輝からまたメールが入る。やはり同じような内容のメールだった。

 慶介は、上着を羽織り、家を飛び出した。




 目的地は、朝に美咲と会う約束をした公園。慶介が約束を守らなかったことに気づかないならば、ここにいるだろう。

 そうでなければ、美咲は友達の家にでもいるのだろう。普通はそう考えるのが妥当だと思うが…

 美咲の友達…嫌な想像が頭をよぎる。


「チッ…折角落ち着いたのに…!」


 美咲と一緒に歩いていたあの男子のことを思い出してしまった。

 奴と一緒で、家に帰らないのは奴の家に泊まるから…家に連絡できないのは、既に…


「…ああ!!もう!!!」


 頭を振って、慶介は気持ちを落ち着ける。

 慶介は、美咲にどうしていて欲しいのだろう。

 この問いかけに、明確な答えを出さない限り、慶介はずっとこのままだ。

 何も変わらない。臆病で、美咲とこれ以上離れたくない、わがままな子供のままだ。

 慶介が何をしたいのか、美咲にどうして欲しいのか、それは自分で考えて、答えを見つけるしかない。

 ずっと、付かず離れずの幼なじみの関係を続けたいのだろうか。いや、それは違う。違うと思う。

 ただの幼なじみでいいならば、美咲を探しに出る必要は無い。

 “友輝が心配してる”その一言をメールで伝えるだけで、美咲は友輝に連絡を入れるだろう。

 慶介は、美咲と会いたくないわけではない。むしろ、逆だ。ずっと一緒にいたい。

 だから、美咲と一緒に居た男子に、嫉妬していたのだろう。自分の知らない間に、美咲と仲良くなって、楽しげに話をするあの男子に。




 公園に着いた慶介は、考えるのを止めてチャリを降りた。

 適当にチャリを止める。周りが暗いから、ここからは歩くことにした。

 少し広めの公園だから、公園を一望できるわけではないが、10分も歩けば、公園を1周できる。

 公園を少し歩いたら、ベンチに座る人影を見つけた。15年以上の付き合いだ。見間違えるはずも無い。


「美咲!」


 ベンチに座っていた美咲が、こちらを向いた。


「遅いぞ~…」


 笑顔で慶介を叱る美咲の顔は、あまり元気が無い。


「お前…何やってんだよ!」

「何って、慶介を待ってたの」

「ったく…帰るぞ。夜も遅いし、友輝が心配してる」

「あの子ったら…でも、まだ帰んない」


 いつもの美咲のわがまま。だが、ここに居て、何があるのだろうか。

 慶介の疑問をよそに、美咲はベンチの下から袋を取り出した。

 それを、慶介に差し出して、


「ハッピーバースデー、慶介。まだ、11時20分…間に合ったぁ」

「えっ…?」


 いきなりのプレゼントに動揺する慶介。確かに今日は慶介の誕生日だが…


「ホントはね、朝、渡そうと思ったんだ。だけど今日に限って慶介日直って言うし…」

「それは…」


 それは嘘だ、と言いかけたが、それは美咲の人差し指に止められてしまった。


「友達の彼氏を1日だけ借りて、男の子が喜びそうな靴も探したよ。慶介って格好より実用でしょ?だから、長持ちしそうな靴を選んだよ♪」


 慶介の口を止めていた美咲の指は…震えるほど冷たかった。


「後、マフラー。朝付けてくれたら嬉しいかも。友輝の分と一緒に作ったから、友輝とおそろだよ~」


 美咲は嬉しそうにマフラーを広げてみせる。

 今まで慶介が思い描いていた、彼氏持ちの美咲はそこにはいない。いや、そんな美咲は最初から居なかった。

 美咲は、慶介の知っている美咲1人。ずっと一緒だった、目の前にいる美咲1人だ。


「デパートではごめんね…友輝の誕生日プレゼント、って嘘ついちゃった。次の日さ、一緒に探してくれるって言ってくれたとき、すごく嬉しかったよ…だけど、黙っててビックリして欲しかったんだ」

「…ありがとう。嬉しい」

「ふふっ、ホント?あ~、でも今暗いからなぁ…靴とかよく見えないでしょ?ちょっと待って、出してみる…っ!?」


 立ち上がって、靴を取り出そうとした美咲の体がよろける。


「オイ!?大丈夫か?」


 幸い、慶介がすぐに反応出来たから、美咲が地面に倒れることは無かった。


「あっ…ごめんね…座りっぱでちょっと疲れたかも…」

「無理すんなって…お前、メッチャ冷たいぞ?本当に大丈夫か?」


 美咲の体は、異常なまでに冷たく感じた。学校指定の制服だから、足元はスカート。防寒着は、カーディガン1つ。この時期に、それはさすがに寒いだろう。


「だいじょうぶ…ちょっと休ませて…」

「ったく…上着貸してやるよ」

「ごめんね…」


 美咲をベンチに座らせて、慶介も隣に座った。


「遅くなってごめん…風邪だって?」


 友輝は、美咲が風邪だと教えてくれた。そういえば、一昨日も風邪気味だったような…


「もぅ…友輝喋りすぎ…一昨日からね、寒気が酷かったんだ。昨日は学校休んじゃった」

「あ~…俺、今日の約束忘れて寝てた…」

「酷い~私、寒い思いして待ってたんだよ?」


 いつも通り、他愛の無い話に花を咲かせる2人。


「でもいいよ…許してあげる。ねぇ…くっついていい?」

「くっつくって…お前な」

「慶介の体、暖かい~」


 この瞬間こそが、慶介と美咲の幸せ。少なくとも、慶介はそう信じていた。


(そっか…これが…俺の求める答えなんだ…)


 この幸せを、永遠のものにしたい。

 慶介がそう思ったとき、慶介の口から自然に言葉が出た。


「美咲」

「ん~?」

「好きだ」

「…っ!?」


 美咲が息を呑んだ。慶介も息を呑む。一瞬の間があったが、すぐに美咲が聞き返してくる。


「ホント?」

「うん。マジも大マジ」


 また沈黙。美咲が、更に体を寄せてきた。


「…私も。大好き」

「間、怖いから…フラれたらどうしようかと思った」

「私もビックリしたの!…でもね、ずっと待ってた。でも、いきなりは反則…」

「だって、今じゃないと言えない気がしたし…」

「意地悪」


 美咲の体が、少しずつ火照ってきている。帰るなら今がいいだろう。


「そろそろ帰るか」

「え~…折角だから、もうちょっとこのまま…」

「美咲の体、暖かくなって来たぞ?もういいだろ?」

「もうちょっと抱きしめて。2人きりなんて、滅多になれないんだから…」

「風邪を治したら、2人でたくさん遊びに行こうぜ。だから、今は風邪を治すのが先」

「意地悪。慶介なんて大嫌い!」

「さっき大好きって言ってくれただろ?」

「むぅ…しょうがない、今日は我慢してあげる」

「よし、行くか」


 2人は立ち上がった。美咲がちょっとフラフラしているが、慶介が支えれば何とかなるだろう。

 公園に入る前に居た、臆病な慶介はもう居なかった。




 エピローグ 2人の幸せ




「早く~」

「おー…今行く」

「元気なさすぎ!!」


 慶介が美咲に告白して1ヶ月。今日はクリスマスだ。

 あれから、デートしたり、手を繋いだり、キスしたり…恋人らしいことを少しはしてきたが、


「ったく…俺、チャリ通もう禁止なんだぞ?」

「大丈夫!公園にでも隠せばいいでしょ?」

「だから、美咲に合わせて家を出るから時間が無いんだって…」


 結局、ほとんど何も変わらない日常を過ごしていた。

 だが、今日はクリスマス。学校が終わったら、2人でデートだ。


「ホントはね」


 だから、今日どこに行くのかと言う話を、するつもりだったが、美咲が真面目な口調で話しかけてくるから、そんな気分ではなくなってしまった。


「あの日じゃなくて、今日告白しようと思ったんだ」

「っ!?何でだよ?」


 美咲の突然の告白に、慶介が戸惑ってしまった。


「だって、待っても待っても慶介が告白してくれそうに無かったんだもん。ずっと好きだったのに…」

「俺はそんなに告白しなさそうな男か?」

「うん」

「オイ…」


 少しだけショックだった。でも、こうして付き合えているんだし、何も言うことは無い。

 しかし、慶介が告白したときは、美咲が風邪だったおかげで、物足りなかった。

 だから、冗談半分のつもりで、慶介は言ってみた。


「だったら今、美咲が告白してみるか?」

「えっ…」


 すると美咲は、慶介にチャリを降りるように促して、美咲は慶介の前に立った。


(マジで!?朝っぱらから!?)


「ずっと好きでした。こんな私ですが、彼女にしてください」


 慶介の予感は、見事に的中した。

 慶介が告白したときだって本気のつもりだったが、美咲からは更に強い気持ちが伝わってきた。

 その気持ちに、慶介は正面から応えるつもりで言った。


「必ず、永遠に幸せにする。こんな俺でよければ、ついてきて下さい」

「ぶっ、カッコつけてカッコ悪い~」

「お前が言わせたんだろうが!!」


 美咲の思わぬツッコミに、周りを気にせず叫んでしまった。

 笑いながらも、美咲は頷いて、


「こちらこそ。よろしくお願いします」


 と頭を下げてくれた。


「ったく…行くぞ!遅刻する」

「ごめん、私もう遅刻確定かも…バス行っちゃった…」

「あ…しまった。どうする?」

「学校休んで今からデート!」


 甘い誘惑に一瞬だけ心が揺れたが、ここで負けたらこれから我慢が利かなくなる。


「ダメだ。遅刻してでも学校に行きなさい!」

「え~…じゃあ、慶介も一緒に遅刻しよ?」

「何故!?」

「少しでも一緒に居たいから…」


 …やはり、学校に行くまでの甘い時間は、慶介の判断力を鈍らせていたようだ。


「…しょうがない。バスが来るまで一緒に居てやるよ。早く乗れ」

「やった~慶介大好き♪」


 ただの幼なじみではなくなった2人だが、大きく変わったことはない。

 付き合う前も、付き合ってからも、2人にとってこの瞬間が、何物にも変え難い2人だけの幸せなのだから…

元々この話は、ミクシィの日記に載せてみたくて書き始めたものです。

ミクシィの日記は10000字以内という制限があって、そこに収まりきるように書いていたのですが、書き上げてみたら14000字まで文字数が増えてて…こりゃどうしようもない。

お蔵入りしそうになったので、本格的な小説サイトに載せることに決めました。


普段、話を書いたテキストはワードにて保存しているのですが、最終更新日が7年前でした。それにビックリ!

そりゃ歳も食うし、恋愛オンリーの作品なんて気恥ずかしくてもう書けないです…

これは7年前の作品、現在連載中の話は3年前の作品。そして現在進行形で書いている作品と、歳を重ねるごとに変わっていく自分の作風の流れを見ていると、自分自身変化しているんだなと実感できます。

成長しているかどうかはわかりませんがね^^;


この話を読んでくれた方が、少しでも楽しんでいただけたなら幸いです。

最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。

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