こんな夢を観た「スカイツリーにジェットコースターできる」
東京スカイツリー人気にあやかろうと、とある業者がユニークな試みを始める。
スカイツリーの周囲に、螺旋状のジェットコースターを作ってしまったのだ。
「我が社は、最高の技術を誇る遊具メーカーなのです。かつて、富士山麓にガリヴァーのテーマ・パークを作ったこともあるのですよ」
テレビ局の取材に、メーカーの代表はこう胸を張っていた。
コピーは、「634メートルからの急滑降! 死と隣り合わせの臨場感! その名も『ザ・ムサシ』!!」
ここ数日、テレビのCMと言えば、こればっかり。正直、ちょっとうんざりしてくる。
ところで、この会社はスカイツリーの事業主に、ちゃんと許可を取ったのだろうか? 勝手に作ったとしたら、後々面倒なことになるぞ、とわたしは危惧した。
そんなわたしの心配をよそに、どうやら連日、大入りのようだ。
倍率1000%超の乗車券を求めて、所在地の押上から、御成門まで列が続く。
御成門と言えば、東京タワーがほど近い。生き馬の目を抜くような商売人が、これを黙って見ているはずもない。
「スカイツリーと東京タワーを一直線に結ぶ委員会」なるものが発足し、さっそく東京都知事に企画書が送られる。
スカイツリーのてっぺんから東京タワーまで、ロープウェイで結んでしまおうというのである。
それならうちもと、池袋にあるサンシャイン60が加わることになった。
企画書が書き直され、再度東京都に提出される。
その名も「スカイツリー、東京タワー、サンシャイン60を結ぶ、スーパー・トライアングル委員会」。
張り巡らされたワイヤーはループになっているため、東京フリー切符を買えば、1日中、スカイツリー→東京タワー→サンシャイン60と回り続けることも可能だという。
施工が始まると、テレビ各局、こぞってその進み具合を報じた。
作業者の1人が、まず細いロープを担いで、スカイツリーから東京タワーへと走る。お茶をすすって一息つくと、今度はサンシャイン60へと向かうのである。
最後にスカイツリーまで戻ってくると、ロープは見事、三角形につながった。
「いやあ、まる1日走りっぱなしで、疲れましたよ」作業を終えて、インタビューに答えている。「途中、歩行者が足を引っ掛けて転んだり、道を間違えてぐるっと回った拍子に、絡ませちゃったこともありましたが、まあ、なんとかやれました」
ロープをそれぞれの最頂部でぴーんと張れば、一次施工が完了である。
このロープを足掛かりにして、もっと太いワイヤーに張り替えていけば完成だ。想像していたよりも、あっけない。
テレビのCMは、例のジェットコースターに加え、「スーパー・トライアングル」がしつこく流れる。
「後楽園を真ん中に、東京スカイツリーから東京タワー、そしてサンシャイン60へと、のんびり空中散歩! ご家族、ご友人をお誘い合わせの上、ぜひ遊びに来て下さいねっ!」
完成は再来月だという。