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愛福です。
「・・・それで?なんでうちはこんな時間に叩き起こされなきゃいけないわけ!?」
「あ~・・・それは、だなぁ・・・」
珍しくミケの表情が曇った。というか、元々猫だからそんなのわかんなかっただけだけど、今は人間だ。
家の外まで引っ張って来て、少し歩いた所の土手まで来た。
「はっきり言うと、お前の後ろについてるそれの正体がわかったんだよ…」
「取り憑いてんの!?やだ!!きもい!!」
「アー言っちゃいけねー事を…うわっ!」
途端、私の背後からおぞましいほどの霊気があふれ出してきた。
「キモイトハナンダ…・キモイ?キモ…キモイナンテ…」
「いやあああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!???????」
なにこれ!!やっぱあれ!!?ミケがいってた変な奴!!?ウラミー?でも違う!!こんな色じゃないもん!黒っ黒いよ!!真っ黒!!
あいつか!!あいつだな!!あいつに会ってからなんか憑けられた!?
「ノウマク・サンマンダ・ボダナン・バクゥ!!悪りょもごがっ」
「落ち着け!!恐らく鬼、妖怪の類だ!!その呪文は効かない!!」
「じゃあどうすんだよ!!」
「とりあえず結界を張る。動くなよ…合図したら全力で走れ!!」
辺りが急に暗くなったかと思うと、足元だけが怪しく光る。電灯の灯りも見えず。光っているのは足元の護符からの光と、ミケの目だけ。
ミケの術だ。
もう少し詳しく見たいけど、今はそんな暇はない。
「今だ…走れ!!」
全速力で走り出そうとして、その足が止まる。
ひや。
何で出来ているかも怪しい変なモノが玲子の首筋に纏わりつき、そのまま締めつける。
「いやっ!!離して!!」
「待ってろ玲子!!今術で…」
絶体絶命のその時…
あまりに場違いな声が響いた。
「はぁい」
「…??ダレ??」
後ろの真っ黒い影も思わず声に出してしまうようなあまりに、あまりにKYな奴
「ジョン!!」
「困るねーこの子に手ぇ出してもらったら。お前の相手は俺だろう?」
「かっこつけてないで…早く助けたらどうだ!!」
「はいはい、これだから猫って奴は気が急いていて困る。っよっと」
ボン!
ゲホッゲホ…
やっと解放されたと思ったら、ミケが結界の続きを張っているところだった。
「あ、ありがとうジョン…助かった…」
「だから言ったろう?あんまりノコシーに近づかない方が良いって。ま、これはノコシーって云うより妖怪とかだろうけど。」
「用が済んだなら、さっさと帰ってもらいたい。だいたい、邪魔だ。それとも、一緒に結界の中に閉じ込めてやろうか。」
露骨に厭がっているミケ。
「はいはい。今出ますよっと。」
何故こんなにもタイミング良く現れたのか?それを聞くとさらっと「みてたから~」といった。
結界を張り終わって来たミケが表情を曇らせて「それは俗にストーキングと言って犯罪だ。」とそっぽを向きながら言った。
・・・・・・・・・でも
今回はよかった。ジョンが来たから。でも、もし一人だったら?ミケが猫のままだったら?
結局あれの正体は?ミケはわかっているみたいだけど、改めて聞いたら「知らない方が良いと思う。」ってはぐらかされた。
もやもやした気分が全然すっきりしないまま、家に帰ることになった。
おそくなってすいません。