6 不穏
古代の機械です。
遅れてしまい大変申し訳ないです。
キーンコーンカーンコーン
ウチ、見留玲子は本日の終業の鐘が鳴るとともに学校を出た。今日は下校中に寄らなきゃいけないトコロがあるんだよね~。
「さて・・・と・・・」
ウチは通学路の途中にある野原に向かった。今日の用事はただ一つ。登校中に見つけたノコシーの成仏だ。チラッと見ただけなんだけどなーんか気にかかるんだよね。
「あ・・・いたいた!お~い!そこの子!」
ウチの視線の先には、うすい金色の髪を持った15歳くらいの少女。まあ、うすいのは幽霊なんだからだろうけど。
「何?アナタには私が見えるの~?」
少女は少し不思議そうな顔をして近寄ってきた。
「ウチは見留玲子。幽霊が見えるだけの女子高校生よ」
「ふぅん。で、私に何か用なの?」
「貴女、この世に心残りがあるでしょう?」
ウチは率直に聞いてみた。回りくどいのは嫌いだし。
「・・・。知って、どうするの?」
「その心残りを無くす手伝いをしてあげる。貴女もはやく未練なんてなくしたいでしょ?」
ウチはできるだけ優しい口調で答えた。敵対心なんか持たれちゃたまんないしね~。
「私の心残りは、お母さんに会いたい。私は事故で死んじゃって、お母さんにありがとうって言えずに死んだんだ。だから、それが心残り」
「そのお母さんは生きてるの?」
「分かんないけど、たぶん死んじゃってる。一回私の家に近づいてみたけど、結構荒れ果てててとてもじゃないけど人が住んでいるようには思えなかった」
お母さんが死んじゃってるとすると、再開は難しいかな。お母さんが幽霊になっていないとダメだし。
「じゃあとりあえず貴女の家に行きましょうか」
「分かった。あと、私は瑞影日向っていう名前。よろしく」
「よろしくね、日向ちゃん」
ウチたちは荒れ果てた瑞影家に向かった。そう離れてはいなかったが、近くには何もなく、ただひたすらに田畑が広がっていた。っていうか、ココってホントに東京?ってぐらいひどかった。
「あれだよ」
日向ちゃんが指さした先には、なかなかの大きさの館があった。まさか日向ちゃんってお嬢様だったりしたの?
「ひとまず入ってみようか」
「こっち」
ウチたちは半分崩れかかった入り口から中に入った。さっさと進んでいく日向ちゃんの後を追って進むウチを、無数のうすい瞳が見つめているのに、ウチは気がつかなかった。
「ここが食堂」
「広いねぇ」
「懐かしいな。何年ぶりに見たんだろう」
日向ちゃんが懐かしそうにあたりを見渡す。・・・ちょっと待って。
「ねぇ日向ちゃん。日向ちゃんは前に一回来たんじゃないの?」
「前は入れなかった。なんか、ものすごく変な感じがしたの。おんなじあの世の住人なのに、まったく空気が違ったの。だけど、今日はなんかフツーに入れる。不思議」
「前は入れなかった・・・ねぇ・・・」
「とりあえずどうする?」
辺りは夕暮れ。あまり暗くならないうちに終わらせないと。
「お母さんの部屋に行ってみる?」
「お母さんの部屋ね。ならこっち」
またウチはさっさと進む日向ちゃんの後を追った。うすい瞳に気付かずに。
「このドアを開ければ、お母さんの部屋」
ウチは何も言わず、ドアを開けた。部屋の中には物が散乱していたが、その中に一人、ぽつんと女性が立っていた。
「お母さん!」
その姿をみた瞬間、日向ちゃんがお母さんのところに走り寄って抱きついた。
「日向・・・?日向なの!?」
「うん!お母さん・・・!」
「良かった・・・会えて本当に・・・」
「お母さん、急に死んじゃってごめんね」
日向ちゃんがお母さんと話をしている。ウチは、もういなくてもいいのかな?
「私ね、お母さんに言いたいことがあったの」
「言いたいこと・・・?」
「今まで、私にいっぱい優しくしてくれて、ありがとう!」
「日向・・・!」
母子は再び抱き合った。そこに、光の筋が差し込んだ。ちょうど天井に空いた穴から月光が差し込んでいるのだ。その光は、天への道のようだった。
二人は次第に光の粒に包まれていく。成仏する寸前だ。もう、ウチはいなくていいな。
そう思って背を向けると、後ろから日向ちゃんの声が聞こえた。
「ありがとう!玲子おねぇちゃん!」
ウチは右手で軽く答え、帰路についた。
帰宅後、ウチは諸々のことを終え、すぐにベッドに入った。そしてすぐに眠りに落ちた。
寝る前にミケが何か言っていたがウチは知らない。だって、今日はウラミーには会っていないんだから、「ウラミーに会ったのか?」なんて聞かれるワケがない。
もう、寝る。
伏線だけ残して終わります。