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愛福です。
「うわああああ~!!!!!ねぼうしたあああああああ!!!」
昨日霊を払ったところまでは良かった。けど、夕飯食べてベットにすぐINした。
そこでウチは思いっきりミスを犯したんだ。
「まさか今日に限って目覚ましセットし忘れっ!!ありえない!!!」
そう、私はかなりの低血圧で、毎日目覚ましを5個セットしてから寝る。が、明日日直なのをド忘れして、速攻寝たから。もう間に合わない。
「ちょっとミケエエエエェェェ!!!!起きてるんだったらきちんと私も起こしてよおお!!!」
「いや、おこしたんだぞ!?」
「呼んだぐらいじゃ起きないから!!上で飛び跳ねてねって毎回言ってるじゃない!!」
「無茶を言うな!!」
5分で速攻支度して、家を飛び出す…寸前でお父さんに呼び止められた。
「ご飯は食って行きなさい。」
そうして無理矢理口の中に入れられたトーストを囓って、今度こそ私は家を飛び出した。
普通なら、ここでかっこいい男の子がぶつかってきて、新しい出会いがあるんだろうけど、私の場合、そんなロマンチックな事は無い。
だから、此処で出くわすのは大体が…
「…そこのお嬢さん。」
ほらきたあああああやっぱりだよ!!なんでだよ!!
「これ、無視をするでない。儂のこと、見えておるのじゃろ?」
大体急いでる朝に限ってでくわす”ノコシー”。
かっこいいかと言われれば大体おっさんとかばばあで、こっちが急いでるってのも考えないでローペースで喋るモンだからもう堪らない。
「あ~はいはい、用件は!?今急いでるから!!ついてきて隣で喋ってね!!」
ここで「帰るときにまた教えてね!!」など邪険に扱おうものなら、アッという間にウラミーの誕生だ。
それはなんかめんどくさい。強制除霊っていう手もあるけど、あれは結構精神力を使うし、学校行く前には出来れば使いたくない。
まあ、ノコシーのお願いを聞くのも結構めんどくさいんだけどね!!
「実は、遺してきたお婆さんに誕生日プレゼントを渡して欲しいのじゃ。」
電車の中で一人でぶつぶつ言ってるわけにもいかないので、携帯の画面に文字を出す。
「へえ~で、そのプレゼントって何?」
「ばあさんの誕生石のダイアモンドが入っておる、指輪じゃ。」
「え、じゃあ結構高かったんじゃないの?」
「ああ。普通に買ったら100万円はする代物なのじゃが、知り合いの伝手で、40万まで値下げしてもらった。」
単純に計算して60%オフ。破格じゃないか。
「婆さんにはいつもお世話になっておった。70の誕生日にやろうと思って、おったが、その直前で車にひかれてぽっくり、ほれ、この通り。」
「あ~なるほど。」
こういう心残りの場合、簡単だ。
「その指輪、今どこにあるの?」
「家の書斎の奥、隠し金庫の中じゃ。暗証番号は0723。」
「まだ見つかってない?」
「ああ。」
「じゃあ、それを伝えておくから。住所は?」
それらのことをケータイのメモ機能に入れて、電車を降りる。
「頼んだぞ-」
お爺さんは私の学業の邪魔をする気はないようだ。すっと消えてくれた。
ノコシーの中には授業中にも現れてまだかまだかと催促してくる奴もいる。はっきり言って、超ウザイ。
(おじいさん、きっといい人だったんだろうな~)
ほんわりと歩いていると、今日一緒の当番だった渚ちゃんが走って来た。
「遅いよ!」
「めんご~」
あわてて謝る。そうだ、あっちの世界ばっかに気を取られてたらいけない。
家に帰って、そのお婆さんにあてて手紙を書いた。
もちろん、指輪のことで。
お爺さんは満足そうな顔になって、ホトケーになって居なくなった。
成仏したってやつだ。
こうして私の一日は終わる。
今日こそはしっかり目覚ましをかけなくちゃ。
おやすみなさーい。