16 危険な力
冬華白輝です~
昼食を食べ終えたウチは自分の部屋に戻り、日向ちゃんの家で出会った老人の言ったセリフを思い返していた。
「えーと・・・伊吹に酒吞の童子あり。因幡は白き兎が渡り、月影に御車
うつる。山は鴉天狗が揚々と。妖なるものは幻想の郷里にて、夜の鳥に憑きて宵闇となる・・・かぁ」
これが道標となればいい、なんてあの老人は言っていたが、内容はサッパリだ。
それに、複雑な岐路を歩いているなんて言われたら、超気になるじゃないか。
なにか?ウチは自分でも知らないうちに危ない道に突き進んでるというわけか?
冗談ではない。ウチはちょっと特殊な環境であっても、ただおかしく楽しく暮らせればイイ。
「あーもぉおおお!!」
ばふっ!
持っていたクッションをドアめがけて投げつける。
「うをっ!?」
跳ね返ったクッションが、ちょうど本棚に寄りかかるようにして寝ていたミケにぶつかる。
「あ、ご、ごめん!ミケ!」
「なんなんだ、さっきから・・・まったく」
呆れたように見つめられて、ウチは言葉を詰まらせる。
「あー・・・えーとぉ・・・うぅーんとぉ・・・あうぅう」
「・・・何をうなっているんだい?玲子?」
そう言って、にゅっとウチの顔を覗きこんできた奴。
「っ!・・・じょ、ジョン!!突如現れんのはやめてよね!!びっくりするじゃない!!」
どうも、コイツの行動だけは読めない。ただの霊じゃないことくらいはウチにもわかっているが・・・。
「ああ、それはすまなかったね。・・・脅かすつもりはこれっぽっちもなかったんだが」
「・・・あー、いいわよ、別に。今更な気もするし・・・」
そう、コイツが突如現れんのはいつものことだ。
特にウチが危険な目に遭っているときに現れる気もするが、それはここ最近の出来事があまりにも現実離れしすぎているからだろうか。
というか、現実離れなんてウチの日常では“普通”だったはずなのに、ここ最近、危険度が増している気がする。
「おいオマエ」
「・・・なんだい、猫」
「・・・・・・今日は何の用だ?オマエが来るとろくな事がない」
バチバチと目には見えないが火花が散っている気がする。
やっぱりこの二人(一匹と一人と言ったほうがいいのか)は仲が悪い。というか、ミケが警戒しまくっている。
「ふむ・・・それでは問おう。君たちは聖の三具というものを知っているかな?」
「・・・聖の三具?」
ウチが首をかしげる脇で、ミケが息を呑んだ。
「・・・別名、不死の三具・・・聖杯、聖鏡、聖輪の三つを集めると願いが叶うという・・・いきなり出す話題としては随分と物騒なものだな」
「え、何々?なんなわけ?・・・え、物騒なの、それ」
「・・・使い方によっては、な」
質問をしたウチに答えたミケは、警戒を強めてジョンを睨み据える。
「私も玲子を危険な目に遭わせるのは本意ではないのだけれどね・・・ここ最近、玲子の力が強まってきているのは君も感じているだろう?」
「・・・・・・ああ、それはわかっている」
頷くミケに、ウチはギョッとする。あっさり肯定されるとは思わなかったからだ。
「え、え?ウチの力って何?」
「・・・玲子はまだわからなくてもいいんだよ。今、自覚したら・・・暴走しかねない」
暴走。ジョンの言葉に冷や汗をかく。これは冗談ではないとわかったからだ。
「・・・ど、して」
「怖がる必要はない。ゆっくり目覚めさせていけば問題無いのだから。・・・それよりも、玲子の力を嗅ぎつけた者が出てきた。しかも、生身の人間だ」
「なんだと!?」
ミケが瞬時に反応する。
「楠木海斗よりも更に危険な相手だが、退けることは可能だ。・・・その相手から取引を持ちかけられた」
「・・・なるほど、それがあの不死の三具と関係しているのか」
「そうだ。・・・今の玲子では無理だが、少し訓練すれば・・・見つけることが可能だ。というわけで・・・玲子、これから君にはその力を使いこなすための訓練を受けてもらうよ?」
「・・・え、ええっ・・・ええええええええ!?」
当人置いてけぼりで話が進み、ジョンにムチャぶりされて、ウチは戸惑いながら叫んだのだった。
他の方が作った伏線を読みきれず・・・
訂正したほうがよいと思われたら遠慮なくつっこんでください・・・