1 序章
りんかです。
「ウラミー、覚悟!!」
ウチは制服の胸ポケからお札を取り出した。
それを右手の人差指と中指で挟み、顔の前に持って来る。
「ノウマク・サンマンダ・ボダナン・バク! 成仏せよ!!」
「な、何なんだ、その呪文は……。」
ウラミーが、光り輝きだした。もうすぐ成仏する合図みたいなもの。でもさ、苦しんでる訳じゃないのに苦しそうな声を出すとかきもくない?
だけど、ウチは優しいからきもい奴にもこの言葉の意味を教えてあげるんだ~。ウチ、優しい~。
「え~、知らないの~? 釈迦如来の真言だよ~。この真言を後に唱えた後にして欲しい事を言うと、その願いは叶いま~す。」
ウチは思いっ切り馬鹿にした声で説明してあげた。
「ふ、ふざけるな、覚悟してろよ。その内、呪ってやるからな!!」
ウラミーが消えた。ここで質問なんだけど、何で何時も同じ事をウラミーは言ってから成仏するかな? こういうの、なんて言うんだっけ? うーん、「耳にいかが出来る」?
「何ふざけた事言ってんだよ。たこだよ、たこ。惜しいな。そこまで分かるんならちゃんと覚えろよ。」
足元から声がした。いらっとしたウチは思いっ切りあいつを踏む。
「にゃーーーー!!!!!! おい見留 玲子、お前、猫の尻尾を踏むとは如何いう事だ!!」
「うるさい! 猫は黙ってろ!! 猫に勉強の事を言われてたまるか!! ただの三毛猫のおすのくせに!!!!」
そう、こいつはただの三毛猫のおす。ただ、喋るのが玉に傷なんだよねー。しかも口が悪い。最悪ー。
「あのな、聞けよ、三毛猫のおすはレアなんだ。大体がめすなんだよ。おすにはあまり遺伝しないと言われてるんだ。レアなんだよ。なのに、お前は俺の尻尾を踏んだ。このレアなミケ様を!!」
まったく、話が長いわ。大体さ、何、その「ミケ」って名前。ださくね? 誰が付けたんだろ。
「誰が付けたと思ってんだ、お前は!? お前だろ!? お前とお前の家族以外はこんな名前付ける奴誰もおらんわ!!」
は? じゃあ、ウチのネーミングセンスが悪いとでも? いや、そんな事は無いね。ありえないね!! 第一、御母さんと御父さんが考えたこの「見留 玲子」って名前は気に入ってるんだよ。よく人には「ネーミングセンスが無さ過ぎる。」って言われるけども。
「はー、呆れた。そんな名前付けられて喜んでるとはな。何なんだよ、見留家のネーミングセンスの無さは筋金入りだな。でもさ、俺時々思うんだけど、そんな名前だから霊が見えるんじゃないか?」
「ウチも昔はよく思ってた。けど、違うよ。家の御父さんの名前は「見留 実」。現実をちゃんと見て欲しいからなんだって。でも、科学的に証明されてない霊見えるよ。」
ウチは笑いながら言った。ミケも笑い始める。
こうなるとウチ達は相当笑い続ける。だから笑い死にしない様に、人が居る所で大爆笑する様にしてる。
「さ、帰るか。」
ミケがまだ笑いながら言った。と言っても、ウチもまだ笑ってる。
帰り道、パンチパーマかけて買い物帰り(ネギ持ち)のおばさんに変な目で見られたけど気にしな~い。