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えっ?待って、初耳なんだけど!?



食事中の離席は行儀が悪いということで、兄が満足するまでちまきを食べさせた後、話がスムーズに出来るようにと兄が普段利用していると言う、サンルームへと移動した。


午後から雨予報が出ていたが、此処ならば気にする事なく長話が出来るだろう。

食べた直ぐで、脇腹が痛いとぼやく兄を丸太の椅子に座らせ、オレは口を開いた。


「さーて、1から説明してもらおうか」


「……今世は可愛いお兄ちゃんが、男言葉使うのめっちゃギャップがあるなぁ。うん、またそれが良い。筆が進みそう……」


「は? 筆?」


「あ。あー、ううん。こっちの話。気にしないで!」


ゴホン、と軽く咳払いする兄は余計な事を言ってしまったとちょっとバツの悪そうな表情を浮かべた後、姿勢を正す。


「ううん、一体、何処から話せば良いものか……。わたしが気付いたのも最近というか、お兄ちゃんが産まれてからだからねぇ。それまでは、普通の平々凡々なエルフの1人だったんだよ」


何処をどう取って、平々凡々というのだろうか。現在の兄を取り巻く環境をきちんと見てると、記憶を思い出す前から破天荒だったのは間違いないと思うのだが。

これを言ってしまえば、話が脱線しそうになるので、一先ず隅の方に置いておく事にした。


「そういや、今迄あやふやにしてたけど、オレらの両親は? 何処にいるんだ?」


「知らない」


「はっ?」


てっきり兄は把握していると思っていたのだが、そうではなかったようだ。

驚きの声を上げるオレに兄は朗らかに笑う。


「生きてはいるらしいんだけどね。こう、何ていうかわたしも記憶が曖昧で……、まあ、わかっているのはわたしもお兄ちゃんも、転生して此処に生きてるってこと」


サンルームの窓の外に見える、木々がサワサワと揺れる。何の喧騒もない穏やかに時間だけが、ゆったりと過ぎていた。


「生きてる、か……」


「そう、生きてるんだよ。お兄ちゃんには悪いけど、わたしはこうしてお兄ちゃんと2人でまったり暮らしてて幸せなんだ。前世では、ちょっと、色々としんどさがあったから」


「えっ?」


思いがけない兄の言葉に聞き間違いかと兄に視線を向けるが、その表情は揺らぎないもので、それが冗談で発せられたものではないのは明らかだった。


「お兄ちゃんは家を出てたから分からないだろうけど、両親の仲が結構ヤバかったんだよ。小牧わたしを間に入れて何とか保ってたって感じで。下手したら傷害事件発展しそうな程にはギスギスしてた」


「えっ、マジで!? あの父さんと母さんが!?」


「うん。まあ、前々から予兆あったんだけどね、お兄ちゃんの前では普通だったから。2人だけで話をさせると、棘が酷くて会話にならないぐらいまでは悪化してたかな。互いに、毛嫌いしてたっぽい」


兄の言葉に驚きを隠せない。かつての満と小牧の両親だった2人は、オレの目から見て仲が良い夫婦だった。

少し、亭主関白気質な父と厳しくも温かい料理上手な母。それなりに口喧嘩はしてたけど、翌日には何事もなかったようにしてて。凄いなぁと思った事もある。


自分が帰省した時も、普段と変わりなく当たり前のようにあった夫婦の姿。変わることはない、何時までも仲が良いとそう思っていただけに、衝撃が思いの外デカかった。




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