表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/54

さあ、お話をしましょうか





どうしよう、何も良い案が浮かばない。


何時までもキッチンにいる訳には行かず、悩み過ぎて痛む頭を軽く抑えながらオレは隣室へと足を踏み入れた。


兄であるギルノールは何も知らず、目の前に並べられたちまきを手に取り、美味しそうに食べている。何せ、久しぶりの食事だし、口にする全てが美味い物に見えるだろう。背後に幸せオーラみたいなのが見えるのは、たぶん緩みきった兄の表情の所為。決して、懐かしい故郷の味に感激しているものではない、と思いたい。


「ねえ、兄さん。話があるんだけど」


「ふぁふぁふぃ?」


「ちょ、ちゃんと飲み込んでから、話して! また喉に詰まらせちゃうでしょ」


粘着力のあるちまきはどうしても口に溜まりやすい。大量に口に入れた兄は言葉すら発せない程の膨らみが出来ていた。もぐもぐと何度か咀嚼を繰り返し、近くに置いていたコップの水と共に飲み込み終えると、再び口を開いた。


「話って何だい、リティシア」


「……兄さん、何で、それがちまきだって分かったの?」


オレの問いに兄は、ピクリと動きを強張らせた。でも、それは一瞬の事で瞬時にそれは打ち消される。


「何でって、前も作ってくれたじゃないか。だから、覚えて、」


「私、()()()()始めて作ったの。だから、知る訳ないのよね。昔、食べた覚えがない限り」


兄の反応を確認する間も与えず、ただ淡々と言葉を続けていく。


「第一、この世界にちまきなんて食べ物ないわ。似たようなものはあるでしょうけど、あの作り方で、鍋と匂いだけでちまきと言い当てるなんて、アレを食べ育った人間なくらい。ーーそうだろ、小牧こまき


口調を変え、兄のかつての名を呼んでやれば、兄の表情が分かりやすく変わった。先程までの笑顔が消え、何処か苛立ったようにも見える。やはり、記憶があるのか? 嫌いな兄の存在に、嫌悪感を示しているのだろうか。


今世も兄妹とは言え、満と小牧として話すのは本当に久しぶりな訳で。会話らしい会話を上手くやれる自信はなかった。

現に今も、ドキドキしまくっている。


いもうとは、一体どう切り返すのだろうか。


暫く厳しい表情のまま兄は動かない。


言葉を間違えたか…? もしや、勘違いだった??


思わず警戒する。が、その真剣な表情は直ぐに崩れ、今まで抑えていたのを発散するかのように、笑い出した。


「ぷっ、くくくっ……! はははっ、ああ、漸く、漸く気づいたのかぁ!! はー、長かったぁ! いつ問い質してくるのか、ずーっと待ち続けてたんだよねぇ」


「……は?」


いもうとの言葉を思わず脳内で反芻する。今、何て言った?


「だってさぁ、お兄ちゃん。赤ん坊の時にちょっと気付いてたでしょ? だからさ、わたしとしては直ぐに説明を求められると思って。いつでも答えられるよう、受け止められるよう待機してたのにさあ……」


いもうとはそう言って笑みを深めると、座ったままオレの頭を優しく撫で回す。その仕草は何処か、からかうようなものに見えた。


「12年もかかるとはねー。相っ変わらず、判断が遅いんだから」


「はっ、はぁぁぁぁぁ!?」


理解した。したら、声を上げずにはいられなかった。見た目はギルノールのままなのに、ちょっと口調が変わったら、あの日の、ちょっと小生意気なこまきの影が見える。


ああ、そうだ。コイツ、こんな奴だったわ。暫く話していなかったから忘れていたが、ちょっと男勝りで生意気で、でも憎めない愛らしさもあって。苛立ちはするけども、慕ってくれてるのが充分に分かるから、何だかんだで兄妹としては仲良くやっていた。


うん、やっていたが、前世アレと今では話が別だ!!


「ッ、おっかしいだろ! 色々と! 何で妹のお前が年上でオレが年下なんだよ!? あの胡散臭い神っつー奴からお前も殺られたのか!?」


「あ、お兄ちゃんも神様と交流あるんだ? あの人意味不明な事書いてくるから、気にしない方が良いと思う。あと、その口調止めた方が良いよ。せっかくの美少女なのに、台無しじゃん。……いや、待てよ。設定としては、アリかも?」


「ねえよ! つーか、お前が言うな! お前が! 大体、設定って何だ! まさか、今までのドジっ子はわざとやってたとか言うんじゃないだろうな!?」


2人の間に何とも言えない空気が流れる。いもうとオレを見て、小首を緩く傾げた。


「……え、えへ」


それが答えだった。


「何してくれてたんだよ! お前はっ!! やらかした事他にもあるんなら、全部吐けー!!」


オレの言葉と共に空気が震える。残念ながら話し合いは、まだまだ終わりそうにない。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ