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この男の扱いが難しいの、分かる気がする…







薬師(くすし)とは?

A医者や薬の調合・治療を行う人のこと。


薬膳(やくぜん)とは?

A漢方の考え方を基本に、季節や体質に合わせて食材を選び作る料理のこと。


脳内で瞬時に叩き出した検索結果に、オレはそうだよねえ、と同意を示すように頷き小さく息を吐いた。


上記2つは自然と共に生きるエルフにとって、どちらも身近な存在である。何度か立ち寄った事のあるエルフの里には長寿で物知りな薬師がいたし、食べさせてもらった薬膳はかなり美味しかった。


だからこそ、問いたくなる。

目の前の()()は薬師の作る食べ物か、と。


「ね、ユーリ。何かさ、すんごく煮えたぎっている鍋の色が、めちゃくちゃヤバく見えるんだけど。気の所為かな……?」


「はっ、残念だが現実だァ。アイツの作るモンは大体、色がおかしくてな。効能を実感する前に、拒否して逃げる奴が圧倒的に多いぞォ」


「マジかぁ」


夢でも見間違いでもなかった。玄関前に設置された湯気立つ鍋には、何を入れたのか分からない中身が見えている。薬膳を作ってるんだから、たぶん、身体に良いものや漢方っぽいものが入ってるんだろうな。うん、じゃないとただの劇物だよコレ。


鼻腔を擽る何とも言えない芳しい匂いには、少しホッとするものの、鍋の色が有り得ない紫紺なので、どう判断していいのか分からなくなってしまう。

視界を塞いで口にすればいける可能性もあるが、知識として、えげつない色だと認識してしまっているから記憶を消さない限り、コレは無理だろうなと察した。


ユーリは慣れているのか、不満を口にする事はない。ただ眉間に皺を寄せ尾をパシンパシンと叩いていた。あー、苦手な匂いではあるのね。


今、オレ達が何処にいるかというと。

あの野暮ったいよくわからない男性の住む家にいたりする。あの場で自己紹介や事情を説明する筈が、急いでるからと足早に走り去ってしまったので慌てて後を追い、この場に辿り着いたという訳だ。


ユーリ曰く、前回来た時と家が違うらしいので新たなに作り直したんだろうとの事。いや、家を新しくするってどういう事よ? 此処もまさかウィリアムの襲撃受けたとかじゃない、よね?


見た目は簡易なログハウスに見えるけど、あちこちに防御魔法がかけてあるから、魔法の知識もあることが窺える。もしかして能力者の可能性もあるのかな、と首を傾けた時だった。


「おまっとおさん。はー、漸く終える事ができたわぁ。ほんで? あの突風からの依頼は何なん?」


ガラガラと立て付けの悪い戸を開けて、家主である男が姿を現した。先程会った時より髪が荒れているのは指摘した方が良いのだろうか。いや、止めとこ。何か別の問題に巻き込まれそうな気がする。


「それより、先ずは自己紹介しろ。リティシアとお前は初対面。会話らしい会話も出来てねェ」


確かに。兄やユーリから変な人っていうイメージだけ与えられてて、何か乳臭いエルフっていう遠回しの世間知らずの未熟者って失礼なこと言われたぐらいだし。


男は緩く首を傾げると、小さく咳払いして汚れていた手を軽くズボンで拭い手を差し出した。


「そやなぁ……おいん名前は、フォラッド。此処で薬師やっとる。基本誰の依頼も受けんけど、時折気紛れに人助けしたり、害虫駆除しとるで。ま、突風からの紹介なら、そこそこの付き合いになるんやし、よろしゅうなぁ」


へらりと細い目を更に細めて笑う男ーーフォラッドは今のところ、服装以外に変な要素は見当たらない。思ったより普通に会話出来そうだな、と挨拶を返すように頭を下げた。


「リティシアです。よろしく、です」


差し出された手を握り返し、此方も笑みを溢す。

と、ここまでは良かった。良かったのだが。


ユーリが口を開いてから、空気がガラリと変わった。


「お前、また新しい名前を名乗りやがって。こないだまで、フェイだったろうがァ」


「あー? あの名なぁ、切り刻まれて消えちまったんよ。同じく家も勢いよく爆発してん。丁度ええから、一緒にポイッとね」


ジェスチャーも兼ねて、捨てる仕草を見せたフォラッドにユーリは深々と息を吐く。


「1週間もしない内に名をコロコロ変えるお前が長く使ってる名だったから、漸く落ち着いたのかと思ってたんだがなァ……」


「はははっ、名前は単なる()()やん? 名はなくとも自我をきちんと保っとけるのが理想やから。この生き方は変えへんよ。()()世界がひっくり返っても同じことや」


「相変わらず、理由の分からんこと言うなァ」


「意味はあるんやで。おいによる、おいの為の、おいの広がるこの世界におんがえ、あっ、お腹空いたやろ。こないだ作った薬味を使おて、美味いん料理をーー」


「まてまてまて、いらん。今は腹一杯……、早まるなァ!!」


楽しそうに笑うフォラッドに対し、ユーリは複雑な表情のまま声を上げている。


何処からどう突っ込むべきなのだろうか。

話通じるかと思ってたけど、やはり名前を頻繁に変えるのは事実だったようだ。何だ、番号って。思考回路が普通とちょっと違うのは、何となく理解出来た。


何より、また世界がひっくり返るってどういうこと?

転生してきたオレにはその言葉は妙に引っ掛かった。何でだろう……??







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