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うっわ、ほんとだ。面倒臭い人だ…!







やっほやっほ! 逃亡しようとしたけど出来ずに、あれよあれよと流されるまま島に向かう事になったオレです。

今から入れる良い保険ってある? いやいや、そもそもこの世界に保険という概念がないから無理だよねぇ。ヤバい人との平穏に終わる事を祈るしかない。防御力あげといて、自分で頑張るしかないぞぅ!


「百面相してるが、そんなに気負わなくても大丈夫だぞ。アイツ、基本的には無害だからなァ」


くつくつと喉を鳴らし、笑みを浮かべるユーリにオレは頰を膨らませた。


「いやだって、あれだけボロクソに言われてた人が無害な筈ないよね? 不安になるのは仕方ないじゃない」


「奴の領域テリトリーや指針に下手に触れなきゃ無害なんだよ。関わり次第で害になるかどうか分かるからなァ」


「関わり方かぁ」


「まァ、お前はアイツの遣いで来てるから、目を付けられるのは間違いと思うが」


「やだーー!!」


諦めろと言わんばかりに肩を叩くユーリにオレは何だか頭が痛くなってきたな、と眉をギュッと寄せ、軽く頭を抑えた。また百面相していると言われても、今はそれを止める事はない。


何せ、相手の前情報が濃すぎるのが悪いと思うんだよねぇ。何なの、名乗る名前がコロコロ変わるとか、傷害事件起こしたあるとか。犯罪者ではなさそうだけど、やることなす事、全部ヤベェ方向に走ってる。変人認定されるのも仕方ない、のか?


鼻を引くつかせながら先を歩くユーリの背を視界に入れ、顔を上げる。降り注ぐ太陽の光も強くなってきたな、と小さく息を吐き足を動かした。


ユーリは万が一何かあった時の為に、と一緒に来てもらった頼もしい護衛だったりする。評判がアレな人の下に行くのだからユーリの申し出はとても有難かった。自分1人だったら、たぶん途中で逃げてる。頼み事なんか最初からなかったよって、素知らぬ振りをするね!


そんなオレの思考を察したのかどうかは分からないけど、兄から羽交い締めにされたと思ったらウィリアムの風の能力で、大陸からこの南国の島へ飛ばされてからね。突風が吹いたと思ったら知らない土地にいつの間にかいましたって感じ。


飛ばされる直前の兄が何か含んだ笑みだったから、あれは絶対面白がってる。新たなネタが出来るかもってワクワクしてる顔だった。前世むかしと同じで相変わらず、良い性格してるんだからなぁもう!!


目的の人物の場所まではユーリが連れてってくれるらしい。独特の匂いを纏う人らしいので獣人であるユーリにかかれば、何処にいても分かるのだという。


サクサクと踏み締める草の音を耳にしながら、周囲を見渡してみる。ヤバい人と言われるだけあって、街中より人が寄り付かない場所を好んでいるのだろうか。環境は凄くいい。自然溢れる、豊かな森だ。


「……そういえば、訪ねるその人は何をしてる人なの?」


「あ? あー、薬売りだよ。漢方やら薬膳、そういうのに精通してるんだが……まァ、性格に難あるから客は数えるほどしかいない。というか、真面目に商売をする気がないんだ」


「何で?」


「さぁなァ。理由を聞いても二転三転するから、心配するのが馬鹿らしくなってくる」


ピシリと尾を揺らしユーリは目を細める。そして、その場で足を止めた。


「ユーリ?」


「来るぞォ」


「来る?」


何が、と口を開こうとして近くの茂みから黒い塊が飛び出してきた。魔獣か!?と警戒するがユーリが警戒体制ではなかった事を思い出し、防御壁を作るのではなく横に避ける事にする。一歩二歩と、テンポ良く足を下げた後、飛び出してきた塊ーー野暮ったい風貌の青年は地に降り立った。


癖毛のある髪は、くるくると葉を沢山巻き付けており艶がない。白髪がチラホラ見える事から、そう若くはないのだろう。目に掛けていた眼鏡に酷いヒビ入っているのは指摘した方が良いのか否か。


そう考えていたら、青年は眼鏡を手に取り事も無げにレンズだけをスポーンと取り外した。フレームだけになった眼鏡を掛け直し、何処か満足げに笑みを浮かべている。


あっ、何かもう変な人っていう雰囲気してるぞ? 度数のない眼鏡って、ほぼ機能してないのに、大丈夫か……?


敢えて口に出す事なく、それを見つめていたら漸く此方に気付いたのか青年は口を開いた。


「あん? 何や、人がおったんか。珍しゅう。こんな辺鄙な森に何か用……って、ワンコやんか! 久しいなぁ。あっ、待って待って来た理由、コッチで当てさせて! んんー、顔色悪そうやから、さては身体でも壊したん?」


「ワンコ言うな。俺ァ、ただの護衛だ。お前に会わせたい奴がいてなァ」


「ハァ? 違うんかい。えー、ヤダわぁ。会いたないし。誰なん、また変な会話の続かん奴が来たん、」


青年の言葉が止まる。ユーリの陰に隠れていたオレと目が合い、糸目だったその瞳が僅かに開いた。


「……うっわ、乳臭いエルフかいな。発育も悪そうやね」


思わず、ピシリと固まったオレは悪くない。

あっ、これは無理だ。ごめん、やっぱり今直ぐ帰っていいかな……??

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