えっ?我が家に何してくれたの…?
急いで家に帰ってみたらどうなっていたか。
壁が崩れ、屋根は落ち半壊状態となっていました。
うっそだろ。どうすればこんな状態の家に出来るんだよ。一体全体、何があったんだ。
ちらりとユーリに目を向けてみれば物凄い勢いで頭を下げられた。土下座に近い、本気の謝罪だった。謝罪されたこっちが慌てるくらいの熱量で。えっ、ユーリはある意味とばっちりだよね?
そんな平伏に近い態度を示すユーリに対し、元凶であるウィリアムは平然と其処に座っている。瓦礫の上にちょこんと腰を下ろし、あっごめーん!壊しちゃったぁ!ぐらいの軽さがある態度だ。
何かこう、イラッとくるよね。ほら見てみなよ。兄も怒りと呆れを通り越して、真顔だよ。
よーし、もうウィリアムは出禁にしよう。いや、この地域全体的にしよう。そこまで考えて、口を開こうとしたら兄からストップがかかった。
ん? あれ、この兄の表情……、これはもしかして……
「良い機会だ。この際、ウィルに新築の家を一から作って貰おうよ。で、僕らは一切手伝わない。うん、良い案じゃないかな」
あっ、めちゃくちゃ怒ってる。これは下手に触れればキレ散らかす3秒前の綺麗な笑顔だ。反論するより、静かに落ち着くのを待った方が良いやつ。
ユーリは顔を覆って項垂れてる。兄のこの表情見て最悪だと察したんだろうね。普段穏やかな人程怒らせたら怖いからねぇ。まあ、兄は前世から口が達者だったから。勝とうと思っちゃダメだよ。素直に非を認めるべし。
そう。誠心誠意謝罪して、直ぐ様何とかします!ぐらい言えば良かったものを、ウィリアムはそうしなかった。普通に抗議の声をあげた。
「えっ、嫌だよ。何で俺がそんなことをしなきゃなんないの。仕事もあるから無理無理ーー」
「そんなこと?」
「あっ、いや……」
笑顔の圧がえげつない。思わず寒気が出る程の低い兄の声に、ユーリは毛を逆立てる。私も選択ミスったなあ、と小さく息を吐いた。残念だ、もうウィリアムは逃げられない。背後から忍び寄る大量のスライム達がそれを物語っている。
「ユーリ」
私がちょいちょいと手招きすると、怪訝そうにしながらも近付いてきてくれた。
「どうした?」
「うん。巻き添え食らう前に逃げようと思って」
「あん?」
逃げるのか?と疑問符を浮かべているユーリに、バチバチの魔力が流れ始めている兄を指す。
「どうせ魔力のぶつかり合いの果てに、スライム塗れになるからね。巻き込まれない為にも避難してた方が良いよ」
「……だが、俺もある意味加害者だろォ? アイツを止められなかった俺にも責任はある」
見た目のやんちゃな雰囲気とは違い、再び頭を下げそうな程に申し訳無さが勝っているユーリの様子に真面目だなあと、思わず息を吐く。ウィリアムもこれくらいちゃんと罪悪感を抱いてくれていたら、ああはならなかったのに。
ユーリの背を叩いて、外へ行くよう促す。もふもふの毛が少し粗くなっているのは、家が爆発した反動でかな。うーん、これも絶許だな。ウィリアムの罪が増えてくね!
「ユーリはちゃーんと謝ってくれたでしょ。でもウィルさんはどうよ? この破壊であの態度。さも、私達が早く帰ってこなかったのが悪いと言わんばかりだし。うん、兄さんにこてんぱんに……いや、またはむはむの刑に処されれば良いと思う」
ウィリアムはスライム達に弱い。一度はむはむの刑に処されてから、避けるのが出来ないというか下手くそになってしまったんだとか。
まあ、風でスライム達を切り刻むわけにはいかないから、命の危険も少ないし甘んじて受けてる可能性もあるけれど。あれ、慣れてきてるのなら、はむはむの刑より別のが良いか……?
うーんと悩む私を横でユーリは何も言わない。ただ、眉間に皺を寄せて何とも言えない表情を浮かべている。ユーリも今迄めちゃくちゃ被害受けてそうだもんね。ウィリアムを庇わない辺りが、そうなんだろうなぁって。
ピリリと肌刺す魔力に、私はヤバいとユーリの背を押しながら動き出す。先程までは足を止めていたユーリも今度は歩き出した。
背後からは何やら叫び声や呼び止める声が聞こえるけど、無視だ無視。全面的にウィリアムが悪いんだから、大人しくやられてくださーい。




