管理者という存在があるんだって
丘の上の白い塔
この世界の、始まりの地とも言える場所。
何処にあるかは誰も知らない。ただ、その場所がある事だけを知っている。世界の記憶として、世界に住む生命の一つとして。
その地を知るのは唯一人、この世界を作った存在だけだろう。
「ふぅん? じゃあ、ウィルさんも知らない場所なんだ?」
「ああ……、その地があるのは知ってるけど誰も辿り着けない場所みたい。リティだって、名に聞き覚えはあるけど何処にあるかは分からないだろ」
「うん」
兄に促されて考えてみれば、確かに名前だけ分かる。場所は何処か、と思考して見るが何も出てこない。ただ、何処かにあるんでしょっていう結果に落ち着いてしまう。うーん、不思議。
「それで、その辿り着けない場所に管理者はいるんだ?」
そう私が尋ねれば、兄は苦虫を噛んだような何とも言えない表情を見せる。
「……まあ、そうだね。管理者が全て管理してるとは言われてる。この世界にあるものも全て、管理者によって選ばれてるとか何とか。僕もそう多くは知らないよ。最低限の知識しかない」
「いや、凄い知識じゃないかなぁ。これは」
世界の成り立ちとまではいかないが、この緩やかな世界がどうやって存在しているのか。それを知っているのと知らないのとでは話が違ってくる。
単なる争いばかりの文明が進まない世界、とか思ってたけど、管理者が存在するのならば、何かしらの意図があってこのような世界観になっている可能性もある。うん? あるよね? 単に放置してて戦ばっかりだったっていうオチではないよね??
ふわりと夜風が吹き、頰を撫でるように通り過ぎていく。温暖な地域だから冷えることはない。只々心地良い風に目を閉じた。
にしても、管理者かぁ。故郷の味を食べたいというなら日本か、アジア系出身の人かな。やたらと香辛料手に入りやすかったのもたぶん、その人のお陰なんだろうね。うん。
植物もそうだ。竹があちこちあるのにはびっくりした。二度見したよね。ファンタジー世界に生えるんかい、お前ってツッコミいれたいくらいには。
資料によれば、南東の島国が自生地らしい。あれ、ユーリの出身地もその辺だったような気が……。
まあ、それは今は置いといて。管理者がいると聞いて思った事がある。そのような管理者がいるのなら、私達が此処にいる理由も知っているのではないだろうか。
神様が手違いで落としたこの世界だと思ってたけど、本当はそんな簡単な事ではなくて。もっと違う意味があってーー
『ーー駄目だよ、リティシア』
暗闇の中から、顔を覆うように何かが伸びてくる。
『其れは、まだ触れちゃ駄目なんだ。彼女が望んでいないから。知らないまま、ただのエルフでいて。ただ、日々を幸せに生きて』
それが選ばれた君への、世界からの贈り物だよーー
パチンと弾かれたように目が開く。ぱちぱちと目を瞬かせるが、何を考えていたのか思い出せない。
あっれぇ、私何を悩んでたんだっけ……?
首を傾げるも、何も思い出せない。
思い出せないなら、そんなに重要な事でもなかったんだろうし気にする必要もないか……?
「リティ? どうした?」
兄の声に視線を横に向ける。体力もだいぶ回復したのか、立ち上がり不思議そうに此方を見ている。
「……ううん、何にも。そろそろ帰る?」
「そうだなぁ、後片付けも終わったし。のんびりしたいとこだけどな。早く帰らないと、ウィルが暴れて家を壊しかねない」
「えぇ、そんな事までする?」
「屋根突き破ってきたやつだよ。否定出来ると思う?」
「あー……、」
一瞬の沈黙。その後に響いた轟音に、二人して真顔になった。視線を上げれば、土煙が舞い上がるのは我が家がある方向だ。酷く嫌な予感がした。
「木っ端微塵になってないと良いなあ……」
「不吉な事言わないで!? ダッシュ! ダッシュで帰るよ!!」
遠い目をする兄を引っ掴み、私はその場から走り出した。家にはウィリアムだけじゃない、ユーリがいたから、最悪な事にはなってないと思ってる。いやでも、あの爆発音だもんなあ……。希望は持たない方が良いのかも。
せっかく片付けして、過ごしやすくしたのにー! 全壊してたら、新しい家を用意してもらおう。




