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スライムが癒し枠なのは間違いない








いつの間にか太陽が西に傾き空が夕暮れに染まる頃、兄は帰ってきた。何かすっごく草臥れた姿で。

何時ぞやのユーリのように、草木が髪に絡まったり服に種子が付きまくってるんだが?


もしかしなくても、原因は()()か。


視線をちらりと向ければ小突きタイムは終わったようで、ウィリアムはユーリに寄り掛かりその毛並を堪能している。兄を気に掛ける様子は全くない。


「酷いよ、リィタ! 僕を置いていくなんて!!」


ぼさぼさの髪をそのままに、兄はそう声を上げた。

オレの腕の中にいたリィタはぷにゅん、と身体を震わせる。これは怯えの震えではなく、抗議の震えだ。


『エー? ダッテェ、ギルノールハ、ヒゴロカラアルクノオソイジャン。リィタハ、ハヤクカエリタカッタノ! ウィリアムノカゼナラ、イッシュンダッタモン』


「色々観察だったり、確認して回るとこもあるんだから仕方ない……というか、元凶のウィルに着いていくのが、信じられないんだけど!? ウィルが勝手に風の能力で僕らを移動させ、大木の上に落としたのに! 何のフォローもなく立ち去るんだもんなあ……」

 

降りるのにほんっと苦労した……と、ぼやく兄に憐れみの目を向ける。


やっぱりかあ。兄を風で攫っていったから、帰りもそうなるだろうと思っていたら、思ったよりもかなり豪快だった。この辺で大木っていったら40キロ先にある木の事かな。確か、精霊宿ってるとか言われてなかったっけ。枝とか折ったりしてたらヤバいよ。後で確認しとこ。


肩落とす兄を横目にウィリアムに視線を戻せば、ぱちりと目が合う。意味深に笑みを深くするウィリアムに、あ、これ確信犯だと察した。

手元が狂って落としたとかじゃない。ワザと、兄を落としリィタを懐柔して帰ってきたという事か。


何でそんな事したんだ、ウィリアムは。


そんなオレの心を読んだのか、ウィリアムは口を開いた。


「だってさぁ、風を読んでみたらリティシアとユーリが一緒にいるんだよ。びっくりしたよね。長く一緒に居させたくないし、何かが起きたらヤバいって事で、慌てて帰ってきたわけ」


「何かがって?」


「そりゃあ、男女が一緒にいるんだから、場合によっては押し倒むぐぅ」


「お前の思考と俺を一緒にするな」


ひときわ大きい掌がウィリアムの顔を覆う。ユーリは一息吐いて、ウィリアムを軽く睨みつけた。


「俺とリティシアは20も歳は離れてんだ。野暮な事言ってんじゃねェ」


あと、まだそんな世間を知らない純粋な娘に、汚れた会話を聞かせんな。胸に留めとけェとウィリアムの頭上を叩くユーリに、オレは複雑な心情を抱いた。


うーん、ごめんなさい、2人共。オレはそんなに純粋なエルフじゃないよ。前世の知識で、余計な事を色々考えながら日々動いてるヤツなんだ。

下世話な知識で言えば、兄の方が圧倒的に強いだろうが、あれは面白がる節があるからなぁ……。


大体、普通のエルフがよくわからないんだよね。前世の知識がメインにあったから、どちらかというと常識のあれこれは地球寄りだ。だから、世界の事に驚く事が多い。


一息吐いて、ひんやりするリィタに顔を埋める。オレが吐き出す息にくすぐったい〜と身を捩るもオレはそれを止めなかった。だってこれ、なかなかに良いストレス解消法なんだよ。スライムなのに、何か良い匂いするしねぇ。


それを何度か繰り返していたら、つんつん刺さる視線を感じた。目線をちらりと横に向けてみれば、兄が何やらキラキラと目を輝かせていた。何だその、良いネタ見つけた!もっと詳しい話聞かせて、設定に活かし良いものを作るから!みたいな顔は。


却下だ却下。大却下!! 先ずは軽く水浴びして身形を整えてきてほしいな。今のままじゃ身包み剥がされかけた汚れた哀れなエルフに見えるよ。


ぷにゅるると揺れるリィタから顔を離し、オレは兄に向けてシャワーがある離れの方へピッと指を差した。





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