うーん、分からない。そういうものなのかな…?
「俺には冷たいのに! 何でユーリにはものの数時間で懐いてんだよ!」
「人徳の差じゃないですかね」
「そう、それ! 何で未だに敬語!? 相棒だろ!? 何れ人生のパートナーにもなる関係だろぅ!?」
「何というか……、何か嫌で。あと人生の相棒は以前断った筈なんですけど」
「何で!!」
「胸に手を当てて考えてみてくださいよ」
私の脳裏には、出会ってから今迄のウィリアムにやられた言動や状況が蘇る。ウィリアムのお陰で助かった事があるのは事実だが、その後の後片付けが大変な事が多かったんだけども。
それに第一印象がアレだったからねぇ……。
地団駄踏みながら不満を口にするウィリアムに、私は小さく息を吐いた。こうなったウィリアムはしつこいからなぁ。前は私の手料理で落ち着かせたけど、生憎さっきまであった手料理はすっからかんである。あっ、これ、ユーリが食べ尽くしたのを知ったら、荒れるの間違いないよね。
お口にチャックしとこ。私はなーんにもしーらない。
呆れたような視線をウィリアムに向けていたユーリは、埒が明かないなァと重い腰を上げた。
「ウィリアム、その辺にしとけェ。グチグチ言い続けると、リティシアからの信用を更に失うぞ。もっと嫌われてなら止めはしねェが」
「ぐっ、余裕のある感じが更に腹立つな……!!」
ユーリからの正論パンチを正面から受け、ウィリアムは苛立ちを抑えたのか、項垂れ胸元の服をガッシリ掴んでいる。嫌われてねぇもん、相棒だもん……という呟きが聞こえるが、あれは落ち着いたと言えるのだろうか。
思わず手を伸ばしそうになるが、ユーリにそれを止められた。
「止めとけ。優しくしたら、また調子に乗るぞォ」
「調子に?」
私の疑問にユーリは頷きを返すと、ユーリは制していたその手を私の頭上に乗せる。
「相棒を手に入れてから暫くは、浮かれ放題だったからなァ。やっと欲しい子捕まえたっつってな」
「へっ?」
どういう事、と聞くよりも早くユーリは意味深な笑みを浮かべウィリアムの下に向かい、項垂れたままのウィリアムを何度か小突いていた。
私はゆるーく首を傾けていく。
浮かれていた、何で? あっ、レアな魔法持ちが相棒になったから? 兄さんが言ってたもんね、催促が酷かったって。でも、浮かれる必要なくない?
軽く頰をかいて、腕を組み思考に浸る。
あれ、もしかして、人生の相棒とか言ってたやつが関係してる? 恋愛初心者、童貞のまま前世で命を終えた私。そういう話題にはほんっと困るんだよなぁぁぁぁ。
今世の私はまだ10代前半。長命種なエルフ。今はのんびり、ただ生活してたい。
『リティシアハ、ウィリアムニダイジニサレテルンダヨォ〜! ダカラカゼノチカラ、タックサンツケテル』
「まじか。私としては困惑以外の何物でもないんだけど」
『アクイアルモノガ、チカヅイテキタラ、デンリュウオミマイデキルヤツダッテ、マエイッテタ』
「まさかのえげつないもの付けられてた! えっ、それ、こっちも威力にびっくりするやつじゃない? って、」
続いていた会話に動きを止める。あれ、私は誰と会話してるんだ? ウィリアムは凹んだままだし、ユーリはそんなウィリアムを嗜めに行ったし。ちらりと横を見てみれば、ぷよんぷよんと跳ねるスライムの姿ーーリィタがいた。
「リィタ! えっ、いつ帰ってきたの!?」
『ンフフ〜! ハヤクカエリタクテネ。ウィリアムニ、クッツイテキタノ! ダカラネ、ギルノールハオイテキタ!』
「わあ」
自分を生み出した飼い主を置き去りにしてきたかー。最近、やりたい放題なんだよなあ。誰に似たんだか。ちらりと横目に、ユーリとウィリアムを見る。
ぽよん、と跳ねたリィタを捕まえ胸元に抱え込むと、私はその感触を確かめるように何度も撫でた。




