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いつか、行きたい場所ができたよ










「えっ、ユーリって独身なの!? てっきり既婚者だと思ってた……」


「まあ、獣人では珍しくはあるなァ。良い雰囲気のパートナーもいたんだが、色々あってな……。別れちまった」


何杯目になるか分からないおかわりを平らげ、スプーンを置いたユーリは息を吐いた。何処か遠い目をしているのは、当時を思い出しているからだろうか。ユーリはゆらゆらと揺らしていた尾をピシリと椅子に叩きつけて、再び口を開いた。


「それによ、俺ァ、()()ウィリアムの下で働いてんだ。所帯持つ余裕あると思うか?」


出会ってから今まで見てきたウィリアムの言動を振り返るように、オレは首を傾けてみる。 


風の能力者ゆえか、ウィリアムはやたらと神出鬼没だ。気が付けば近くにいるし、此方の状況をいつの間にか把握してて手を差し伸べてくれる。ただ、相手の事など、お構い無しに頼み事を持ってくるのは頂けないかな。断るに断れない状況で頼んでくるのが通常運転な彼だから、ほんと質が悪いというか何というか。


まだ出会って間もないオレで、こう思うのだから長年付き合いのあるユーリはすっごく苦労してきたんだろうな……。いや、兄よりも実働部隊っぽいから、うん、たぶん、急な予定変更とか無茶振りやってそうなんだよな。ウィリアムなら。


思わずユーリに憐れみの目を向けてしまったオレは悪くないよね。ユーリも意図を汲んでくれたようで、からからと笑っていた。


「ははっ、分かってくれたようで何よりだ。今の俺は仕事一筋みたいなモンよ。親に孫見せるっつーのは兄妹達が叶えてくれたしなァ」


おお? ユーリも兄妹いるのね。


「兄妹さん、いるんだ。何人兄妹なの?」


「ひいふうみい……、6人兄妹だな。俺ァ、2番目。兄が上に1人、んで弟が2人、妹が2人いる」


おお、兄妹多い! 獣人は兄弟多いのが普通らしいから、これが一般的なんだろうな……


「兄妹多いなら、大家族だね」


「祖父母や叔父叔母も、同じ集落に住んでるからなァ。この、もちねだっけか? これを持ち帰ったなら、一瞬でなくなるぞ。持ち帰った本人が口にする事はない」


田舎じゃ美味いモンは争奪戦だからなァ、とお茶に手を伸ばし、ユーリはそれを一気に流し込んだ。


うわぁ。この量が一瞬でかぁ……。流石獣人って言っていいのかな。ワイルドかつ賑やかな種族。うん、何かかっこいい。全体数が多いから世界各地にいるんだけども、北大陸や東大陸にいる獣人が大半だとか。ユーリも東大陸の島出身らしいし? やっぱり引きこもってたら出会えないよね。獣人とは。


「獣人達がいる集落か。いつか行ってみたいな」


「ははっ、止めとけ止めとけ。もみくちゃにされんのがオチだぞ。リティシアは小柄過ぎるしなァ。女共に玩具おもちゃにされそうだ」


ええ? 獣人にも小柄な種いるのに? 

そう疑問を口にすれば、獣人では着にくい服を着こなせる人間や能力者が、好ましいと思う獣人女子が結構いるそうで。ユーリの妹さんも、フリルのついた可愛い服を作っては、似合う人にプレゼントするのが趣味だそう。獣人の集落にも人間が住んでるから、その人達に贈るのが一番多いんだとか。


獣人間でなら、兎族に贈ってたのを見たなァ、とぼやくユーリに妹さん、技術力たっかいすっげぇ!!と内心拍手したよね。だって、あれじゃん。前世むかしのコスプレイヤーさん達の凄さに感嘆してたのと同じ感覚。


……ちょっと待って。その服作る材料とか、妹さん何処で調達してるの? ん? 良いスポンサーがいる? 服飾関連に詳しい専門家?


一瞬脳裏に今の兄ではなく、高らかに笑う小牧(いもうと)の姿が過る。うん、まさかな。そんなことないよな。


後に、この勘は正しかった事を知るのだが、今はただ嫌なことを考えてしまったと記憶を消すことに専念するオレなのだった。







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