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美味いものは、食べるのも早い






ふわりと周囲に漂う湯気。ユーリが入れてくれたお茶は焙じ茶で、オレが気に入って常にストックしている。


というか、何でこう、普通に食材や茶葉が揃ってるのか……。恐らく、兄が色々やってる所為なんだろう。不思議というか、驚きというか。違和感なくやっているのがまた凄い。


まあ、兄はね……趣味の為の行動力は凄まじいものがあったから、食事の為に心血注ぐのもあり得ない事ではないんだよね。それに前世の時(こまき)は好き嫌いなく、よく食べる奴だったしな……。


うーん、これは、気になってしょうがないな。この世界の食糧事情も気になるので、今度じっくり聞いてみるか。


そんなことを考えながら出来立てホヤホヤのもちねを深皿によそっていく。液体に近い餅なので、こういう深めの皿でないと注ぎにくいし、食べにくいだろう。スプーン必須だもん。シチューによりもとろみが固い感じといえば、分かりやすいかなぁ……。


「お、出来たのかァ」


用を足していたようで、席を離れてたユーリは鼻を軽く引くつかせた後、椅子に腰を下ろした。ゆらりと尾が揺れるのを見て楽しみにしてたんだな、と察しオレは頷きを返す。


本来ならリビングに運ぶ予定だったけど、ユーリが近場で色々と用意してくれたからね。キッチン横の簡易的な机に並べて、ちょっとしたお茶会みたいな雰囲気になる。

メインはお茶やお菓子ではなく、もちねという、素朴な甘味のお餅だけども。


「熱い内に食べるのが一番なので、どうぞ。お口に合うと良いけど」


「んじゃ、遠慮なく。頂くぜ」


ユーリのは体格を考慮して、大きめの深皿にしている。勿論スプーンも大きめの調理用のものだ。

うん、良かった。もしもの為にって、様々なサイズのを買ってて。


ユーリは豪快に掬い、漂う湯気にふうふうと息を吹き掛けそれを口の中に放り込んだ。獣人だから、熱いのは苦手かと思ったが、ユーリはそうではないらしい。何度か咀嚼した後、耳を立て目をキラキラと輝かせた。


「……うめェな、これ。餅だけど餅よりも食べやすい。口溶けが良いなァ」


餅の触感は僅かにある程度なので、噛めば噛むほど滑らかになり舌の温度で溶けてしまう。飲み込んでしまっても良さそうと思うだろうけど、餅で粘り気があるからね。ちゃんとよく噛んで、食道に流し込んでもらいたい。


「ーーん、ごっそさん」


気が付けば、ユーリは皿にあったもちねをぺろりと平らげていた。口端についたそれを舐め取る程には、食べ終えてしまったのが名残惜しいようで。


「……おかわり、いる?」


「ッ、いいのか!?」


ピンッと立った耳と尾にオレは思わず吹き出した。


「いいよ。だってこれ、手伝ってもらってありがとうの気持ちを込めて、ユーリにあげた食事だからね」


「そうなのかァ? いや、俺としては荷物運びと、この食事の対価が一緒だとは思えねェんだがよ。明らかに食事こっちが手間暇かかって大変だっただろうが」


「獣人が軽々できる荷物運びを、能力頼みの能力者が簡単に出来ると思わないでほしいなー」


オレは前世ではそこそこ体力もあり力もあったんだけど、性別変わったのと魔力、能力値に全力振り分けられてる所為で、人並みの体力しかない。いや、人並みあるのか……?って疑問に持つくらいには弱いかな。だから、今回の掃除も休憩挟みながら頑張って動いてた訳だしねえ。


ほんっと、ユーリが尋ねてきてくれて良かった良かった。




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