友達が出来たよ!あと相棒が、ちょっと鬱陶しい…
「……リティシアさん、あの、その……」
「ん? どうしました?」
「あの、私と、友達になってくださいませんか……!!」
サリエーゼ嬢の思わぬ言葉に私は目を瞬かせた。
「友達に?」
「は、はい……。私、今までちゃんとした友が出来た事なかったんです……。本ばかり読んで、引きこもってばかりで……でも、これではいけないと。これからは外界に出て行かねばなりませんし、年齢の近いリティシアさんと、是非繋がりが持てたら、と……」
長く話をするのは苦手なのか、理由を話し終えたサリエーゼ嬢は少し息切れを起こしていた。内心バクバクなんだろうな。緊張しているのがよく分かる。
友達、友達か……。確かに私も今世ではほぼいないなあ。エルフの知人が数人いる程度だし、人間や獣人に至っては誰もいない。立場は違うけど、似たような境遇ではあるんだよね。サリエーゼ嬢と私って。ま、私の場合は好きで引きこもってた部分もあるからね。女子とどう絡んでいけば良いのか分からなかったし。
未だに男の意識《前世の記憶》も強いけど、そろそろ同姓とも仲良くなりたいなあ。
すとんと落ちてきた気持ちを自覚したら、そこからは早かった。
「うん、良いですよ。私でよければ」
「……えっ、良いんですか!? 本当に??」
「はい。あ、友達になったんなら、敬語はやめましょうか。距離があるように聞こえちゃうし」
「そうで……ううん、そうね。なら、名前も呼び捨てでお願いできる?」
サリエーゼ嬢は頷きを返すと嬉しそうに手を叩いた。
「じゃあ、サリエーゼ?」
「……うん! 私もリティシアって呼ぶわ。可愛い愛称を決めたいところだけど、まだ友達になったばかりだもの。追々ね!」
「そ、そうだね……」
おおぅ、結構話し出すとぐいぐいくるのね、サリエーゼ嬢……否、サリエーゼは。見た目で誤解しちゃいそうだけど、サリエーゼは教養もあるし、本を読みまくってたぐらいだから、知識も豊富っほいもの。種族の違いもあるから、話題が尽きる事はなさそうだ。
「頻繁には会いに来れないから、手紙を届けるね」
「手紙? え、でも、人間と能力者の通信網は途絶えてるから、届けられない筈じゃ……」
「ふふん、だからウィルさんの力を借ります」
「ウィリアム様の?」
「ーー呼んだ?」
ひょいっと空気のように、其処に現れたウィリアムにサリエーゼは思わず悲鳴を上げ、私は深く息を吐いた。
勢い良く後退りして私の背後に隠れてしまったサリエーゼをちらりと見た後、宙に浮いているウィリアムへ声を掛ける。
「……何しに来たんですか」
「ん? 仕事が一段落したからちょっと休憩にね。そしたら、俺の話が聞こえてきたから、こう風を使ってぴょいっとな」
ふわりと風を纏いながら、ウィリアムは難なく地に降り立ち軽やかに笑った。
「それはそうとリティシア。友達には敬語無しにするのならば、相棒の俺にも対等に接してくれても良いんだぞ。手始めに呼んでみろ。ウィルくんって」
「嫌です」
「即答!? いや、少しは考えてくれても、」
「い・や・で・す」
「拒否感が強過ぎる……!! 俺は、悲しい……」
拗ねたように項垂れるウィリアムにサリエーゼはオロオロしているが、私は呆れた瞳だけをウィリアムに向ける。
何故、拒否したか? 答えは単純なもの。ウィリアムに下心ありなのが、ガッツリ見えたからにきまってるでしょうがっ!!
ふんす、と鼻息荒く吐き出すと、私はサリエーゼの手を掴み踵を返した。
「サリエーゼ、ほっといていいわよ。この人、色々と人をおちょくるの大好きだから。どうせ、悲しんでる振りして構ってくれてるの待ってるだけだから」
「えっ、えっ、そうなの?」
「そうなの。ほら、現にちらちらと此方を見て、起き上がるタイミングを計ってる」
「えぇぇぇ……」
困惑の声を上げるサリエーゼに、ウィリアムは息を吐くとのそりと起き上がった。
「酷いなー酷いなー、俺の相棒は俺にちっとも優しくない。少しは構ってくれたって……」
「構ってほしいのなら、適任者がいますよ。リィター!」
『ハーーーーイ!!』
私の声に呼応するように、リィタが勢い良く跳ねてウィリアムに飛び掛かった。
「げっ、リィタ!?」
『ウィリアムダー!! マタ、アソンデクレルンダネ! ワァイーー!!』
「遊ばない遊ばない! ちょ、頼むから離れて、離れてくれないかなー!?」
はむはむの刑からそう時間が経っていない事から、リィタの接近を嫌がるウィリアムに対し、リィタは純粋に遊べると思い喜んでいる。ま、ただ遊ぶだけでも、テンション上がったリィタに飲み込まれる事はあるけど。
「良いの、あれ……」
「いいのいいの。サリエーゼ、部屋に戻ってゆっくり話しよう? 時間は限られてるんだし」
サリエーゼの手を引いたまま、ちらりと背後を見て私は歩く足を早めた。
尚、ウィリアムはリィタの気の済むまで遊ばれまくったらしい。戻ってきたウィリアムの身体は液体塗れだった、と記しておく。どんまい。




