終わり良ければ全て良し…とは言えない複雑さ
「……つっかれたなぁ」
そうボソリと呟いて、私は軽く背伸びをする。さわさわと心地良く揺れる木々の隙間から見えた青空に小さく息を吐いた。
あの騒動から2日経った。ロニ……スライムが飲み込んだ魔鉱石が無害の鉱石に変わってしまった件は荒れに荒れた。特に、現場の処理班の方々が。
ウィリアムだけは大爆笑だったけど、笑い事じゃないんだよなあ。
状況とロニ何方も念入りに調べた結果、ガチでスライムによって魔鉱石は魔力を分解させられちゃったらしい。どーにかこーにかして、原因を突き止めようとしたみたいだけど、特定には至らず謎だけが深まったって、兄はぼやいてたなぁ。調べれぱ調べるほどヤバい内容の結果が出たり、信じられないような因果に繋がる魔法が出来たりと、散々だったらしいよ。
いや、私的にはその魔法云々が気になるんだけどな?
あー、そうそう。拉致されて連れて来られた人間の男達は、2割が無事生存。2割が精神や身体を病んでるけどまあ生存。6割が見るも無惨な状況だったって。魔鉱石の影響下では元気にいられるけど、それが外れたら崩れ散る砂像のように、身体を保てなくなっていったってさ。
まあ、実際本当にそうだったかは分からない。だってこれ、兄やユーリから又聞きした事だもん。幼い私に見せられないって言ってたぐらいだから、まあ……ヤバかったんだろうね。
因みにバロスは精神とちょいと身体をやられた生存組。暫くは治療しないといけないらしいよ。
ここから先は大人の仕事!と言われてしまい先に帰された私は、リィタと共にサリエーゼ嬢の屋敷でまったりしてます。男装も漸く解除! でも屋敷には入らず、外にある庭園でごろーんと寝転んでるんだぜ! ぽよんぽよんと跳ねてるリィタを軽く撫でて、日が程よく当たる場所へと寝返りを打つ。気持ちが良いねぇ。
『ネェネェ、リティシアー。ロニハー?』
「ああ、ロニなら、兄さん達と事後処理してるんじゃないかなあ。暫くは帰ってこないと思うよ」
『フウン……ロニッタラ、オイシイモノタクサンタベテソウ。イイナア』
「……うーん、あれは美味しいものじゃないと思うな」
むしろ、残飯処理させられている風に見えなくもないよね。そう呟く私に不思議そうに身体をむにーんと傾けてくるリィタ。わー、冷たくて気持ちいーいーなー。
ひんやりもにゅもにゅなリィタの柔らかさを、暫し堪能していたら、此方に向かってくる足音に気付いた。ひょいっと身体を起こしてみる。
「あれ、サリエーゼさん?」
「あ、えと……こんにちは」
何処か緊張した面持ちのサリエーゼ嬢の姿が其処にはあった。
「もしかして、何かありました? すみません、寛ぎ過ぎまくってて」
「いっ、いえ! 構いませんわ。ただ、私が、貴女とお話をしたくて、探していただけなのです……!」
話?と私が服についた葉を払いながら首を傾げると、サリエーゼ嬢はサッと頭を下げた。
「あああ、あの! 今回は本当にありがとうございました。私だけの力では到底出来なかった事です。心から……、感謝致します」
「そんな、私は補助しかしてませんし。何より頑張ったのは兄達です。礼ならばそちらに」
「でも、リティシアさんの活躍も必須だったと伺っておりますよ。だから、やっぱり……ありがとうなのです」
そう言って顔を上げたサリエーゼ嬢は朗らかに笑う。大きい丸眼鏡から覗くその瞳に迷いは見られなかった。
「そう……。なら、感謝はきちんと受け取ります。サリエーゼさんはこれからが、大変ですもんね!」
「うっ……痛いとこを突かれますね……」
そうなのだ。バロスが領主として動けなくなったのだから、有責も負債も1人娘の彼女が背負っていく形となる。こなしていけるのか不安は残るが、リズがいるし、戻ってきた使用人達もサリエーゼ嬢には好意的のようだ。何とかやっていけるだろう。
まあ、私と兄はそろそろ故郷に帰る予定なので、それを見届ける事は出来ないのが寂しくはあるけども。仕方ないよねえ。




