まさかの対処方法に、驚くしかない。
やあやあ! 繊細な調整を何とかやりくりして山や坑道の一部の時間を、元に戻した私だよ!
兄はめっちゃ感謝してくれたけど、元凶のユーリは驚きながらも便利だなァとニヤニヤしてた。
簡単に元に戻せる手段を見つけたからといって、そうやたらとぶっ壊すのはほんと止めてね? あっ、フリじゃないからな!? ガチで言ってるんだからね!?
思わず前世の素が出そうな程に力強く注意を促してみたけど、たぶん通じてない気がする。やべえな、自由奔放な獣人。ガチで扱い大変じゃん。
兄が毎度苦労してんの、分かっちゃうなー。これは疲れるわ。毎度毎度注意しても、次の時には忘れてるっぽいもんね。
まあ、改善すべき点が多くあるユーリだが、そんなユーリの敏感な嗅覚と察知能力で、件の魔鉱石の採掘場は直ぐに見つかった。最小限の照明だけが灯る、薄暗い坑道に足を踏み入れる。其処には数え切れない程の……いや、両手で数えられるぐらいの人数しかいないな? うん? 此処、主戦場じゃなかったの?
「……予想に反して人が少ない?」
「ウィルにチラッと連絡してみたら、もう1か所の方に人数は割いてるみたい。こっちの方は取り尽くしたのかな……」
いつの間にか、微量な風魔法を使ってウィルさんと会話してたみたい。敵に気付かれないの? あ、大丈夫なんだ。そう。なら、いいや。
兄の言葉にユーリは尾をピシリと揺らして、小さく息を漏らす。
「いんや、魔力が薄いものを先に取り出して、濃いものを残してんだろ。人間を使うにしても、耐性が強い者はほぼいねェ。魔鉱石にしてみれぱ弱いものを早く外に出して人間を使い行動範囲を増やし、残った強いものが更に人間を上手く利用して魔力を蓄えてる……ってな感じだろォ」
「うっわ……」
おっふ、予想以上にえげつない操り方だった。あれ、採掘場にいる人間の精神大丈夫か……?
救出したらウィルさんが手配した医療班と一緒に治療するつもりだったけど、治療の手足りるんかなぁ……。
精神ケアとか根気いるし、専門的な知識はそこまで持ってないもんなぁ。簡易の、回数が限られた治療魔法だけで何処まで対処出来るんだろうか。
「……ん?」
腰に携えていたポーチに入れていたスライムがぷるぷる震え出す。これは危険察知のーー、
「ッ、伏せろォ!!」
ぶわりと膨れ上がる魔力の濃度。逃げようと踵を返すも間に合わない。これは防御魔法、いや簡易結界を施さないと……っ! でも、こういう時、パッと身体が動かないんだよなぁ。前世の平和ボケが色濃く残ってるのかな。
考える時間はほんの一瞬なんだけど、それはいやに長く感じた。息を吸い込んで魔法を放つ構えを取ろうとしたら、何かが脇からばびゅんと飛び出してきた。
んん? 何だ今のーー、
視界に見えた光る魔鉱石らしきもの。それに向かって飛び掛かる水溶性の……あっ、スライム!?
「えっ、ロニ!?」
察知に長けたミニスライムだと思ってたのに、よく見たら縮んだロニと名付けたスライムだった。
何をするのか、と思ってたら身体を跳ねさせた勢いで魔鉱石に飛び付き、それを躊躇うことなく飲み込んでしまう。ぱっくんちょ、と飲み……いや取り込まれた魔鉱石らしきもの。え。いったい、何が起きたの……?
えーと、スライムが。私が携えていたリィタの類似種スライムのロニが、魔鉱石の凄まじい魔力ごと、飲み込んじゃった……。
………え。
「「えぇぇぇえぇぇ……!?」」
兄と私は心底驚いた声を上げ、思わず互いを抱き締めた。




