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久々に会う兄に、栄養を与えます




兄、ギルノールは屍となっていた。

そう、色んな意味で。


「兄さーん、生きてる?」


「……無理、死んでる。癒しが、癒しが足りない。可愛いものと、美味しいものと、目の保養……、ふかふかの、もふもふを、くれ……」


そう言って、かろうじて上がっていた手がパタリと床に落ちた。


リビングの床に落ちているのは大量の資料でも、大量の本でも、塵でもない。梳けば透き通るように綺麗な金の髪を、枝毛が出来そうな程にボロボロに乱れさせ、皺に塗れた服を着たエルフだった。


何を隠そう、この屍と化しているエルフがオレの兄であるギルノール。

仕事のし過ぎで、床に絨毯のように広がり力尽きている。こうなった兄は、簡単には復活しないんだよな。適切な()()が必要となる訳で。


「なかなかに重症だなあ。しょうがない。リィタ、兄さんを抱き上げて」


「マカセテ!」


オレに付いて来ていたスライムの一匹、リィタに兄の移動をお願いする。何をするにしても、兄を此処から動かさない限り何も出来ないからな。


ぷにゅんぷにゅんと揺れるリィタは人型を取り、兄をベッド代わりにしている近くのソファへと運んでいく。


「つめたい……でも、気持ち良い……もふもふじゃないけど、ぷるぷる……感触も、良きかはむっ」


ひんやりとした触感が良かったのか、久方ぶりの水分を有したものに触れた所為か、兄はリィタの身体を口に含み、もごもご動かし始めた。


「ウワァ! タベナイデ!! リティシア! ギルノールガ、カンデクル!!」


「うっわ、食事が先だったか。ちょっと兄さん、リィタをはむはむするの、止めたげて。ほらほら、お水ー」


掃除に取り掛かろうとしていたオレはその手を止め、テーブルにあったコップにサッと水を注ぐ。そしてストローを差し、兄の手へと無理矢理握らせた。鼻を揺らし、兄は水の匂いを察したのか、リィタから口を離しストローへと吸い付いた。


「一先ずこれで良し。リィタ、兄さんを寝かせずにソファに座らせてて。急いでご飯作るから」


「ワカッター!」


返事をしたリィタを横目に、調理が出来るキッチンへと足を踏み入れる。


玄関やリビングを散らかし放題でも、兄は決してキッチンだけは汚さない。此処を汚しては、最後の砦である食が維持出来なくなると、分かっているからだ。


電子レンジや炊飯器なんて、前世で身近にあった便利なものが、あるわけないんだよね。都市部に行けば、かなり良い調理器具がわんさかあるらしいが、残念ながら此処は、辺境の片田舎。


かまどと、鍋、水源は最低でも確保しておくべきなのである。これ、大事!


手にした鍋に水を注ぎながら、食料庫を開き何があるのか、確認していく。


「それにしても、相変わらず食材が少ないなあ。これじゃ、作れるものが限られる、って、これ……」


目に止まったのはこの世界では滅多に見掛ける事のない、穀物の1つ。もち米だ。


「お、おお……、久々に見た……」


ハッ、待てよ? 緑豆がある、もち米がある、確か、裏庭には兄さんが趣味で植えてた孟宗竹があって……これは! !


()()が作れるんじゃないかな!!」


思わず、声に出してしまう程、懐かしい映像が脳裏を過る。


オレは唯一、前世の母から教わっていたあの料理を何度も何度も思い浮かべた。ああ、GW近くになると、竹林に拾いに行ってたっけなぁ……。


手順は覚えてるし、食べたくなってきたから、作っちゃおう!!


手伝いに来ていた、他のスライムも巻き込み、オレは気合いの号令を掛けたのだった。



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