第一印象は、大量の草木が絡まった毛玉だった
この世界には大まかに3つの人種がいるんだよね。
能力者、人間、獣人。
種族とか絞っていくと更に複雑になるけど、大体はこの3タイプ。それぞれの人種に別れて、文明を築いていっている。
獣人とは、人と動物の特徴を併せ持つ存在で、この世界では結構普通に暮らし、一番人口が多い。山林とか、山間部とかには必ず獣人の村があったりするし、野生的な、屈強なイメージが私的にある。
あ、でも、高身長の獣人もいれば低身長の獣人もいる訳で。兎族とか鼠族とかは低い子が多いらしく、高い子っていうと、虎族とか狼族とか竜族とか? ああ、竜族が一番たっかいかもなぁ……。兄曰く、凄い高圧的で存在感も半端ないから、会うこと自体オススメしないって言ってた。
えっ、逆に気になるじゃん……?
どんな感じなのよ? 扱いにくい感じなの?
「ーーリティ? あれ、聞いてる?」
「……あ、ごめん。何?」
おっと、いけない。長々と思考し過ぎてた。なんで、こんな事をつらつら考えてたかというと、これからやってくるであろう獣人はどんな人物なのか、とサリエーゼ嬢達がそわそわしてたから。
あと、前世の影響か、獣人のイメージがほんとよくわかんないんだよね。人間に猫耳と尻尾をつけた姿が、こうふわっとしか浮かんでこない。
まあ、間違いなく上記の姿ではないよね。ちゃんと獣人だからね!って、兄も力説してたし。
上手く纏まらなくなってきたから、一旦思考のスイッチを切り替えようと兄に目を向ければ、不満げな表情を浮かべていた。え、何なの。その顔。
「え、どうしたの」
「……いや。何か、リティがそんなにユーリが来るのを気にしてるのが、何かこう……イラッとくるっていうか、モヤモヤするというか」
「知らない人が来るとなると、気になるじゃない。それが見たこともない獣人なら、なおさら」
「それはそうなんだけどさぁ……」
おおぅ? 何だ何だ。よく分からないけど落ち着いて。ほらほら、用意してくれた紅茶でも飲みな。
私は敢えて何の言葉も返さずに、与えられてたカップに、紅茶を注ぎ兄に手渡した。拒否する事もなく、静かに喉を潤す兄に一息吐く。
「サリエーゼさん、お代わり頂いても良いかな?」
「あ、良いですよ。そうだ。リズ、ポットに新しくーー」
サリエーゼ嬢がリズと二三言葉を交わした、その時だった。
ぶわりと風が舞う。地面をぐるぐると這うように空気の螺旋が其処に現れる。竜巻だ、と理解はしたが身体は動かない。
「なーー、」
言葉を紡ごうとしても、上手くいかない。息を吸えない程の、勢いある風が突き抜けたと思ったらそれはパッと消え失せてしまった。
げほっ、と咳き込むと同時にドサリと何かが床に落ちた音が響く。
其処には大量の草木と共に、何か茶灰色のもふもふしたものが転がっている。時折、揺れてる事からそれは生き物のようだ。
「え、何。これ……」
『よしよし。着地には失敗したが、無事届ける事は出来たみたいだな』
響いた声に顔を上げれば、小鳥の姿をしたウィリアムがぱたぱたと羽ばたいていた。ウィリアムが此処にいるという事は、先程の暴風は彼が起こしたもので。そして、彼はある人物を連れて来る為に席を外していた。
つまり?
「……ウィルさん、まさか、」
『そうだぞ。コイツがユーリ。こんな姿だが、なかなかに優秀だからな。仲良くしてやってくれ』
「まじかあ」
ジト目で件のもふもふ物体ーー否、獣人を見てみればぴくりとも動かない。え、生きてる? そろりと近寄り様子を覗えば、すぴぴぴと意外と可愛いらしい寝息が聞こえた。
うっそだろ!? まさかの初獣人、目の前で熟睡してるんだけどぉぉ!?




