よーし、計画を立てよう!
さてさて、対処すべき相手が分かったところで、どうするかって事なんだけども。バロス本人はウィリアムがどうにかするようだけど、今も採掘され続けてる魔鉱石をどうするか。
人間に対応は無理なんだよね。耐えられたら良い方で大抵は操られ自我を奪われる。助けられたとして回復できたら良いけど、下手したら意識混濁でそのまま天に召される可能性もあるっていうね。
それ聞いて率先して行こうとする人間はいないよ。いや、能力者でもいないけど。
能力者で行くのが一番なんだけど、頼みの綱であるウィリアムは多忙で魔鉱石の方までは手が回らないんだって。バロスの政財界にも食い込んでるから、そっちを隅から隅まで洗い直すらしいよ。
……うん。風通り良くなると良いねえ。
ウィリアム本人は魔鉱石採掘に乗り込みたかったみたいだけど、身分あるのが億劫なアレだね。身軽に、そして安易には動けないみたいな感じ。
『バロス云々もだが、他にも所用がなければ俺が直々に潰せたのになぁ。……仕方ない。ユーリをそっちに送る』
聞き慣れない名前に、私やサリエーゼ嬢達は首を傾げるが兄は見知った相手のようで驚きに目を見開いていた。
「ユーリを働かせ過ぎじゃない? 詰め過ぎるとまた行方をくらますぞー」
『大丈夫大丈夫、コレ終わったら休ませるつもりだから。ま、簡単に終われば、の話だけど』
鳥の姿のまま笑い声を上げるウィリアムに、兄は呆れた表情だけを向ける。
ふむ。話の流れからして、件の人物は兄の知己でウィリアムの仕事仲間のようだ。凄くこき使われてるんだろうなぁ。あのウィリアムだし、人任せにしそうだもんね、色々と。
まだ見ぬユーリという人物に、私は何となく苦労人の気配を感じた。
『ーーというわけだ。バロスの方は任せろ。魔鉱石の事は……まあ、ユーリに話を通しておくから追々聞いてくれ。じゃ、ちょっと連れてくるわ!』
私やサリエーゼ嬢達が話に割り込む暇もなく、さっさと決めてしまったウィリアムはその場から瞬時に消え失せてしまう。
流石、風の能力者。動きが素早い。手を伸ばす事も出来なかったな……。
で? 何があってどうなったのか、と言う視線を兄に向けてみれば兄は気不味そうに眉をギュッと寄せていた。まあ、兄に投げやりで帰っちゃったようなもんだもんね。
「……ごめんな。ウィルはああいう奴だから、あんな風にあっという間に決めちゃうんだよね。何でもかんでも簡単に出来ちゃうから、なんだけど」
「でも、今回は人間の令嬢と協力するんでしょう? この扱いはないわー。ほら、見てよ。サリエーゼさん達の困惑顔。当事者なのに、置いてけぼりは良くないと思う」
「だよな、うん。ごめん……」
しょんもりしてる兄に、気にしないで下さいと手を振るサリエーゼ嬢。優しいけど、こればっかりは強く言った方が良かったと思うよ。だって、詳細知らされずに連れて来るやつの指示に従ってね! えっ、質問? いやいや、それは全部そっちで宜しく! みたいな感じでしょ?
どうしろって言うのさ。何も分からないまま、ぼーっと待つしかないのかね。
一体、誰が連れて来られるのやら……。
「ねえ、兄さん。誰がこっちに来るの? ウィルさんの仲間なんだよね?」
「んあ? あー、うん。そう、ウィルの仲間であり部下……っていうのかな。狼族の獣人なんだけどね」
「「えっ!?」」
「え?」
驚く私とサリエーゼ嬢に対し、兄は緩やかに首を傾げた。どうしたの?じゃないんだよ。
耐性ない方からしたら、獣人って言われるだけでもびっくりするに決まってるでしょ!
もー!って憤慨してれば、兄はそういうものだっけ?ときょとん顔。これは分かってないな。後で新たに説明しなきゃいけないかなぁ。
でも、獣人かぁ。そういや、ちゃんと会うのは初めてな気がする。ウィリアムが選んだ人選だし、変なやつが来たりはしないでしょ。……たぶん。
ともかく、どんな獣人が来るのか楽しみだなあ。
そうひとりごちて、私は微かに笑みを浮かべた。




