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予想以上に、物騒なものがあるとは聞いてない




記憶を掘り起こすように語られたサリエーゼ嬢の話を纏めると、事の始まりは数年前。

とある輝石を偶然にも発掘してしまった頃からだという。戦により、街は破壊されその機能を失った。経済的にも困窮するこの地に新たな資源を生み出さねばと焦っていた頃だ。


その輝石には魔力が宿っていた。否、魔力というよりは自然界に有する能力そのものが蓄えられていた。バロスは驚きながらも、これは必ず街の復興と発展に役立つと力説していたらしい。漸く街の人々を楽にしてあげられると、その表情を綻ばせて。


「でも、違ったんだね?」


オレの問いにサリエーゼ嬢は頷きをしっかりと返してくる。だが、その表情は酷く怯えているように見えた。


「……ええ。あの輝石は人間には過ぎたるものだったと、今なら言えます。あれは、取り出されてはいけないものだった……」


街にも研究者は何人かいた。その彼等に輝石を解析してもらってから、少しずつ狂っていく。

自然の能力が宿っているという事はこれを所持するだけで、能力が使える。あの能力者だけが独占していた魔法に人間の手が届くのだ。


バロスは更に歓喜した。これで次の戦にも備えられる。能力者ばかりが魔法を独占する時代ではなくなる、と。


街の発展の為に、と動かしていた労力はいつしか発もなくなり、能力を使える人材の確保を探す為に使われるようになった。貧しくとも賑やかだった街には人が、仕事が増えお金が落とされるようになる。ただ、少しずつ不穏な影が、あちこちに見え隠れしていたように思う。


「父が、人を集めているのは労働力を求めているからだと思っていました。戦により仕事を失った若者も沢山いましたから。だからこそ、不審には思わなかったんです。あの時までは」


「あの時?」


「私の結婚相手を求めて、人間だけではなく能力者にも声を掛け出した時、です。それまで、私は口出すことなどなかったんですが、あまりにも、度を超えてきているように思えて……。父に進言したら、怒鳴られ殴られてしまいました。父が、あの時の父があまり怖くて……私は、声を上げるのを止めてしまったんです……」


被害が増えると分かっていたのに、ごめんなさいと頭を下げるサリエーゼ嬢に、オレは何とも言えない表情を浮かべる。


身内がやらかすとさ、それを直視したくない、擁護する方に回りたくなるのはよく分かるんだよ。だけど、これはもう隠す事が出来ない規模の失踪人出てる可能性が高いね。手伝うとか言ってたけど、これガッツリ政府案件なんじゃ……?


ほらぁ、あの兄さんが珍しく難しい顔してる。

まさか、これめっちゃヤバい案件だったりしないよね? いやだよぅ、色々巻き込まれるの。


オレがうんうん唸っていると、兄が静かに口を開いた。


「サリエーゼ嬢」


「は、はい!」


「その輝石は、緑色に光っていたのではないですか」


「ッ、そうです。普段は黒色なのに、条件が揃うと緑に変わるのです。それが何か……?」


「……サリエーゼ嬢。それは輝石ではありません。それは、石の形をした魔道具のようなもの。いや、生きている石といった方が良いかな」


ニャスパーダゥ。人の魔力を吸い、所有者を籠絡させる魔鉱石。遥か昔に封殺された、古の代物。自我を持つとも言われる厄介な呪物アイテムだ。


「ちょっと待って。まさか、その輝石というか、魔石がバロスを操りこんな事を仕出かしたというの? 規模がデカすぎない?」


「僕だって否定したいさ……。でも、魔鉱石アレが出てきたのが本当なら楽観視はできないんだよねぇ」


何せ、あの世界領主ウィリアムが一番先に消したい存在として、あの魔鉱石を上げていたから。

かなり厄介というか、人間が手にしてはいけないものだと思うよ。


兄の話に真っ青になるサリエーゼ嬢とメイドのリズ。そして、オレも色んな意味で項垂れる。あー、ダメダメ。これは自分達だけは無理だ。

でも、呼びたくないな。めっちゃ力借りたくない。

依頼を簡単にこなして、早く自宅に帰るつもりだったのに、これでは! 確実に! 能力使わなくちゃいけなくなるじゃん!!


兄から連絡してくれ、と視線がちくちくと刺さる。兄が連絡しても良いのだが、相棒となってるオレの方が繋がりは深いからね。風を送れば一瞬で届くだろう。


ああ、もうどうにでも、なーれ!!

オレは小さく息を吐いて指先に魔力を込めた。


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