ぶっちゃけ、泣きたいのはこっちの方
やあやあ、色々とあり過ぎて脳がパンクしそうになりながらも、何とか意識を保ってる私だよ。
予想外の展開にちょっと気を失いたくなりそうになったけどね。まあ、気合いで何とかしたよね!
兄と、この泣き虫令嬢と、リズを放っておいて眠りに落ちるなんて、駄目でしょ。ヤバい状況になっちゃうしね!
え? 何で泣き虫令嬢かって?
だってさあ……
「うっ……ほん、ほんとに、父が、すみません……私が、私がぁぁぁ」
「いや、わかったから。大体、これは貴女の所為ではないからね? ね?」
「そうです、お嬢様。しゃんとして下さい。遠路はるばる来て下さったのに、気遣わせてどうするんですか」
「でもぉぉぉぉ……」
「謝るのなら、先程の令嬢としてあるまじきの失態だけにしてください。あれだけは、お嬢様が悪いです」
「ごめんなさぁぁぁいぃぃ……!!」
「ああああ、埒が明かないぃぃ……」
目の前でぐずぐずに泣き崩れる令嬢……いや、サリエーゼさんがいるんだよなぁ。知己である兄とメイドであるリズが、頑張って宥めているけれど、涙が止まることはないんだよね。というか今、リズがトドメを刺したよな??
端から見たらあれじゃん。兄がか弱い少女を苛め泣かせてるみたいになってるじゃん。だけどもね、私達何にもしてないからね? サリエーゼさんがブワッて突然泣き出したからね?
リズ曰く、日頃から感情が高ぶると直ぐ泣き出してしまうらしく、こうなってるのも仕方ないというか、状況的に当然なんだとか。
まあ、パッと見てサリエーゼさん、令嬢に見えないもんなあ。服装で身分高そうってのは分かるけど、佇まいというか、見た目でそれがガクンと半減させてる。
枝毛が所々ある髪を適当に三つ編みに結んでいるし、クッソ分厚い眼鏡をしている所為で表情は伺い知れない。その感情は、その流している涙は一体どういう気持ちを溢しているのやら。
怖いからなのか、とんでもない失敗をしてしまったからなのか、はたまた父親の事を嘆き悲しんでいるのか。それとも、これから暴かれるであろう父親の所業を知っているのか。
一体、どれなんだろうなあ?
ま、今のところ、それはどうでもいいんだよね。
話し合いを先ずはしなきゃ、どうしようもないし。滞在できる時間も限られてるからねぇ。
そろそろ、落ち着いてほしいんだけどなー。
小さく息を吐き出して顔を上げれば、リズとパチリと目が合う。呆れた自分の表情が伝わったのか、リズは一つ頷きを返すと未だに泣き続けるサリエーぜさんの頭を、全力でぶっ叩いた。
えっ!? 何か凄い音したけど!? スパーンじゃなくて、何かこう重みのあるガツンとした擬音な感じだった。ゴッ!!っていう感じ。
うっわっ! あれは痛い。めっちゃ痛い!!
頭上を押さえるサリエーゼさんの表情が苦悶に歪んでる。痛いぃぃって更に泣き出してんじゃん。
それなのに、泣かないで下さい。ほらシャキッとする!とべしべし叩くリズは鬼か。いや、うん。彼女、メイドだったわ。ただ、ちょっと強い……特殊なメイドなだけで。
お嬢様、失礼しますってお断りを入れて実行してたけど、あれ、問答無用って雰囲気だよね。喧しいぞいい加減静かにせんかいお嬢様ァ!って副音声が聞こえた気がした。
……リズ、怒らせないようにしようっと。




