先ずは行動あるのみ!
古都ウィルタスト
別名、忘れ去られた街とも言われる、中央大陸の東南部に位置する町だ。
いや、町だったというのが正しいだろう。
戦により破壊され尽くした町を、ロジェワード一族の手により復興している最中である。そんな発展途上のこの町に、件の彼、バロスは居を構えていた。
てっきり、リスエラ自治区に向かうのかと思っていたんだけどなあ。
ま、楽に行けるなら、行ける方が嬉しいしね。
チラリと横に立つ兄を見上げれは難しい顔をして、何かを考え込んでいる。
おいおい、その姿でその表情は宜しくないぞ? ほら、眉間の皺を伸ばして、笑顔をキープしときなよ。
「……リティ。このまま帰る、なーんて、」
「出来る訳ないでしょ。町に踏み入れた時点で、進むしかないんだよ。それとも、ギルノールとして捕まってみたい?」
「冗談言うなよぅ! 嫌だから渋々、こんな格好をしてるんじゃないか!!」
ぴゃっと悲鳴を上げ、泣きそうな表情を見せる兄は、何処からどう見ても女子である。
長い金髪の髪は適度に編み込んで流行りの髪型にして、そこまで高くない身長と、なよっとした体型が幸いして女性の服を着させれば、あっという間にギルノールの双子の妹、ネージュの完成!
因みに私は髪を首元付近に一纏めにして結ってる。男装に邪魔なら、切ろうか?って言ったんだけど、ウィリアムと兄の2人から凄い顔して止められちゃったんだよね。えー、邪魔になるなら切った方が良くない?
ちょっとした小間使いの、動きやすい服装をしてるよ。スカートを履いてないのが新鮮だなあ。あ、ズボンってこんなだったね。懐かしい懐かしい。
あ、あと名前はノエル。安易に名付けたんだけど、ウィリアムには、何でか頭を撫でられた。ノエルっていう単語に、何か意味あるのかね……。あ、名前の由来は前世の知識からだよ。
何を想像しているのか知らないが、百面相を繰り広げる兄を暫く観察していると、腰に携えていたミニスライムがぷるると身体を震わせた。
これは、ある意味リィタの分身とも言えるミニスライム。の、更に分身体だ。
震えた、ということは近くにいるようだな。
リィタ達サイズのスライムを、疑惑のある怖い町へ連れて来る事はおろか、持ち歩く訳にはいかないので、ウィリアムと兄によってちょっと改良された、警報器並の探知能力を搭載された子達。この子らにはロジェワード家の関係者やロジェワード嬢の匂いを覚え込ませている。
何故か? ロジェワード嬢に接触する為だ。
この件を暴くに辺り、ロジェワード嬢が関わっているか否かで遣り方が結構変わってくるんだよね。
接触は危なくない? って私もウィリアムもそう言ったんだけど、兄が大丈夫大丈夫!って力説してたんだよ。ねえ、令嬢とほんとにただの知り合い? 何か趣味で意気投合してないよね??
チラリと人混みから、覗き見れば近付いてくるのは令嬢ではないみたい。服装から見るに、使用人かな。
「兄さん、来るよ」
「っ、うん。分かった。口調は前世の通りで行くからね。リティも、」
「わかってる。久々に満を出せば良いんだよね」
兄に頷きを返し、名前を間違えないでよと注意を促す。今の私はリティシアじゃない、ただの小間使いの少年、ノエルなんだ。
小芝居、いっちょ頑張りますか!!




