兄には頑張ってもらう…えっ、私も!?
「というわけで、兄さんには女装をしてもらおうと思います!」
「待って、どういう事。何があってそうなった」
片手を上げて、状況説明をお願いと言う兄に、私とウィリアムは顔を見合わせる。どうする?話す?と目で会話を交わし、私が先ずは話すべきかな、と口を開いた。
「まあ、簡単に言えば裏がありそうなので、まともに行くより回り道して行く事にした!って事かな」
「ごめん、僕が女装する意味が全く分からないんだけど?」
困惑する兄に、ウィリアムは仕方ねぇなあ、と説明してあげている。見た目に反して意外と面倒見良いんだよね、ウィリアムは。
さてさて、何故兄が女装する流れになったのか。簡単な事だ。敵に捕まりたくないからである。
ウィリアムから聞いた話によれば、ロジェワード邸に迎え入れられた男性は、総じて行方不明になっているんだとか。帰っている人もいるらしいんだけど、そっちは消息不明だし。ちゃんとした書面で招待されたとはいえ、そんなやべえ場所……ゲフンゲフン、外部と遮断されかねない場所に、無防備で行けるかよ!って事で、防御魔法を施された道具を身に纏い、かつ女装して向かう事にしたんだよね。
うん? 何で、女装かって?
認識阻害とかでも良かったんだろうけど、念には念を入れようって事で。
まあ、ウィリアムがさ、兄の女装を見たい!!って、ゴリ押しした所為でもあるんだけどね。
たぶん、ウィリアム、これは言わないんだろうなあ。ま、私がバラす可能性があるけども。女性の所作とか心配してたけどさ、大丈夫大丈夫。だって兄さん、かつて女だったからねーーっと。
話が、終わったみたいだ。
「ーーじゃあ、リティも! 男装させてくれよ!!」
おっとぉ? まさかの飛び火したぞぅ? えっ、私も身体張らなきゃならない感じ??
おい、ウィリアム。お前、相棒の危機だぞ。ちゃんと拒否してーー
「良いな! よし、それでいこう!!」
マジかよぉぉぉぉ!!!!
前言撤回、ウィリアム嫌な奴ぅぅぅ!! めっちゃ楽しんでるよね、この状況を! お前も、女装すれば良いのにぃ!
ウィリアムは表から、仕事関係で関わるらしい。なので、残念ながら変装とか、そういう類のものは出来ないんだと。
結論、兄妹でかつての性別に戻ります。
じゃねえよっ!!!! いや、必要とあらば、身体を張る気はいるよ? でも、何で、私は男装よ??男は危なくないか?
そう尋ねれば、ウィリアムはしたり顔で答えてくれた。
「簡単な事。ギルに妹がいる事は知られているが、年齢までは知られていないんだと。なら、ギルを双子の妹にしちまって、リティシアは小間使いAになれば良いじゃん、って。まあ一番の理由は、」
「理由は?」
「俺が一番見たいからだな! あははははははっ!!」
「でしょうね! こんちくしょう!!」
ダン、と足を強く踏み鳴らしても、ウィリアムは気にしない。楽しみが勝るようで、衣装集めるかぁと既にやる気満々である。
私は兄の女装を見てニヤニヤしたかっただけなのだが、兄の不幸を笑った所為か、直ぐにしっぺ返しがやってきた。
くっそう、やるしかないのか……
「えっ、ちょ、どうしたの兄さん」
ちらりと、視線を横に向ければ兄が胸元を抑えるように、蹲っていた。
「いや……、リティの男装……少年姿を想像したら、めっちゃ創作意欲がっ、いや……なんでもない」
「いや、何でもなくないだろ」
別の意味の発作を起こしてんじゃねえか。大丈夫か、このまま進めて。
めっちゃ心配です。誰か、変わってください。




