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兄に縁談話?いやーな予感がするなあ…



「うえぇぇっ!? 僕に、縁談話がきてるの!?」


冗談でしょ!? って叫ぶ兄に先程届いた手紙を手渡すと、ワタワタしながら開封し中身を速読していく。


「ええっと……、なになに? 前略、ギルノール様、如何お過ごしでしょうか……」


口に出さずに黙読しなよ、と言いたいが内容が内容だけに、口を挟む事はしない。


内容はこうだ。相手は兄が何度か会った事がある、人間パフの資産家令嬢。

人間社会では知らぬ者はいない程の、大きな資産家で、数々の事業をこなしているらしい。


手に入られないものはないと、言われる程の金持ちのお嬢様が最近欲したのが、見目麗しく、爽やかな伴侶。愛する娘の願いを叶えたいと思った父親である資産家の男は大陸中の人間から、該当者を探した。だが、娘のお眼鏡に叶ったものは出ず、仕方なく能力者ヴァリュアブルの管轄区域まで手を伸ばし始めたようで。


白羽の矢が立ったのが我が兄、ギルノール。縁談話はウィリアム経由で、知らされる形になり今に至る訳だ。


確かに、兄はエルフだし、美形な方にはなるよね。選ばれて嫌な気分にはならないが、でもさあ……、こう、何ていうか、何かがちょっと、引っかかる。


もやもやを抱きながら、手紙を読み終えた兄をオレは近くに呼び寄せた。


「ねえ、兄さん。この令嬢と会ったことあるんでしょ? どんな人なの」


「どんなって……、普通の令嬢だよ。可愛いものとイケメンが大好きな」


「ふぅん。で、父親との仲は?」


「父親? んーと、まともに話すのは年に1、2回ぐらいとか言ってたかなあ。お互い不干渉な感じなんだって」


なるほど? そこまで仲が良い訳ではないのか。なら、娘の願いを叶えてあげたい!みたいな、子煩悩な娘を溺愛する父親像からは、離れた方が良いか。


次に資産家の内情……、これはウィリアムから聞き出せば良いよな。彼から送りつけてきたんだし、ある程度は融通を利かせてくれるでしょ。


これから解決していくべき事案を指折りながら、脳内に保存していれば何か唸っている兄の姿が視界にちらついた。


「……どうしたの?」


「いやー、この令嬢であるお嬢さんさあ、確か好きな人がいると言ってたんだよね。僕の知り合いだから、協力してほしいんだって言ってて」


「ッ、それ本当!? ち、因みにいつの話!?」


兄の胸元を掴み、がくがくと感情のまま揺さぶれば、兄は口元を押さえながら、思考を巡らせていた。


「ええ、と……、確か、半年ぐらい前だった気がする。協力するよー! なーんて、軽口叩いてたから」


「半年前、」


呟いてからパッと手を離せば、重力のまま兄はその場に崩れ落ちた。ふらふらするぅ、と溢しながら口元をずっと押さえていた。三半規管が弱いのかあ。鍛え方が足りないぞう!


介抱は近くに来たスライム達に任せて、オレは思考の波に沈む。


兄からの情報が確かならば、令嬢が父に伴侶を見つけてほしいと頼む筈がない。

親子仲もそこまで良いとは言えず、普通の感情ならば互いの為に何かしようとは考えないだろう。


だが、父親は娘の為といって権力を片手に人を集めようとしている。純粋な娘の為ではない。なら、何の為に? 綺麗事な話じゃないような、そんな雰囲気が漂ってくるなあ、とオレは深々と息を吐いた。


ふわりと髪が浮く。吐いて出来た風ではない。ブワリと勢い良く巻き起こった風の中心に見知った気配を感じ、オレは目を開けてみた。


「仕事が早いんですね。私は()()何も、頼んでいないんだけど?」


「ふふ、まあね。これでも、世界領主(マスター)だからね。風を読めば直ぐに飛んで来れる」


お望みの物はこれかい? と、にっこりと微笑み、書類を携えたウィリアムが其処にはいた。



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