いつもの日常が続くと思いきや…?
やあやあ! (仮)の相棒を手に入れたリティシアだよ!
最近ほんと、濃い日々を送っているんだよなあ。兄がかつての妹と発覚してから、何かタカが外れたみたいになってない? これが普通なの?
仮とはいえ、相棒を手に入れた私は権力を手に入れたーーとかもなく、今まで通りの、のんびり穏やかな日々を過ごしていたりする。
てっきり、首都に連行されちゃうのかと思ってた私は拍子抜けだった。
登録とかその他云々は、ウィリアムが次来た時で良いんだって。意外と緩いんだな、そういうの。一昔前の田舎みたいな雰囲気じゃん。良いねぇ。
はむはむの刑に処されたウィリアムは何とも言えない表情をしてたね。流石、風の能力者。酸素不足になる事はなかったけど、二度とやりたくはないかな、だって。
はじめての経験だ……ってぼそり呟いてたのを聞き取った兄が、何処か輝いた瞳でメモしていたのを見たけど見なかった事にしたよね。あれは深掘りしたら良くない。絶対ヤバい。
「よいっしょ、と!」
井戸から冷たく新鮮な水を汲み上げ、それを複数の桶に入れていく。ザパァ、と流れていく水にぴょこぴょこ近くにいたスライムが入ろうとしてくるが、魔法を使ってそれを阻止する。
洗濯の為の水なんだから、スライム達が入ったらゼリー状の液体になっちゃうじゃん。やだよ、べとべとの服を着なきゃいけなくなるの。
私が何故、こんなに洗濯を大掛かりにやっているかというと、良い天気という理由もあるが、明日でこの家とお別れするからだ。
あ、引っ越すとかじゃないよ。私は実家というか、元いた家に戻るだけだし。此処は兄専用の、何というか研究兼仕事場みたいな所だからね。
で、覚えてるかな。私が此処に来た時、兄がどうなっていたのかを。
あれの再来が少しでも伸びるように、片付けられるやつは片付けとこうと思った訳で。
料理も保存食を幾つか置いたし、必要書類は纏め上げて置いた。怖い内容のメモ書きを見つけたけど、知らなかった振りしてゴミ箱にぽーい。
その後、リィタがもぐもぐしてたなあ。……お腹、壊さないと良いけど。
パンパン、と洗い終えたシーツを伸ばし、庭に張り巡らせたロープに干していると、一筋の風が勢い良く吹き抜けた。
ただの風かと思いきや、それは意志を持ってくるくる、動いている。いや、目を凝らすとそれは形を保っていた。
「……鳥?」
風の流れを纏いながら、姿は鳥の形で。
こんな事が出来るのは、コントロールが上手い魔法使いか、生まれながら魔法を扱える能力者ぐらいだ。
風の能力と言えば、あの人しかいない。
「ウィルさん、か」
名を呼べば、その鳥は掌に収まる手紙へと姿を変えた。パサリと手に落ちてきた小さな手紙に、酷く嫌な予感がする。
「見なかったことに、は出来ないよなあ」
ぼそりと呟いて、思わず空を見上げた。
この手の魔法は受け取った事を、相手が感知する事が出来るものだから、ウィリアムには既に私が触れたことに気付いているだろう。知らぬ存ぜぬは通用しないのだ。
気付かなきゃ良かった、なんて言ってももう遅い。手に取った時点で、受諾したも同然なのだから。
ウィリアムからの手紙。やはり、内容はアレだろうか。いや、待てよ? 兄がいる場所に送ってきたという事は、兄に関する事かもしれない訳で。
相棒云々の件で、何か起きたと決まった訳ではない、よね。うん、そうだ。決め付けは良くない。
厄介な事じゃないと良いけど、と小さく息を吐いて私は、手紙の封を切ったのだった。




