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相棒(仮)とか良いんじゃない?



暫くして、書斎から出て来た兄は酷い有り様だった。長い髪は乱れ、服は所々破けかけており、事件に巻き込まれたと言っても疑わない程に、その姿は痛々しい。


「……おいおい、どうしたんだよ、その怪我」


ウィリアムが思わず声を掛ければ、兄は項垂れた顔を上げる。顔にもいくつか切り傷があり、最たる怪我は右腕の部分。強打したのか、裂けた部分から見える皮膚は赤黒くなっていた。


「カーペットに躓いて、思わず摑んだ本が頭上に落ちてきて、痛みに呻いていたら書類の雪崩が起きて、文鎮が右腕に直撃した……」


痛かった、と表情をぐしゃぐしゃに歪める兄に思わず同情しちゃったよね。小指ぶつけるんじゃなくて、あの重くて硬い文鎮がきたかぁ……。


呪った力はそこまで強くなかった筈なんだけどな。やはり、兄のドジさは呪いでさえパワーアップさせるのだろうか。


うむむ、と唸っていれば、ウィリアムがよしよーしと兄を慰めていた。さり気なく風の能力を使い、痛みを和らげてくれているようで、兄は落ち着きを取り戻し始めている。


渡されたタオルで涙を拭いながら、兄は思い出したかのようにウィリアムを睨みつけた。


「ウィルぅ、リティは駄目だからね。本人も嫌がってるなら、相棒契約はなし! というか、何処にもやりたくなーい!!」


「うっわ、やっぱ、しっかり聞いていたのかよ。このシスコンめ。……でもなあ、時空魔法使えるんなら、俺の手を取るのが一番マシだと思うぜ。無理矢理連れ出されて、世界の為に死ぬまで働かされるのなんて、嫌だろ?」


「……それ、先史時代から、終戦するまでの扱いですよね。廃止されたと聞いていたけれど」


貴重な能力者は価値が高い。地球でも人身売買があったように、この世界でも闇市だの、奴隷市場などあったみたいなんだよね。それは能力者と人間とが混ざっていた時代。戦争が当たり前になってきた頃だと、人間と戦うに辺り、価値のある能力者は施政者が管理するようになったらしい。でも、それは5年前に終わりを告げたはず。


この緑髪の青年、ウィリアムが戦を終え世界を統治したからね。


「よく知ってるな。ああ、表向きは無くなったさ。ただ、甘い汁を吸ってた馬鹿な輩は未だに暗躍してる。だから強力な後ろ盾は、なるべく持っていた方がいい。分かるだろ?」


淡々と告げるウィリアムだが、その言葉の意味は重い。施政者であるウィリアムが把握出来ない奥地にはまだ、ヤバい輩がわんさかいるって事か。

ひえ、絶対、関わり合いたくないぃ……


兄は打撲した腕にくるくると包帯を巻き付けながら、苦渋の表情でウィリアムの提案を受け入れてもいいんじゃない?みたいな空気を出してきた。


「ウィルをボディガード代わりにするって事なら、良いんじゃないかな。あっ、嫁ぐのだけは駄目だからね!(ネタとしては美味しいけど!)」


ちょっと? 何か、嫌な副音声が聞こえた気がするけど、気の所為だよね? ボディガード、ボディガードかぁ……。まあ、相棒はお互いを支え合い、過ごしやすくする為の制度でもあるしなぁ。


ちらりとウィリアムを見れば、にんまりと意味ありげな笑みを浮かべている。逃げ道がないのが分かっているからこその、コレか。質が悪いな、この野郎。


「貴方にとって、私を相棒にして良いことって、属性補うのとレアな属性ゲット以外に、何かあったりするんです?」


言い方酷いな、とぼやきながらウィリアムは腕を組み、その目をゆるりと細めた。何となくだけど、その瞳は何処か淋しげに見えた。


「……あるよ。理由は言えないけれどね。まあ、俺の、我儘みたいなもんさ」


能力者としての柵だろうか。それとも、何か守るべきものがあるのだろうか。


暫く付き合ってあげても良いかな。屋根の修理も徹底的にさせたいし? 期間を決めて、ウィリアムを見定めてみようと、何となく決めた。オレにしてはめっちゃ珍しい事なんだぜ。


「じゃあ、仕方ないから一先ず契約、お願いしときます。仮で!!」


「仮かよッ!!」


ぶはっと吹き出したウィリアムに、オレは、こっそり呼んでおいたリィタ達を放った。歓迎の証としてスライム達のはむはむの刑に処されろ! 大丈夫、20匹しか向かわせないから!!


頑張って、耐えてね。仮の相棒さん!




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