これは、兄を非難してもいいと思うの
うっわぁ、まじかぁ。そういうまともな理由で、相棒を求めていたとは思わなかったなあ……てっきり、巫山戯たものだとばかり。
だって、あの兄さんの友人だし、私の噂を聞いてたって言ってたしねぇ。
さらりと告げられた相棒を求める理由に、どう反応を返していいか戸惑ってしまうじゃないか。
「大概の元素能力者は、弱点を補う為に別の属性を取得する必要があるんだが、それが出来ない能力者もいてね。まあ、俺がそうなんだけど」
「何故? 元素能力者なら、自然との調和も取りやすい筈では?」
「普通ならね。俺は、それが出来なかった」
適正がないのだろうか? いや、元素を扱う者にそれはない。自然は喜んで力を貸すというし、私も水属性の魔法をちょっと齧ってるから分かるけど、そもそも適正がなければ、風の能力すら操れない。……ああ、なるほど。つまり?
じとっと視線を向ければ、ウィリアムは意味ありげな笑みを浮かべる。そして、沈み込んでいたソファから起き上がった。
「単に能力が強過ぎたんだよねぇ、俺。他のものを受け付けないくらいに、風の能力が強過ぎてさ、師匠からは歩く暴走族ってよく言われてた」
思わず意味が違うな、と思った私は悪くない。日本で、暴走族って聞いたら爆走するバイクを思い出すよねぇ。パラリラパラリラっていう、あの独特の音が、私の眠りを何度妨げた事か……!!
「うっわぁ、何その苦虫を噛んだような、ひっどい顔は」
「……ちょっと昔の事を思い出しただけです。お気になさらず」
ふぅん、と目を細めたウィリアムに私はそれ以上の事は言わない。どうせ言ったって通じないからね。兄さんなら、わかるわー!って頷いてくれそうだけども。残念ながら、今の相手は生粋のこの世界生まれだ。
「だからさ、どう? 俺の相棒になってくれない?」
「貴方、諦めるという選択はないんですか……」
「ないね」
え、これでも駄目なの?と言わんばかりに目を瞬かせ驚いた表情を見せるウィリアムに、断られる事自体が稀なんだろうな、と察する。
「せっかく見つけた最良の相手だよ? 逃す訳ないよね。それに、この提案は君にとっても良い事だと思うよ」
「どういう、」
「時空魔法が使えるんだろ、君。よくギルが自慢してたからね、覚えてたんだ」
書斎に引っ込んでいる兄がいる方へ、思わず怒りの殺気を向ける。ほんと、碌な事しかしてくれてないんだけど!?
元妹だと発覚する前から、抜けてるとこあるなぁとは思ってたけどさ、これ絶対ワザとじゃないわ。素で流れるように自然とやってる。めっちゃ質が悪いやつね。やっぱり、同人誌云々を叱り飛ばすべきだった?? いや、燃やすべきだったか……。
「時空魔法が貴重かつ、厳重に管理される能力って知ってるかな。扱える者は、施政者の管理下に置かれるのが常だ」
「知ってます。知っているからこそ、隠してひっそりと生きてきたんですよ。それも今、兄がぶち壊してくれましたけど」
一息吐いてもう一度、兄に向けて殺気を放てば派手に転ぶ音が聞こえた。カーペットに躓いて受け身を取れず横転して、棚の角に小指をぶつけ悶絶しますようにって、地味に呪ってたんだけど届いたのかな。
いっだぁぁぁ!?と叫びのような悲鳴のような兄の声が、此方にまで響き渡る。内心ガッツポーズした、私は悪くないよね。うん。




