気に入られても困るんだよね…
施政者に関わると碌なことが無い。
それは、大体の歴史が物語っている。
だから私も例に洩れず、関わりを持たずに生きていこうとしていたのだが。
そんな施政者が今、目の前にいる。
すごく嬉しそうな表情で、ソファにくた〜っと寛いでいた。
私がスクラップしていた新聞記事を読みながら、此方を盗み見ている。ファイル記事読むなら、そっちに集中しろ。視線が煩すぎてお茶すら飲めないじゃないか。
ハァ、と深々と息を吐けばウィリアムから声が上がる。
「懐かしいモンから、最新のモンまで。おお、これ凄い。大抵の社会情勢記録してんじゃん。ギルより、収集能力も優れてる」
パラパラと手遊びするようにページを捲っているが、中身はきちんと把握しているようだ。速読力が身についているのだろう。数分も掛からずに、全てのファイルを読み終えていた。
「で? どう? 相棒になる気は、」
「ないです。速やかにお帰り下さい。出口はあちらです」
そう言って上を指で差してやれば、ウィリアムはおかしそうにくつくつと喉を鳴らす。
「はっはっは、飛んで帰れって? 良いけど、屋根の破損が余計に酷くなるかもよ?」
「じゃあ、修理して帰って下さい。そして、金輪際この家に入れないよう結界張りますので、次来た時には黒焦げになる覚悟でどうぞ」
「扱いが酷い。そんなに嫌われるとはなぁ……。求婚した訳じゃないんだから、そんなに拒否しなくて良くない? ま、嫁いでくれるなら、それはそれで嬉しいけれど」
「兄さーん、リィタ連れて来てくれるー? はむはむの刑に1週間処されたいってー!」
「待て待て待て! スライムだけは止めてくれ。あれは流石の俺も、ダメージ食らう」
慌ててファイルを閉じ、立ち上がるウィリアムに私は目を瞬かせる。
ほう、やはりスライムに取り込まれるのは誰でも嫌な様だ。喜ぶ奴も中にはいそうだけど、大体そういう奴は、水属性だったり、海洋生物に縁ある奴だったりするんじゃないかな。ま、全部私の憶測だけど。
「始まりの能力者の血筋なら、大抵の事ならダメージ受けないんでは?」
「そう思うだろ? 実はそうじゃないんだよ。原初の能力は変化に弱いって言えば、何となく分かるかね」
変化、と私が呟けば、ウィリアムは頷きを返してくる。
この世界を巡る魔力から五大元素の魔法は生まれた。その中でも、風魔法は始まりの能力者が使い、この世界を生み出し統治したとも言われている。最初の生命は暴風の中から産み落とされた、とも。
その流れなのか、やたらとこの世界は風の魔法が重宝される。それは、今この若きウィリアムが統治して、世論を抑え込めるだけの圧力がある事も意味していたりもする。彼がもし、違う属性の能力者だったなら、世界の統治者になっても直ぐに戦禍が再来していただろう。
そんな事を脳裏に過ぎらせ、私は首を横に傾けた。
風は五大元素の上にある。んで、他の四元素も上位魔法の位置にはいる。でも、長き3000年の歴史の中で、魔法技術は発展し、様々な属性魔法が生み出されてきたんだよね。ほら、戦ばかりの世界だったから、否が応でも発展しちゃうっていう。
「変化に弱いって、つまりはアレですか。副属性と掛け合わされて生み出された魔法が苦手とか」
「うん正解。五大元素能力者は大体そう。だから、副属性や別属性の者を傍に置きたがる。俺が君を見初めたのも、それが理由だ」




