これからも、兄妹で、家族だもん
荒ぶる感情をどうにか落ち着かせた兄はすっきりした表情をしていた。悟りを開いたのか、開き直ったのか、何方かはわからないが、少しは楽になったんだと思う。
吐き出してしまったっぽいしな。……全て、吐き出したんだよな??
「一応聞くけど、今世では創作活動してないんだよな?」
「……う、うん! 読ませる相手も売る相手も、いないしね!!」
少しの間の後、にっこり笑みを浮かべる兄だが、何だか怪しく見える。これは聞くべきか? 聞いた方が良いのか?
ま、まあ、深堀りしても、碌な事にならなさそうので、一先ず隅に置いておこう。本題に移るか。
「で? 何で私達は此処に来たわけ? 自称神様は、手違いだっつーってたけど」
私の問いに兄はゆるりと顔を上げると、同意を示すように頷きを返した。
「僕もお兄ちゃんと変わらない理由だよ。間違いで殺しちゃったから、此処で楽しく暮らしてね〜って。まさかお兄ちゃんまで来るとは思わなくて、びっくりしたけども」
「マジか」
「残念ながらマジだね。因みに戻る方法も色々試してみたけど、効果なかった。転移とか、ただの地図移動みたいなものでしかなかったよ……」
兄のまさかの言葉に私は思わず目を瞬かせた。
地域の相談役を任されるだけあって、兄の知識は豊富であり、魔法にも長けている。その兄が白旗を上げるのだから、これはかなりの難題みたい。
「やっぱり、此処で暮らしていくしかないのか……」
「えっ、お兄ちゃんは帰りたいの?」
「楽しんではいたけどさ、兄の話聞いてたら両親のその後が心配になってきたんだよ。喧嘩ばっかしてそうで」
「ああ、ありそう……」
我が強い2人が残って、中和剤だった私達がいないのだ。結果は言わずもがな、荒れてるであろう事が容易に想像出来る。
「んー、僕的には大丈夫だと思うよ。むしろ、母さんが障害なくなってすっぱり離婚しそう。知ってた? 母さん達って1回離婚して、またくっついてんだよ」
「えっ!?」
本日、何度目か分からない驚愕の事実。
まじかぁ、離婚して再婚して、今があんの? ああ、もしかして時期的に満達が小さい頃か? つまり、満と小牧がいたから、夫婦でいたのか、母さんは。あーあー、なるほどね。父さんに愛情は既に失せてた訳だ。子供を育て上げる為に我慢してた。なら、それが外れたのなら、やることは決まっている。
何も知らなかった満としては複雑だ。だけど、それを止める権利、満にあっても今の私にはない。幸せを願うばかりだ。
「何にせよ、母さんは幸せになってほしいかな」
「そうだね。苦労してきたから、幸せになるべきなんだよ」
互いに顔を見合わせ、思わず笑みを溢す。前世とは似ても似つかない姿。でも、エルフとして産まれ、現在を生きている。前世では途中退場したけど、今世は長命種だし、長生きは出来そうだ。そう、何事もなければ。
そうぼんやりと思っていれば、兄が勢いよく立ち上がった。その反動で思わず私の身体が後ろに下がる。
「母さんもだけど、お兄ちゃんも幸せにならなきゃ。今世では、僕がお兄ちゃんだし! 色々と任せて!!」
ドヤァ! と胸を叩いて、宣言する兄に自然と笑みが溢れる。今迄の生活でも結構幸せに暮らせていたのだが、それを知らないようだ。
「私だけ幸せになっても意味ないだろ。幸せになるなら、お前もだよ、兄さん」
そう言ってにっこり笑みを浮かべれば、兄の表情が真っ赤に染まる。
うーん、イケメンの赤面も絵になるなあ。うん? 感想がおかしい? ごめんよ。
「〜〜ッ、嬉しいけど! お兄ちゃん、今世は可愛い可愛い女の子なんだから! 言葉遣い、いつものように! して!! オレっていうのも禁止ぃ!」
「お前見てたら、ついついこの口調になるんだよ。仕方ねえな。……コホン、んん、これで良いかな、兄さん」
「うんうん、それで良し! なら僕もいつも通りに話すかな。前世の話をする時以外はいつも通りにいこう! これからも宜しくね、リティシア」
「了解。此方こそ、よろしく。ギルノール兄さん」
何はともあれ、生きていくしかないなら、兄妹として、家族して、やってくしかないよね。
過去と現在の記憶も合わさって、また頑張っていこう。そう誓いを新たに、私達は固い握手を交わした。
あ、スライム達のこと、すっかり忘れてた。お腹空き過ぎて、分裂してないと良いけども……




