性癖かあ。そっかあ、趣味はいいけど程々にね
前世の家族に対するあれやこれを口にしながら、兄ときちんと話をする事が久しぶりだった事に気付いた。
あれ、ほんとにいつ話したっけ? 正月ですら、新年の挨拶ぐらいで直ぐに実家を離れた気がするな。雑談すら、交わしてこなった日々が長かったことを今更ながら思い出す。
思春期に入ってから、ほんと毎回毎回睨まれていたことがあったと思うんだが。あれ、ちょっと待てよ? なら、何で今はスムーズに会話が出来ているんだ?
私の勘違いだったのか?
……確認、してみるか。
「なあ、お前は満を嫌っていたんじゃなかったのか?」
「はっ!? 小牧がお兄ちゃんを? なんで!?」
心底驚いたとばかりに声を上げる兄に私は首を傾げる。おっと? これはすれ違っていた予感がするぞ。でもなあ、実際色々と被害受けてはいたんだよ。
「何でって、兄は満を毛嫌いしてただろ? 睨んだり、返事返さなかったり、姿見たら逃げてったりしてさ……」
私の指摘に兄の動きが止まる。感覚にして、数秒の間の後、ザッと表情を変えた。それは今世では始めてみる兄の焦った姿だった。
「……あっ!? ああああ……、あれかあああ……、うんまあ、アレは観察してたというか! 妄想してたというか! お兄ちゃん達のカップリングものを脱稿したばかりで、脳内が騒がしくて直視できなかったというか……ッ!!」
おいおい、早口過ぎて何言ってるか、全く分からないんだが?
「よく分からないが、満は嫌われてねえの?」
「むしろ、大好きで原稿作成にめっちゃお世話になりましたけど! お兄ちゃんと稔くんいなかったら、小牧は、あんなに生き生きと描けなかったしぃ! お兄ちゃん達様々で、小牧の活動は潤ってたんだから!!」
ちょっと待て。かろうじて聞き取れた原稿と稔という名前。もしかしなくとも、兄は同人作家をしてたのか?
いや、この反応はしてたな。部屋にやたらと引き籠もっていたのはそれかぁ……。即売会とか行った事はないが、知識はそれなりにあるんだよなあ。
さて、問題はここからだ。
「なあ、どんな作品書いてたんだ?」
「えっ!? けっ、健全な男の友情青春ストーリー物だよっ?」
「ほう? あの女顔の稔と体格の良かった満の友情モンねぇ? お前、ベッド脇の本棚に結構隠してたよな。BL漫画」
「えぇっ!? ちょっと、何で知ってるの!?」
別の意味で慌て出す兄に意味深な笑みだけを返す。アレを捜し当てたのは実は満じゃない。何を隠そう前世で全幅の信頼を寄せていた母である。
そう兄に告げれば、床に手をつけ座り込んでしまった。まあ、気持ちは分かる。私もエロ本見つかったら平然としてはいられないと思うから。これはあくまでも、満の感情で私の感情ではない。ないったらない。
「……私の性癖バレとか、ほんとないわぁ……頼むから、燃やして捨てててよぅ……小牧の死後、PCにあった、ヤバいネタもののを見られてる可能性もあるとか、知りたくなかったな……!!」
不穏な単語が聞こえてきたが、私は知らん。何も知らない。今世はまだ幼いエルフなんだ。深くは追求したくない。色々と自爆しそうで怖いからな!!




