第6話 失踪:行方不明:神隠し(元の世界)
昼下がりのオフィス。応接室には、五次携太の上司と同僚が数名座っている。
向かいに座る刑事は50代くらい。整えられた髪には白髪が目立ち、無精髭が疲れた表情をさらに際立たせている。手帳を開く仕草もどこか気だるげだ。
「五次さんは、どのような人物でしたか?」
刑事がゆっくりと尋ねた。
「真面目でしたよ。いつも遅くまで残って仕事をこなしていました」
上司が答えた。
「失踪しそうな雰囲気はありましたか? 悩んでいたとか、様子がおかしかったとか」
「全くなかったです。いつも通りでした」
同僚の一人が首を振った。
「無断欠勤が数日続いたということですが、それまでそういうことは?」
「一度もありません。だからこそ、おかしいと思って……家を調べに行ったんですが、誰もいなくて。連絡もつかないので、警察に連絡しました」
上司が心配そうに言った。
刑事は手帳にメモを取りながら、考え込んだ。
(やはり失踪ではないのかもしれない……)
その時、刑事の携帯が鳴った。
「では、どうも。失礼します」
刑事は会釈をして、部屋を出た。
廊下で電話に出る。
「どうだ? 何かわかったか?」
電話の向こうから、若い男の声が聞こえた。テキパキとした口調だ。
『いいえ、暴れた形跡などもありません。コンビニで買ったゴミがテーブルの上に置いてあるだけです』
「そうか……」
『夜食を食べた後のようです。洗濯機に濡れたバスタオルが入っていたので、風呂にも入った様子。就寝前だったんじゃないかと思われます』
「ふむ」
『ただ……今わかっている限りでは、財布は置いたまま。携帯が消えています』
刑事は眉をひそめた。
「やはり……例の行方不明と関係がありそうだな」
『例の……ですか?』
「ああ。過去にアソコに関わっていたことも確認取れているしな」
『なるほど……』
「もう少しだけ詳しく調べてみよう」
『はい』
刑事は電話を切り、窓の外を見た。
昼間の東京は、いつも通り慌ただしく動いている。
だが、五次携太はもう、この街にはいない……。




