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召喚余剰人員の為、魔王は任せて異世界満喫?!  作者: -冬馬-


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第19話 救いの手:カーバンクル:重い口

 癒月草が生える岩場の縁。


 足元は握り拳ほどの石がゴロゴロと転がり、岩の割れ目から低い木と茂みがしがみつくように生えている。


 その奥に――


 小さな生き物がいた。


 額に、虹色の宝石を持つ、茶色の小さな魔物。


(……昨日の、あいつと同じだ)


 色合いは違う。


 だが、額の宝石と、猫ほどの体躯たいくは同じ。


『該当する魔物は、カーバンクルです』


 オラクルの声が、落ち着いた調子で告げた。


(カーバンクル……!)


 携太は息を呑んだ。


 カーバンクルは再度炎の弾を放ち、目の前のゴブリンを撃ち抜いた。


 二匹目が倒れ、残りの二匹が怯んで距離を取る。


 二匹は左右へ散り、距離を取りつつカーバンクルを警戒した。


 携太は、どうしたらいいのかわからず固まってしまっている。


 その時。


 ドン、と鈍い音がして、右肩に衝撃が走った。


「いっ――!」


 遅れて、肩の奥に重い鈍痛が広がり、携太はよろめく。


 反射的に右腕を上げて、木にもたれようとするが、うまく上がらず左手を木について堪えた。


 足元に落ちて転がった拳大の石を見て、ゴブリンが投げてきたのだと気づく。


 投擲に切り替えたようだ。


(くそ、見てなかった……!)


 次の石が来るかもしれない。


 そう身構えた瞬間――


 横の茂みから、ミントカラーの小さな影が飛び出してきた。


 昨夜、魚をあげた、あのカーバンクルと同じ色。


 額の緑の宝石が、ふわりと光り始まる。


 次の瞬間、携太の肩が緑色の光に包まれた。


 肩の奥に居座っていた鈍痛が、芯からほどけるように抜けていく。


 さっきまでの重さが嘘みたいに遠のき、肩が軽くなった。


「……え?」


 携太は恐る恐る右腕を上げてみる。上がる。


 さらに肩をぐるりと回して確かめても、痛みはない。


 二匹のカーバンクルが尻を寄せ合うように並び、左右のゴブリンを正面から牽制した。


 その間には、倒れたゴブリンの亡骸が二つ、転がっている。


(カーバンクル側には回復役と、攻撃役がいる……)


 ゴブリンたちは、これ以上の戦いは不利と判断したのか、踵を返して逃げていった。


 静寂が戻る。


 携太は、呆然と二匹を見つめた。


「……助けてくれたのか」


 二匹は、じっと携太を見つめている。


 敵意はない。


 それどころか――


 ミントカラーのカーバンクルが、ゆっくりと近づいてきた。


 茶色のカーバンクルも、その後に続く。


 そして――


『だいじょうぶ?』


 声が、聞こえた。


 鼓膜ではない。頭の内側に、オラクルと違う声が直接響いてくる。


 携太は思わず息を止めた。


「誰の……声?」


『聞こえるの?』


 ミントカラーのカーバンクルが、驚いたように耳を立てた。


『本当に? 声が聞こえるの?』


 携太は喉の奥が乾くのを感じながら、二匹を見つめた。


『現在、ペット機能が有効です』


 オラクルの声が割り込む。


『条件は「対象があなたに信頼を寄せていること」。その場合、意思疎通が可能となります』


(ペット……?新しいアプリか)


 携太は混乱しながらも、昨夜、魚を渡した場面を思い出す。


(魚をあげただけで……信頼されたのか?)


 二匹が首を傾げたのを見て、携太は返事を返していないことに気がついた。


「あ、ごめん。混乱してて返事が遅れた。……聞こえているよ」


 携太は、その場で座って話すことにした。


『すごい!人間と話すの初めて!言葉も理解できる!』


 茶色のカーバンクルが言った。


『あなたは、他の人間と違うと思ってたけど、あたりね!今、頼れるのはあなたしかいないと思っているわ』


『昨日の夜、姉ちゃんが悪い人じゃないって言ってたの納得したよ』


『あの……、また魚貰えないかなってついて来てたの』


「ああ、やっぱり君が昨日の……」


 携太は、ミントカラーのカーバンクルを見た。


「あの魚を二人で分けるために、咥えて去ったんだね」


『弟は人間に怯えているから、私だけが近づいたの。お腹すいてたから……本当に助かったわ』


「姉弟なんだね。でもさっきの動きを見ていたら、自分たちでも食料は手に入りそうだけど」


『昨日は弱っていたから、あなたのくれた魚を食べるまではね』


 姉は、少し顔を曇らせたように見えた。


『あの魚で魔力が回復して、弟の怪我を治せたの』


「……ちょっと待って」


 携太は息を整えながら、二匹を見た。


「君たち、なんでそんなに弱ってたんだ?」


 携太は、二匹を交互に見た。


 二匹は、少しの間顔を見合わせ沈黙した。


 やがて、姉がこちらを向いて重い口を開いた。

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