第18話 魔導ローブ:癒月草:遭遇
すでにしばらく歩いてきたが、寒さ対策の為にローブが欲しいなと携太は考えた。
(そういえば……通販アプリ)
異世界のアイテムを扱っている、スマホの通販アプリ。
異世界の商品はイエンで買えるが、購入できるのは今滞在している国の商品に限られているらしい。
携太はアプリを開き、商品一覧を眺めた。
【魔導ローブ】
【夏冬両用。魔力により、夏は冷んやり、冬は暖かくなる高機能ローブ】
【価格:30,000イエン】
(三万……)
携太は、一瞬ためらった。
決して安くはない。
でも、今朝みたいに凍えるのはもう嫌だ。
それに、夏にも使えるなら長く使える。
(食費は善行ポイントでもなんとかなるし……よし、買おう)
決心して、購入ボタンを押した。
画面に「購入完了」の文字が表示され、すぐにアイテムボックスに魔導ローブが届いた。
【魔導ローブ】
取り出してみると、漆黒のローブが現れた。
手触りは滑らかで、軽い。
羽織ってみると――
じんわりと、温かい。
魔力が流れているのか、体温に反応して、ちょうど良い暖かさに調整されていく。
「これは……いいな」
満足げに頷いたが――
(よし、今日はできる限り採取して売ろう! たくさん取ってこないと)
携太は、気合を入れ直して、これまでの街道を外れ、森へと足を踏み入れる。
◆
癒月草の採取は、思ったよりも順調だった。
クレアが教えてくれた通り、川沿いの岩場に、青白く光る草が点々と生えている。
川はさらさらと音を立て、冷えた水気が肌にまとわりつく。
足元の石は苔でわずかに滑りやすく、踏み外せば川にドボンと行きそうだった。
携太は膝をつき、草の根元に指を差し入れる。
葉は細長く、触れるとひんやりしていて、淡い光が指先を透かした。
(これが癒月草……)
根を傷つけないよう、そっと摘み取る。
一つ、二つ、三つ……
摘むたびに、わずかな薬草の匂いが立ち、指先に青白い粉が残った。
次々と摘み取っては、念じてアイテムボックスへ収納していく。
石の上を移動しながら探すせいで、腰とふくらはぎがじわじわ重くなってきた。
依頼では本数は決まっていなかったが、携太はキリのいい数字を目標にした。
「ふぅ……これで、五十本目」
川面を見上げると、光が反射してきらりと眩しい。
太陽はまだ高いが、風は冷たく、ローブの中まで入り込んでくる。
携太は念じて、アイテムボックスの表示を確認した。
「……ん? 癒月草が、×45とD×5?」
『それはアイテムの品質、ランクを表しております。基本のノーマルがE。上はSまで存在します』
オラクルがいてくれて助かる。鑑定スキルを持った商人などにしか分からない情報らしいが、品質次第で効果や合成品の出来にも影響するという。
「待って。なんでDが混ざってるんだ? いい品質が手に入る条件って――」
ガサッ。
横の茂みから、何かが飛び出してきた。
緑色の肌。鋭い爪。醜悪な顔つき。
ゴブリンだ。
「うわっ!」
携太は反射的に後ろに飛びのいた。
ゴブリンは一匹ではなかった。
二匹、三匹――合計で四匹。
彼らは携太を取り囲むように、じりじりと距離を詰めてくる。
(やばい……!)
夢中になりいつの間にか魔物の生息地まで足を踏み入れていたのかもしれない。
冒険者ギルドで武器は買っていない。
戦闘経験もない。
このままでは――
『品質の件ですが――周囲の魔力濃度が、素材の品質に影響する可能性があります』
(今それ言う!?)
怒鳴りたいのを飲み込み、携太は歯を食いしばる。
(ってことは……さっきDが混ざってた時点で、近くに“魔力の原因”があったってことだろ……!)
(早く言ってくれよ、その情報……!)
一匹が、飛びかかってきた。
携太は咄嗟に後ろへ跳んで避けた。
だが、攻撃手段がない。
(くそっ!どうする……)
その瞬間。
炎の弾が、横から飛んできた。
ドンッ!
炎の弾がゴブリンに直撃した。
ゴブリンは後ろへ吹き飛んでいき、木に激突してずるりと崩れ落ちる。
死んでいるようだ。
「今度は……なに?」
携太が驚いて振り向くと――




