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召喚余剰人員の為、魔王は任せて異世界満喫?!  作者: -冬馬-


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第10話 お披露目:召喚の代償:ぐぅぅ

携太はスマホの能力を理解し始めていた。


その時、部屋の扉がノックされた。


コンコン。


携太は慌ててスマホを消した。


「携太さん、起きてますか?」


エレナの声だった。携太は安堵の息をついた。


「起きてるよ、入って」


携太が返事をすると、扉が開いた。エレナが顔を覗かせる。その後ろにはバルトもいた。携太は二人の姿を見て、さらに安心した表情を浮かべた。


「おはようございます、携太さん。昨夜はよく眠れましたか?」


バルトが穏やかに尋ねた。


「ええ、よく眠れました。ありがとうございます」


携太は二人を部屋に招き入れた。エレナは目をキラキラさせながら、携太の顔を見つめている。


「すみません、まだ朝の7時前なのに……」


バルトが少し申し訳なさそうに言った。


「昨夜はあの板のことが気になって、正直あまり眠れなくて……」


「私も! ずっと気になってました!」


エレナが元気に言った。


「さっき、携太さんの部屋から声が聞こえた気がして……起きてるのかな?って」


携太は少し驚いた。オラクルと話していた声が聞こえたのだろうか。いや、オラクルの声は自分にしか聞こえないはずだ。おそらく自分の独り言の様に漏れていたのだろう。


「ああ、起きてました。ちょうど板のことを確認してたんです」


「それで……その板のこと、教えてくれるんですよね?」


「ああ、約束したからね」


携太はベッドの上に置いていた甚平を手に取った。


「まず、これを見てください」


携太が甚平を広げると、エレナとバルトの目が丸くなった。


「あれ……? 昨日持ってたのは1着でしたよね!?」


エレナが驚きの声を上げた。昨夜は1着だった甚平が、今は3着になっている。


「今朝、起きてから試したんだ。そしたら、板の力で複製できたんだよ」


バルトが甚平を手に取り、じっくりと観察した。


「これは……同じ物ですね。縫い目も、生地の質感も全く同じだ」


「すごい……」


エレナが信じられないという顔で呟いた。


「他にも見せますね」


携太はスマホを手元に出現させた。


「携太さん、その板……昨日のは偶然でなく、意図的かつ無詠唱で出現させられるんですか?……」


バルトが驚いた様子で尋ねた。


「ええ、必要な時に出現させて、不要な時は消すことができるみたいです」


携太はエレナの方を向いた。


「エレナ、ちょっとそこに立ってくれる?」


「え、私?」


エレナが不思議そうな顔をしながら、少し離れた場所に立った。携太はカメラを起動し、エレナの写真を撮った。音は聞こえていないはずだが、板を構えたかと思えば下を向いている。


「今、何かしましたか?」


バルトが携太に尋ねた。


「写真を撮りました。エレナの姿を絵として記録したんです」


「絵として記録?」


バルトの頭の中には疑問が渦巻いているが、今は黙って見守ることにした。


携太は写真フォルダを開き、エレナの画像をタップした。大きめの「編集」という文字がポップアップ表示される。それをタップすると、色調整のメニューが出てきた。


「今から、エレナの服の色を変えてみます」


携太はエレナのオーバーオールをタップし、色を青から赤に変更した。編集を完了させると……。


「え!?」


エレナが自分の服を見て、驚きの声を上げた。青だったオーバーオールが、一瞬で鮮やかな赤に変わっていた。


「す、すごい……! 本当に色が変わってる!」


エレナが興奮しながら、自分の服を引っ張って確認している。バルトも驚いた表情で、娘の服を見つめていた。


「本当に……すごいな」


「その色は気に入った? 青が良ければ戻せるよ」


「いいえ!! この色のままでお願いします!!!」


エレナはよほど気に入ったようで、嬉しそうに部屋の中を軽やかに歩き回っている。


バルトは腕を組み、真剣な表情で携太を見つめた。


「携太さん……その板は、個人専用の魔道具ですか?」


「たぶん、そうだと思います。俺にしか使えない」


「個人専用の魔道具なんて、聞いたことがありません」


バルトの声に、わずかな警戒が混じった。


「一体……貴方は何者なのでしょう?」


携太は少し考えた。ここまで見せてしまった以上、二人を信頼するしかない。そう決心して、二人の目を見て答えた。


「……実は、異世界召喚で来たんです」


一瞬、部屋の空気が凍りついた。


「異世界召喚!?」


エレナとバルトが同時に声を上げ、慌てて自分の口を塞いだ。二人の顔は青ざめている。


「ええ。どこの国で召喚されたかは…記憶が曖昧ですが」


携太は慎重に言葉を選んだ。


「この国で召喚の儀が執り行われていたとしたら心臓が止まるところでした」


エレナがホッとしながら言うのを見ると、召喚というものが本当に忌むべき行為なのだとわかる。


バルトは深刻な表情で口を開いた。


「……召喚は禁術のはずですが」


「そうみたいですね。なぜなんですか?」


「召喚を行うと、どこかで大きな災害が起きると言われています」


「災害……?」


「天災だったり、魔物による災害です」


バルトは窓の外を見た。


「召喚と災害のタイミングが、関連付けできるほど近いらしいんです。今この国が静かだということは、災害はこの近くでは起きていない。しかし……」


「どこかの国や地域が……」


「ええ。その可能性があります」


エレナが小さな声で言った。


携太の顔が青ざめた。自分が呼ばれたせいで、どこかの国が被害を受けているかもしれない。その可能性に、胸が締め付けられる思いだった。それと同時に、この国への不信感も現れていた。


「もしそうなら、その国の人たちは……召喚した国を恨みますよね」


「そうです。ですから、この国が召喚してなくて良かったとエレナは安心したんです」


バルトの言葉に、この国の召喚であることを隠していることが心苦しく感じた。


「召喚されて来たことは、絶対に伏せてください。貴方の命に関わります」


携太は息を呑んだ。事態は思っていた以上に深刻だった。


(黙っていてこの国が大丈夫なのだろうか。今は様子を見よう。この国が召喚を行わなければならなかった理由もわからないしな)


「だから、携太さん」


バルトが続けた。


「その板の力も、慎重に使っていきましょう。特に出現の仕方には気をつけてください」


「よく分かりました……。死にたくありませんので……気をつけます」


そんな真剣な話をしている中、静かな部屋に音が響いた。


グゥゥゥ……。


携太のお腹が盛大に鳴った。


「あ……」


携太の顔が赤くなった。重苦しい雰囲気が、一瞬で和らいだ。


エレナがクスクスと笑った。


「お腹空いてるんですね!」


「そういえば、昨日は何も食べてないんです……」


バルトが困った顔をした。


「申し訳ありません。うちでは食事を提供していなくて……」


「市場に行きましょう!」


エレナが明るく提案した。


「私、一緒に行きます! 美味しいお店、教えますよ!」


「本当に? ありがとう!行こう!」


携太が作った笑顔には、まだぎこちなさが残っていた。


「じゃあ、準備ができたら出かけましょう」


エレナが嬉しそうに言った。


異世界での2日目の朝。召喚という行為の重さを知った携太だったが、今は気分を切り替えて市場に向かうことにした。


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