36:私が聞きたいわよ
ふっ、ふはははっ。
まさかねぇ、こんな所でスキルの素手が役に立つなんて誰が思うのよ!
しかも相手はオウルベアよオウルベア。2mくらいの魔物よ!一応は熊よ!
熊と素手で戦うとか誰が予測できるのよ!
朝から別行動をとって3人共狩りへと出掛けたのよ。
私は川で網を仕掛けた後森へと入って罠を仕掛けていたのよね?
仕掛けるのにちょうどいい場所を見つけたからしゃがんだわけよ。
そしたらね? ポヨンと何かがお尻に当たってね?
なんだろうかと確認したらオウルベアだったのよね、ハハハ。
いつのまに現れたのよ、さっきは居なかったじゃない!と文句を言ってもどうにもならない訳で・・・
こんな事なら鉈は包丁でも持ち歩くべきだった・・・
嘆いても仕方が無いから戦うわよね。
スキルのお陰で素手でもなんとかなったけども!
咄嗟にヘッドロック掛けてグリグリしたけども!
獣人でよかったわよ、これ人間のままだったら絶対無理だったわよ。
勿論オウルベアの反撃も喰らったけど、さすがは猫科のボブキャット。
クネクネと柔軟に避ける事が出来てちょっとだけ感動したよね。
そして倒し終わって気が付いた。
私斧持ってたじゃーんっ! チーンッ・・・
娘ーー!
おかんオウルベアと遭遇したよ!ほら、アンタがやってたドラ〇エにも出て来る様なやつ!
しかもさ、おかん素手で倒しちまったよ、凄くない?
いや、娘なら素手で戦おうと思うなとかいいそうだ・・・
そう言えば、娘は今いくつになっているんだろうか。
時間の流れが違うと言っていたし、もしかしてヨボヨボのおばぁちゃんになってたり?
うわぁ、想像できない!
おっと、そうじゃなくて解体しなきゃ。
待って、オウルベアってどうやって解体するんだろう。
普通に熊と同じでいいんだろうか・・・
解らないから内臓だけ抜いて持ってかえ・・・れないね。無理だね重そうだもの。
誰か居ないかな、カムイー! ノワールー! クィーン! 聴こえないかな?
『 グルルルゥ クァークワックワッ 』(何でここに居るの?)
ぶっ、ペルル? 何でここにとか私が聞きたいわよ。
え? ここがペルルの避暑地? そうなのね。
なんという偶然なんだろうか・・・
それで何してるのかって?
いやね、私たち此処に引っ越してきてね。
オウルベアを偶然倒したのだけど、持って帰れなくて困ってるのよ。
仕方が無いから運んでくれるって?
え? 大丈夫なの? ペルルって割と小柄よね?ペンギンとしてはデカイけどもさ。
任せろと言うので任せてみる。
少し離れていろ? はいはい・・・
フンッ! メキメキメキッ ボコッ
ちょ・・・ どこから出て来たその筋肉・・・
いーやぁー、マッチョなペンギンてなんか気持ち悪いわよ!
自分でもそう思う? だから普段は隠してる? ああ、そうなのね。是非そうしていただきたく・・・
こうしてペルルのお陰でオウルベアを持ち帰る事が出来たのだけど、ムキムキマッチョなペルルを見て居合わせた全員が何とも言えない微妙な表情になったのは仕方が無い事だと思うの。
ペルルは次から運びやすいようにソリでも持って行くようにと言い残し森へと帰って行った。
そうか、ソリがあればなんとかなるかも?
ニクス兄さんもオウルベアを仕留めて帰って来た。
兄さんが狩ったオウルベアは3mくらいあった。デカッ。
そして捌き方を教えて貰った。
胸元の羽毛?が防寒具になるから捌く前に毟り取るらしい。
なるほど、ぬるま湯を掛ければ毟りやすいのね。覚えておこう。
ルナーさんはトナカイを2頭仕留めて帰って来た。
発情前の雄で脂がのっていて丸々としていた。
まだまだ足りないから明日からも頑張ろうと思う。
翌日はまず川に仕掛けてある網を確認しに行った。
「 ・・・ 」
『 ・・・ 』
なんでアンタが掛かってるんすかね、ペルルさんや・・・
え? 大漁になるよう網に追い込んでいたら勢い余って自分も絡まった?
いやほんと、なにやってんすかね・・・
ゆっくりとペルルに絡まった網を解いて行く。
以後気を付ける様に・・・
とはいうものの、ペルルが追い込んでくれたお陰でかなりの量が獲れた。
サケが20匹にパイクが34匹。
1世帯に付き1匹ずつ配れそうだ。内臓だけ取り出して後は各家庭でやってもらおうかな。
罠も見に行かないといけないし、全部を捌いてられない。
手早く内臓だけ取り出していく。残念ながら卵持ちは居なかった。
12世帯分の計24匹を町長さんに届けて分配をお願いしておいた。
急いで森の罠を見てまわらないとね。
マスクラット5匹、トガリネズミ11匹が掛かっていた。
急いで戻って捌いて行く。
マスクラットの毛皮は手袋に使われるので丁寧に剥がしていく。
トガリネズミの皮は使い道がないだろうと思っていたのに、財布代わりの巾着に仕えるらしい。
ならばとこちらも丁重に剥がしていく。
夕飯に使う肉以外は干しておけばいいからね。
一定量集まってから村長さんに渡せばいいだろう。
次の日以降も順調に肉や魚は集まった。
魚はほぼペルルのお陰だと言ってもいいだろう。
あの後も手伝ってくれていたみたいだ。(本人はコッソリのつもりらしい)
ニクス兄さんはビックマウンテンを3体も狩っていたので町の人達には行き渡る量になったと思う。
ルナーさんもビックアントラースやヘラジカ、イッカクも狩っていたので大活躍だ。
片足が義足だとは思えないよね。
あの足なんとかならないかなぁ、せめてもうすこし性能のいい義足があればいいのに。
薪用の丸太もかなり集まっていた。
カムイとノワールが頑張ってくれたようでありがたい。
魔蜂達も蜜や果物を集めてくれている。
ミントも見つけたみたいで、たっぷりと集めてくれていた。
これで忌避剤が作れるね。
ん? 作っても大丈夫だろうか・・・
この国なら人族との関り無いし大丈夫よね?大丈夫って事にしよう。
作り方は簡単。
ミントの葉と唐辛子をグツグツ煮込んで冷ました物を撒くだけでいいんだよね。
ただこれはあくまでも鼠用。虫よけ効果も少しあるかな。
食料保管室や燻製室の周りに撒いておけばいいので、出来上がったら小分けして配布して貰おうと思う。
全員分の家が完成した頃には夏の終わりになっていた。
手伝ってくれた町の人達にはお礼として燻製肉を1塊ずつ渡し喜んでもらえた。
お礼にと渡したのだから気にしなくてもいいのに、皆さん燻製肉の礼だと言って自分の畑で採れた野菜や穀物なんかを持って来てくれた。
お礼のお礼って・・・キリが無くなりそうなので日を置いてまた改めてお礼をしようと思う。
明日からは荷を運び入れて、自分達の冬支度をしないとね。
クィーン達の分を考えるともう少し多めに欲しい。
それに、この町ではお店での買い物も物々交換の方が喜ばれるみたいだし。
オンス父さんもバパールおじさんも狩りは久々だと言っていた。
リックス兄さんは教会の仕事をのんびり始めるらしい。
本格的な冬が始まるまで頑張らないとだね。
なんだかこの世界に来てから平穏な日々が少ない気がするのは気のせいだろうか。
でもきっとこれからは平穏な日々が続くと信じたい。
読んで下さりありがとうございます。




