35:苦手なのよ
家へ戻った後、魔蜂達にもどうするかを聞いてみた。
ここよりももっと北へ行く訳だから寒さ的に体がキツイかもしれないし。
もし北が嫌だったら他の地域に移住する人達へと頼むのもありかもしれない。
(勿論一緒に行く)
(クィーン達と一緒にいれば大丈夫)
(また温かい部屋作ってね)
(お花もよろしくね)
(でもあの変なお花はいらないわよ)
((( ねー )))
うん、火周りは私も要らないから・・・
折角建てたし改装もしたし、このまま持って行ければ良かったのにな、もったいないけど無理なので諦めるしかないよね。
そう思ったのに、ドワーフさんが分解して運んで移築すればいいと言い出した。
分解して運ぶと言ったって結構な量になるし大変だと思うんだけど・・・
「心配はいらんぞぃ。
儂等ドワーフはな、収納魔法が使えるから楽に物を運べるのだよ」
「収納魔法、それは便利そうですね」
とは言え収納量にも上限があるだろうに大丈夫なのか聞いたら、私達の家10件分の素材は入るそうだ。
ニクス兄さんと2人で羨ましいねと話した。
それだけ収納出来るならと家の移築をお願いする事にした。
他の人達は築年数も古いし家の移築はしないのだそうだ。
そしてドワーフさんほどの容量ではないけれど、魔族の人達も収納魔法が使えたり収納鞄を持ってたりするらしい。
えぇぇ、いいなぁ。魔国へ行けば売ってたりするのかな。
収納鞄があれば狩猟や採取でも便利そうだよね。
荷造りを終えて、移動の日になった。
総勢32人で隊列を組み国境を越えていく。
最後の一人が国境を越えると門が閉じられ、その門は岩壁へと変化していった。
その岩壁を覆う様に茨が現れて絡まって行く。
うわぁこれ絶対乗り越えられないし、壊す事も難しそうよね。
「下手にあれに手を出せば食われるだけさ」
え?あれって食虫植物ならぬ食人植物なの?!
元々は魔物だったのを魔王様が飼いならした?
えぇぇ、魔物って飼いならせるの?
いや、飼いならせるか。だから魔馬だって飼えてたんだろうし魔蜂で養蜂も出来てる訳だし。
なるほど、一部の魔物だけだろうけど飼いならせば共存も出来るのか。
いいねそれ。
「さぁリュン。俺達はこっちだよ。移動を始めよう」
レザールさんに言われて場所を移動すれば・・・
うおぉぉぉっ、翼竜が居た。たぶんゲームとかだとワイバーンと呼ばれているようなヤツ。
うわぁ、格好良いなぁ。触ってみたいけど駄目なんだろうなぁ。
「リュン、触るも何もあれに乗って移動するんだ」
「 へ? 乗れるの?」
どうやら魔国は険しい山や荒れ地も多いらしく移動はもっぱらワイバーンなのだそうだ。
なるほど、荒れ地はともかく険しい山はクィーンやノワールでもキツイかもしれないね。
あれ? クィーンやノワール、カムイはどうやって移動をするんだろうか。
疑問に思っていると一際大きなワイバーンがひょいと3頭を咥えて飛んで行った。
「ニクス兄さん、気のせいかな。クィーンが一瞬仔馬に見えたんだけど」
「たぶん気のせいだろうが俺にもそう見えた」
「2人共しっかりしてくれよ。それだけワイバーンが大きかったのだろう」
わかってるよ、わかってるけどあのクィーンが仔馬に見えちゃったんだもの!
ワイバーンの大きさよりもクィーンの大きさの方が気になったのよ!
呆気に取られていると私達もワイバーンに乗る様に促された。
えーっと、これどうやって乗れば?
普通に跨ればいいって? 嘘でしょ無理だよ股裂けそうじゃないよ・・・
戸惑って居ればニクス兄さんにヒョイと抱えられて乗せられた。
そう、出会った時みたいに。
「支えているから心配するな」
「う、うん。解った。宜しく・・・」
ワイバーンはンギャァと一声鳴くと豪快に飛び立った。
ひぃぃえぇぇっ。
高い高い高い、寒い痛い寒い、そして早すぎる! ふぉぉぉっ!
と思った瞬間には到着していて、急降下で着地した。
ひゅっと口から何かが出て行ったような気がした・・・
「リュン、大丈夫か?」
「だいじょばない。腰抜けたかも・・・」
ジェットコースターみたいに足が付くぶんにはいいのだけれど、足が浮いているタイプは苦手なのよ。
そしてワイバーンさんや、急降下するなら先にそう教えて貰いたかった。
心構えがしたかったわよ・・・
ニクス兄さんに抱きかかえられたまま皆の方へ向かえば、レオノラ母さんもオンス父さんに抱きかかえられてた。
良かった、私だけじゃなかったらしい。
この町に移住する獣人は私達一家とルナーさんとバパールさんの7人でだった。
レザールさん達は元々住んでいた家が残っているらしい。
あのドワーフさんもここの出身だったようだ。
この町の町長さん、レザールさんのお姉さんが開いている土地へと案内してくれた。
町の北端にある土地は広くて綺麗に整地されていた。
「君達が来ると聞いてな、町人総出で整えたんだ」
「そうなんですか、申し訳ありません。ありがとうございます」
「気にする事はない。困った時はお互い様だろ?
それに狩人殿と司教様もいらっしゃると聞いたし未成人まで居るとも聞いた。
皆喜んで協力してくれたからね」
聞けばこの町には教会も無く、狩人も1人しか居なかったのだそうだ。
教会は家が決まればその横にでも皆で作ってくれると言う。
山にも森にも近くて、ちょっと行けば川もある。
綺麗に整地してくれてあるから、ここならクィーン達も過ごしやすそうだ。
「私はここで良いと思う。
と言うか凄く条件がいい場所だと思うけど、皆はどう思う?」
「俺もいいと思うぞ」
「そうですね。ここからでしたら日の出も見れそうですし。
兄さん達の東隣に教会兼住居を立てる事にしようかな」
「だったら僕はリュン達の南隣にしようかな」
「じゃあ私達は西隣にしましょうよ、オンス」
「ああ、そうだな」
「じゃあ僕はオンスの南隣、ルナーくんの西隣にしようかな」
場所が決まったので、少し離れた所へティピーを設営する。
この町には宿屋がないとの事だったので家が完成するまではティピー暮らしだ。
これはこれで楽しいので私としては歓迎である。
町長さんには家造りはこちらに任せてニクス兄さんと私は狩りをして貰えないかと言われた。
今まで狩人1人で12世帯分を賄ってきており大変なのだと言う。
夏ももう少しで終わってしまうし、自分達の分も狩らなければならないので引き受ける事にした。
ルナーさんも中型までなら狩れると言うので一緒に狩りをする事になった。
ここ等辺で狩る事が出来るのはビックアントラースにイッカク、ヘラジカにオウルベアにアングリーベア、グリズリー。
冬になればアザラシやトドが氷と共に川へとやってくるらしい。
他にも色々といる様で、特に制限は無く子連れや若い雌でなければ狩っても良いのだそうだ。
そしてマウス系はここでも報奨金が出るらしい。
この町の半数の人が農家さんらしく、マウスは天敵なのだとか。
確かに鼠は農家の天敵よねぇ。
鼠ってば厚かましくも寒いと家の中でちゃっかり暖取ってるのよ。
元の世界でも何度かご対面したわよ、炬燵の中で・・・
堂々と炬燵で暖を取る鼠ってどうなのよ、悲鳴よりも先に「は?」って声出たのも懐かしい思い出。
いやいや、今は思い出している場合じゃなくて。
取り敢えずはくくり罠を仕掛けて廻ろうかな。
後はミントを見つける事が出来たらそれで忌避剤作れるんだけどなぁ。
罠を仕掛けながら探してみようかな。
と言う事で翌日からニクス兄さん、ルナーさん、私の3人は冬に向けての食糧確保を担当する事になった。
ハッチたち魔蜂が森の中を散策しながら蜜を集めるからミントも見つけたら持って来てくれると言ってくれた。
カムイとノワールは薪集めを、クィーンは家造りを手伝ってくれるらしい。
メーとレーも小枝位なら集められるからと手伝ってくれる気満々だった。
うー&まーもリックス兄さんと頑張るらしい。
今度こそ平穏にのんびりと過ごせる安住の地となりますように。
明日からがんばるぞー!と思いながら眠りについたのだった。
読んで下さりありがとうございます。
本日は大晦日となりました。
皆様よいお年をお迎えくださいませ(*'ω'*)




