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30:目が合ってしまったじゃないか

夏が始まった。


私とニクス兄さんは冬の間に鞣した毛皮や作ったアクセサリーなんかを町へと売りに行く。

これらはギルドの認定を受けた行商人が買い取ってくれるのだ。

手を抜かずに手間暇掛けた私達の毛皮やアクセサリーは割と高値で買い取ってもらえた。

今回は初回だったからこの値段だけど、買い手からの評価が良ければ来年はもっと高値になるのだそうだ。

行商人が見せてくれたけど、他の人の毛皮は何処かの部位が欠損していたり鞣しが雑だったりしていた。

うーん、こういったチマチマした作業は苦手な人が多いのだろうか。


「まずお嬢ちゃん達が持って来た毛皮だがな。

 狩人の腕がいいんだろう。

 毛皮にした時に困らないような場所を狙って仕留めてある。

 それに苦しめない様に1撃で仕留めているから暴れて毛が駄目になる事も無い。

 鞣し作業にしてもコツコツと粘り強くやったんだろう。

 余分な脂も残って居なければ穴が開いている事も無い。

 次にアクセサリー類だがな。

 旅の安全を願った物や子供の成長を願った物で昔ながらの紋様が多い。

 しかも細やかな紋様が綺麗に刻まれている。

 こういうのは流行り廃りに関係なく人気があるし

 綺麗に作れる人が最近は少なくてな。

 きっと買い手からもいい評価が貰えるだろうよ」


なんだか2人して褒められて嬉しかった。

私達がアクセサリーに刻む紋様は前の町に居た時おばぁちゃん達に教えて貰った紋様だ。

魔法使いや精霊では無いから護符のような効果はないと思うけど、アクセサリーを手にした人が健康でありますように、無事育ちますように、そう言った願いは込めて作った。

元の世界でいう手作りのお守りみたいな物よね。

評価うんぬんよりも、喜んでもらえればいいなと思う。


現金収入を得る事が出来たので買い物もしていく事にした。

ライカンスロープさんの所に行くのは確定事項として、他には雑穀やパンを買えばいいかな。

あ、野菜の苗とかもあればいいんだけどな。

探してみたけど野菜の苗は見当たらなくて、代わりに花の種が売ってあった。


『 蜜を集める魔蜂とのセットあります 』


えーっと? これは養蜂セットと言う事だろうか。

この世界にも養蜂ってあるんだ。


「お? おじょうちゃん興味あるのかい。

 このセットは東の大陸から仕入れた物でね、1つどうだい?」

「興味はあるけど、この魔蜂って寒さは大丈夫なんです?」

「なんでもファービーという種類らしくて寒い地方でも大丈夫だと言っていたが。

 実際に自分でやってみた訳じゃないから、なんとも言えないんだよな」


まぁそうだよね、自分で試してないなら大丈夫!なんて断言は出来ないよね。

その東の大陸の気候が解らないもんなぁ・・・

それよりも、私は魔蜂の名前の方が気になる。

ファービーなんて言われたら娘が幼い頃流行った人形しか浮かばないのよ。

魔蜂の姿が想像出来なくなったじゃないよ。


「店主、実際に魔蜂を見せて貰う事は可能だろうか」

「ああ、構わないよ。ほらこいつがファービーだ」


ぶっ、デカいわよ! ちょっとこれ本当に蜂なの?と言いたくなるような大きさだ。

そしてモフモフだった。

なるほど、もっふもふの毛がある蜂だからファービー・・・

それにしてもデカいわね。私の手の平サイズだから20㎝弱といったところだろうか。

でも1匹で大丈夫なんだろうか。

蜂って群れで生活するはずよね? 女王蜂と働き蜂だっけ。

思わずマジマジと見てしまい、目が合ってしまったじゃないか。

うっ・・・

その訴えかけるような目、止めていただきたい・・・


(助けて・・・)


ぐはっ。

初対面なのにこの魔蜂の声が聞こえてくるんですけども?!

おかしい、おかしいよねこれ。

ヴィーザル様の恩恵って確か身近な獣との意思の疎通だったと思うのだけども?

何故に聞こえてくるのやら・・・

そう思うけど聞こえてしまったのだから仕方が無い。

助けてってどうしたのさ・・・

え? 家族とばらばらになったら生きていけない?

ほらぁー!やっぱり群れで生活するんじゃないよ!

なんでこんな事になっているのよ。

分蜂中に捕まったの?! えぇぇ・・・・

という事はこの子が新しい女王なのかな?

違う? 女王は別の瓶に入れられてるって?


「えぇぇ・・・」


思わず声にでちゃったじゃないよ。


「どうした?」

「うん、それがね・・・」


ニクス兄さんに小声で説明をしたら、兄さんは天を仰いでしまった。


「店主さん、このセットは全部で幾つあるんですか?」

「売れるかどうか分からなかったから5セットだな」


5セット・・・

買えない額では無いけれど・・・


(お願い、お母さんだけでも助けて)


くぅ・・・

おばちゃんそう言うのに弱いのよ・・・


「5セット下さい・・・」

「お、いいのかい? 毎度あり!」


店主さんは少しオマケしてくれた。

売るなら女王蜂と働き蜂を一緒にとか温室が有った方がいいかもとか色々と言いたい事はあったけど、何処から得た知識だと聞かれても困るので言葉を飲み込んだ。

ごめんね。群れの全員を助ける事は出来ないけど、せめて目の前に居る子達だけでも助けるからね。

セット以外の花の種も幾つか購入して、私達は家へと帰る事にした。

他の買い物はまた後日と言う事で・・・


家へ着くとまずは暖かい部屋の中で瓶から出してあげた。

すると5匹でピッタリとくっつきあっている。

うんうん、不安だったよね。

行き成り捕まえられて瓶に入れられてえんやとっとと船に揺られて見知らぬ土地に連れて来られてさ。

そう言えば、ご飯は貰えていたのだろうか。

時々は貰えてたの?そう、よかった。 けどお腹空いてるよね?

ご飯は蜂蜜でいいのかな? ハチミツと果物? なるほど。

丁度よかった、昨日採ったブルーベリーがあるよ。

小皿に入れて差し出せば、ペコリと頭を下げた後に両手でブルーベリーを持ってチマチマと食べ始めた。

なにこの子達、可愛いんだけど!


一段落ついた頃合いを見計らって話をしてみる。

やはり東の大陸よりもここは寒いみたいで、真冬は乗り越えられるか心配だ。

そして別々になってしまった個体は複数匹居ればその中の1匹が女王に進化するだろうし、単体だった場合はそのままお亡くなりになるのだそうだ・・・

この子達はたまたま女王蜂と一緒だったし、纏めて私に引き取られたのでかなり運が良かったと言う事なのだろう。

それにしても、どうしようかしらね。

ビニールハウスを作るかとも思ったけどビニールなんて物は無いし。


(私達と一緒でいいじゃない。暖炉だってあるのだし)

(そうそう、それでも寒かったら私達の毛に潜り込めばいいのよ)

(( ねー ))


ねー、じゃなくてね?

クィーンはまだしも、なんでメーとレーまで家に入ってきてるのかな?

ん? 遅くなったけど毛を脱ぐからだって?

へ? あぁぁ、例のスポンッと脱げるっていうアレか!

いや、ちょっと待って?ここで脱ぐの?

すぐ取りに行くからひとまず厩で脱いでもろてぇぇぇって遅かった。


スポンッ スポポンッ


一瞬過ぎて解らなかったけどそれどうやって脱いだの・・・

見事なまでの立体的な抜け殻なんですけども?


「リュン、蜂達の小屋なんだがって うわぁ!ビックリした。

 エアレーが増えたかと思ったじゃないか。

 しかし見事なまでの抜け殻、いや抜け毛・・・なんか嫌な言い方だな。

 抜け殻でいいか」

「リクス兄さん・・・

 蜂達の小屋なんだけどさ。

 夜間や真冬の事も考えて厩を少し広げたらどうだろう。

 クィーン達が暖炉もあるしいいんじゃないかって」

「なるほどな。屋根の一部をメガネウラの羽にすれば花も育てられるか。

 よし、一走りドワーフのおやっさんの所へ行って相談してくる」


行動が早いねニクス兄さん。

そしてやっぱり物作りはドワーフさんなのね。

取り敢えずは蜂達の小屋が出来上がるまではここでゆっくりして貰おうと思う。

読んで下さりありがとうございます。

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