29:また冬にね、じゃないのよ
merry Christmas!
それにしても私が行方不明になったと聞いて、多くの人が集まってくれていた事には驚いた。
と同時に有難くもあり申し訳なくも思う。
精霊に連れ去られたのならどうしようも無かっただろうからね、無事に戻ってくれてよかったよと口々に言ってくれたけども・・・
ロドルフさんや町の人達が帰って行き、兄さん達と一緒に家の中へ入りお茶で一息つく。
そう言えば、アリェーニャの加護の小さな災厄は払いのける事が出来るってこれちゃんと発動してるのかな?
なんかちょくちょく災難に巻き込まれてる気がするのだけども。
もしかして祈りが足りないのだろうか。
よし、今夜から祈りの時間を増やしてみようかな。
リックス兄さんは魔除けの護符を改良して妖精除けの護符みたいなのを作って玄関にペタッと貼って帰って行った。
「効果があるかは解らないけどね、初めて作ったし!」と言っていたけど、もし効果があったらそれはそれで駄目なんじゃ?
あの精霊がスカポンタンなだけで普通の精霊はマトモなんだろうから除けても・・・ねぇ。
「本当に無事でよかった。
クィーン達が何かを伝えようとはしていたのだが
俺にはさっぱり理解できなくてな。
あ、だが1つだけ理解出来たんだぞ。
チッと舌打ちされた気がしたからきっと
何故解ってくれないの!と思ってるんだろうなと・・・」
「なるほど・・・」
ニクス兄さん、それってなんか切なくない?・・・
「心配かけてごめんね、兄さん」
「いいんだ、あれは不可抗力だろう。
すぐに気付いてやれずにすまなかった」
「気にしないで、あれは気付けないと思うよ」
クィーン達にも心配かけてしまったな、明日はゆっくりブラッシングでもしてあげよう。
(無事でよかったわよ、ニクスったら全然意図をくみ取ってくれないんだもの)
(そうそう、私達一所懸命に伝えていたのにね)
(カムイなんて地面に図解していたのにね)
(ボク頑張った)
(ニクスは顔面蒼白で気失いかけ・・・あら、これは内緒だったわね)
(とにかく無事で良かったじゃない)
なるほど、ニクス兄さんは顔面蒼白になって気を失いかけたと。
そして皆は頑張ってゼスチャーや図解で伝えようとしたと。
皆ありがとうね、たぶんもう攫われるとかないと思うから。
あの精霊の匂いは覚えたから次は蹴り飛ばすとクィーンとノワールは息巻いていた。
カムイも次は吹き飛ばすと言っていた。
ん? 吹き飛ばすって何?・・・
極夜も終わり、あれからはちゃんと平穏な日々を送っている。
ロドルフさんは時々お菓子を持って様子を見に来てくれるようになった。
ニクス兄さんとは気が合うみたいで地図を見ながら情報交換をしているようだ。
何処等辺で何の数が増えているとか、何処にクラックが出来ていたとか。
私も危険な場所には近づかない様にしないとね。
とは言ってもこの時期だとあまり遠くに行く事はないけど。
だって積雪量が凄いのよ、2mはあるわよ。私なんて見事に埋まるわよ!
でもこれだけのドカ雪が降ったと言う事はもうすぐ長かった冬も終わると言う事らしい。
という事は私達がこの町にやって来てから1年が経つと言う事だ。
なんだかあっという間に過ぎた1年だった気がする。
去年はドタバタしていたから春の風物詩、卵採りや野草採りも出来なかったし。
今年は頑張って採取したいな。
数日後、雪解けが始まると同時に解氷も始まった。
ミシミシと聞こえる氷の音は澄んだ音をしていて、何とも不思議な音色を奏でている。
動画なんかでユーコン河の解氷とか見てたけど、こうやって実物を見ていると大自然の雄大さを感じてしまい自分がとてもちっぽけな存在に思えてしまう。
足を滑らせて解氷に飲み込まれてしまったら藻屑になりそうなどと考えてしまう。
ペシッ!
ペルルに頭を叩かれた。
解氷に飲み込まれたらビックマウンテンでも藻屑になるって?
そ、そうか。そうよねぇ、大自然には勝てないわよね。
それで何故にペルルは此処に? 解氷の様子を見に来たって?
氷塊の流れがスムーズになったら旅に出るの?そうかそうか。
今まで氷が邪魔で泳げなかったもんねぇ。
え?違う? 氷に乗って旅をする? マジかー・・・
まだ時間が掛かりそうだから帰るわよ?
いや私はもう少し見ていたいのだけど。
1人だとフラフラ入って行きそうだから連れて帰るって?
えぇぇ・・・
ペルルにまで子ども扱いとか解せぬぅー!
今日はベリアさん達とカガック採りに来ている。
スイバに似た野草で少し酸味があるのだが、どこか懐かしい味がする。
そう言えば子供の頃はオヤツ代わりにスイバを齧っていたような気がする・・・
自然豊かな田舎育ちだから結構な野生児だったのかもしれない(自覚は無い)
軽く湯がいてマリネで食べる春限定の味なのだそうだ。
他にルバーブも見つけたので採っておいた。
山の方には蓬なんかもあるらしく、解氷が終わったら行ってみようと思う。
これからの季節は網漁や罠猟、山菜やハーブの採取とやる事が盛り沢山だ。
忙しいけどとても楽しくて、私にはこの暮らしが合っているのだと思う。
ただし、変な事に巻き込まれなければだけど。
あれから毎夜寝る前にアリェーニャ様や不動尊様、ヴィーザル様には感謝の祈りを捧げている。
アリェーニャ様には災厄の払いのけを是非にとも祈っている。
きっと効果があると信じたい。
解氷が進み、流れもスムーズになった頃ペルルは(また冬に来るわね)と言って旅立って行った。
その時は特に気にもせず、気を付けてね、また冬にねーなんて言って見送ったけどさ・・・
また冬にねじゃないのよ、また来るつもりなのだろうか。
え?もしかしてペルルの越冬場所は我が家に確定?
まぁいいけどさ、名前まで付けちゃったしペルルも気に入ってたし。
戻って来るなら戻って来るで怪我などせずに元気に戻って来て欲しいと思う。
ニクス兄さんはせっせと狩りで使う道具の手入れをしている。
あんなに大量にあったお肉や魚も残りわずかになってしまった。
改めてニクス兄さんの食べる量が半端ないのだと実感した。
今年はもっと多めに用意した方がいいかもしれない。
カムイだって冬の間に少し大きくなったと思ったのだけど、夏の間にもう少し大きくなるらしい。
ノワールも少し成長していたのに、私の身長は相変わらずだ。
おかしいな、ミルクも小魚もしっかり飲み食いしているんだけどな。
運動だってしてるんだからもう少し伸びてくれてもよくない?
ポンッと肩を叩かれてカムイに諦めろと言われた・・・
ニクス兄さんは視線をそっと反らせているし、なにそれ諦めろって事なの?!
いいわよいいわよ、諦め・・・せめて後1㎝、キリよく170㎝に!
1㎝くらいなら伸びそうじゃない?
あっという間に短い春が終わった。
この時期カワメンタイが獲れる。この時期のカワメンタイは産卵を控えているので子持ちなのだ。
ただし1週間だけと決められている。
夏の終わりには産卵時期も終わっているので制限なしに獲る事が出来るようになるけど、正直私はあまり好きではない・・・
タラコは好きだよ?でも身は練り物の原料ってイメージが強くてね?
練り物・・・ちくわなら作れそうな気がする。
確か塩と砂糖と卵白があればいいんだっけ。
よし、カワメンタイが獲れたら挑戦してみよう。
卵はちゃんとタラコに加工するわよ。塩さえあればいいんだし。
タラコパスタにしてもいいしタラモサラダにしてもいいし、野菜と和えてもいいし。
ニクス兄さんと2人で楽しむだけなら大丈夫よね? ふふふ、楽しみだ。
読んで下さりありがとうございます。




